いつもそうだが,インタビューで出会った人たちは,病院で出会う患者さんとは違った印象がある。1人ひとりを思い出す時,インタビューで訪れた場所や景色が,同時に浮かんでくる。多くはご自宅で,そうでない場合も地元に訪ねていくため,その人の生活がリアルに感じられる。早川さんの場合もそうだった。緑の多い公園を抜けて,どこだろうと地図を片手に歩く筆者に,元気な声で,頭上のベランダから「ここよ~」と手を振る早川さんが見えた。隣には洗濯物が揺れている。この団地で普通に暮らす人が,たまたまがんになったのだ。
体験者の語りを聴く〈5〉
病い・死について じっくり考える時間があって
2013.01.15
この記事の続きは、下記書籍からお読みいただけます。