藤腹 明子
(淑徳大学客員教授)
未だ看護界では市民権を得られていないと思われますが,「仏教看護」という概念を標榜して以来22年目になります。仏教看護は,科学的看護を基もといにしつつも,科学の力や人間の力では解決できないことにも目を向け,利用者の立場に立った,より日本的な看護を目指そうとしたものです。日本的とは日本の文化,宗教,国民性,歴史などを尊重し,わが国にふさわしい個別性と独自性を大切にしたいということです。この考え方は,看取りの場においても取り入れていただける概念ではないかと思います。本稿では,仏教の教えに学ぶ看取りの原点について,少しお伝えできればと思います。