西 智弘
川崎市立井田病院 かわさき総合ケアセンター
病状が進行してきて死期が数日に迫ったときに,呼吸のたびに咽頭から「ゴロゴロ」という音が聞かれるようになることがある。こういった死期が迫った患者において聞かれる,呼吸に伴う不快な音は「死前喘鳴(death rattle)」と一般的に定義されている。近年では気道分泌亢進(increased bronchial secretions)の用語が用いられる場合もある。
死前喘鳴は,がん患者だけではなく他の病態の終末期においてもみられる現象であるが,終末期がん患者においては23~92%に死前喘鳴が認められるといわれている。がんにおいては,肺腫瘍や脳腫瘍で発生しやすく,また終末期の輸液量とも関連していると考えられている。