実践としてのビリーブメントケア-熟練者のスキルを取りこむ(2)
遺族の複雑性悲嘆─J-HOPE3研究の結果から

2017.03.15

J-HOPE 研究(遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究)とは,日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団の研究事業として,わが国で実施されている全国遺族調査である。第1回目は2007年,第2回目は2011年,そして第3回目となるJ-HOPE3研究は2014年に実施された。J-HOPE研究の主の目的は,患者が受けた緩和ケアを構造・プロセス・アウトカムの視点から評価することである。死別後の遺族の悲嘆反応の内容や程度は重要な遺族のアウトカムであり,緩和ケアの質のアウトカムの1つでもあるといえる。第3回目となるJ-HOPE3研究から,遺族の悲嘆や不眠・飲酒状況なども主の評価項目として追加した。本稿では,J-HOPE3研究の結果から,遺族の悲嘆に関連するおもな結果について紹介する。

この記事の続きは、下記書籍からお読みいただけます。

200092

Vol.27 No.2

緩和ケア 2017年3月号

実践としてのビリーブメントケア―熟練者のスキルを取りこむ

 ビリーブメント(死別)は、決して特別な経験ではない。それに伴う悲嘆(グリーフ)も、誰しも経験しうる正常な反応である。一方で、大切な人の死は、残された者の心身に深刻なダメージを与え、死亡や罹患、自殺、複雑性悲嘆につながる危険性も孕んでいる。本誌でのビリーブメントに関する特集は5回目であり、この間、ビリーブメントへの関心の高まりとともに、その取り組みも広がりを見せつつある。

 本特集では、ビリーブメントに関する理解を深めるとともに、特に緩和ケアにおいてどのような家族・遺族への支援が求められるのか、医療者として何ができるのかを考えていく。
 まず、緩和ケアにおいて知っておくべきビリーブメントの基本として、概念や考え方、複雑性悲嘆やリスクアセスメントについて解説する。
 次に、ビリーブメントケア/グリーフケアの具体的な援助方法について、研究知見や臨床経験を交えながら、実際の課題に対する対応や工夫を考える。
 さらに、緩和ケアに関わるさまざまな立場から、各立場で遺族に対して何ができるのか、あるいは何をこれからしたいと考えているのかについて論じる。
 最後にショートレビューとして、看護領域別でのビリーブメントに関する学術研究の動向を紹介する。

 本特集が、ビリーブメントケア/グリーフケアを緩和ケアの大切な働きの1つとして、理念にとどまらず、実のある実践として定着させるために、どのような方法やあり方が望まれるのかを議論する一助となることを願っている。

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