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緩和ケア口伝―現場で広がるコツとご法度(17)
緩和ケアにおけるポリファーマシーに対する薬剤師の関わり

緩和ケア口伝―現場で広がるコツとご法度(17)
終末期口臭に対するクリンダマイシン

西村 幸祐(岐北厚生病院 緩和ケアセンター)


● 終末期にしばしばみられる口臭に対してクリンダマイシンの経静脈投与が有効なことがある。
● 継続した口腔ケアを行っていても悪臭が発生しており,経静脈ルートがある場合には対応策の一つとなりうる。
● 自験例では明らかに重篤な副作用は認めていない。

FAST FACT(17)

酒見 惇子(神戸大学医学部附属病院 緩和ケアチーム/がん相談室)


1. 定義,発生頻度
不安は,不確実な脅威に対する心理反応であり,がん患者では21%1)が不安を抱えているとされる。
2. 症状の現れ方
気分(不安,心配,イライラ,落ち着かなさなど),身体(不眠,頭痛,食欲不振,動悸,息苦しさ,発汗など),思考(マイナス思考,考えのまとまらなさ,短絡的思考など),行動(過食,飲酒や喫煙の増加,人と接触を避ける,頻回の確認行為など)の症状として現れる。

いま伝えたいこと―先達から若い世代に(16)
がん看護教育・研究を本格的・系統的に

小島 操子(前・聖隷クリストファー大学 学長)


日本は近い将来,がんが死因の第1位になるだろうといわれ出したころに,私は大学病院の外科看護師として働き出した。そして,当時のがん医療の状況,がん患者・家族の苦しみや悲しみ,看護の無力さ等を経験して,がん看護に強く動機づけられ,がん看護を本格的に学び,実践,教育,研究に専念して50年以上が経過した。この間の2回のアメリカ留学でのがん看護の学習や実践経験,また常に日本とアメリカのがん医療・看護を視野に入れて,がん看護教育や研究にあたってきた観点から,いま伝えたいことを述べさせていただく。

日野原重明先生の思い出─挑戦と適切な折り合いの人生

柏木 哲夫(淀川キリスト教病院理事長)


日野原先生が105歳で逝去された。私は現在78歳,日野原先生は27年先輩である。日野原先生には実にたくさんのことを教えていただき,多くのことをご指導いただいた。先生の思い出を綴るようにとの要請であるが,思い出があまりにも多いので何を取り上げようか戸惑っている。ともあれ,頭に浮かぶ思い出を一つずつ綴ってみたい。

病棟と緩和ケア外来の連携

向井 未年子
愛知県がんセンター中央病院 緩和ケアセンター


2017年のホスピス緩和ケア白書2017によると,緩和ケア外来は全国に443施設,緩和ケア病棟は377施設で設置されている。がん診療連携拠点病院に限ると,緩和ケア外来は321施設に設置されているが,緩和ケア病棟は104 施設に留まる。これは,緩和ケア外来に通院している患者が,その施設の緩和ケア病棟に入院するとは限らないことを表している。
また,化学療法や放射線療法などの抗がん治療を継続中から緩和ケア外来に通院している患者であれば,自施設あるいは他施設の一般病棟に入院することも少なくない。

がん相談支援センターにおける外来緩和ケアの実践

矢野 和美
東京逓信病院 看護部


ここ数年,自宅や施設などで過ごし,通院しながら緩和ケアを受ける方が増えてきた。今回,がんに伴う身体的・心理社会的痛みを抱える外来通院中の患者に対して,どのような緩和ケアを提供できたのか,がん相談支援センターの看護師という立場から振り返る。

外来緩和ケアのマネジメントのコツ(3)
外来で療養先の意思決定支援を行う

川島 正裕(市立岸和田市民病院 緩和ケア内科)
高見 陽子(市立岸和田市民病院 看護局)


当院では,2つの目的での緩和ケア外来を実施している。1つ目は,緩和ケア病棟の入院のための面談を行う外来で,週2日,自施設のみならず他院に入院・通院中の患者のいずれにも対応している。この場合には,おもに緩和ケア病棟への入院の可否の判断,患者・家族の意思決定支援,患者・家族の全人的苦痛の評価,緩和ケア病棟で行う医療・ケアについての説明を行うとともに,患者に対して予後を含む病状説明に関する希望や,急変時の対応についての意向の確認を行っている。

外来緩和ケアのマネジメントのコツ(2)
地方のがん専門病院の緩和ケア外来におけるマネジメントのコツ

本間 英之
青海 直子
新潟県立がんセンター新潟病院 緩和ケアセンター


新潟県立がんセンター新潟病院は,病床数450床のがん専門病院である。標榜科数24科,年間退院患者数が約1万名,うち85%が,がん患者で占められている。都道府県がん診療連携拠点病院に指定されており,受診患者は県内居住者のみではなく,山形県や福島県など近県の居住者も認める。
緩和ケア外来は,外来2階にあり緩和ケア科医師1名,緩和ケアセンターゼネラルマネジャー(緩和ケア認定看護師)1名,がん看護専門看護師2名,外来看護師1名で運用している。平日午前9時から16時まで毎日診療しており,昨年度の新規患者数は235名,延べ患者数4,318名であった。

外来緩和ケアのマネジメントのコツ(1)
「緩和ケア外来」というより,「外来の緩和ケアチーム」

佐久間 由美(聖隷三方原病院 緩和ケアチーム)
森田 達也(聖隷三方原病院 緩和支持治療科)


聖隷三方原病院は934床(一般810床)の総合病院であり,地域がん診療連携拠点病院である。急性期病院ではあるが,立地的に「大きな病院は当院しかない」地域でもあるため,診断から終末期までを一貫して行う場合も多い。
病院全体のがん患者の診療体制として,各科で診断を受けた患者のうち,外科治療の対象患者は外科の各診療科で診療を受けるが,化学放射線治療を主体とした患者は,院内がんセンターである腫瘍センターで治療を受ける(図1)。腫瘍センターは,42床の入院病棟・27床の外来化学療法室・化学療法科外来・放射線治療科外来・放射線治療室で成り立っており,看護単位が1つであるため,今週外来化学療法室で勤務した看護師が,来週は病棟で勤務しているというように,患者は治療の場所が変っても馴染みのある看護師が対応する仕組みとなっている。

外来で行う緩和ケア─現実編

廣橋 猛
青沼 まゆみ
永寿総合病院 がん診療支援・緩和ケアセンター


多くのがん治療が外来にて行われるようになり,また進行がん患者はギリギリまで体力を維持し,亡くなる1~2カ月前に一気に悪化すること1)から,いわゆる「早期からの緩和ケア」はもとより「再発・進行がんの緩和ケア」であったとしても,対象となる患者は,入院患者だけではなく,外来患者が相当数いることは容易に想像できる。そして,緩和ケア外来の必要性,ならびに日本でのあくまで統計的な現状については,前項の理想編で書かれている通りである。本項は前項の理想編を受けて述べる。

外来で行う緩和ケア─理想編

西 智弘
川崎市立井田病院 かわさき総合ケアセンター


2016年末に「がん対策基本法」の改正が行われ,その条文のなかで「がんと診断されたときからの緩和ケア」が明記された。「がんと診断されたときからの緩和ケア」は「誰が提供すべきなのか?」という議論もあるが,進行・再発がんに限った話でいえば,診断後早期から専門的緩和ケアサービスが介入していくことは,世界的にも数多くの検証が行われ,概ね良好な結果が報告されている。
ASCO(American Society of Clinical Oncology;米国臨床腫瘍学会)でもそのガイドラインで,すべてのがん種に対して入院中だけではなく外来でも「早期からの緩和ケア」を行っていくことを勧めている。
このような状況のなか,わが国においても改正法に基づいて「早期からの緩和ケア」を進めていくためには,入院患者に対する緩和ケアだけではなく,外来患者に対してどのように緩和ケアを提供していくかという課題に取り組んでいかなければならない。

のぞいてみよう!国際学会最前線 4
現場の問題解決の糸口を探しに!!

学会名:第21回国際緩和ケア学会議(21th International Congress on Palliative Care;ICPC)
開催日:2016年10月18~21日
開催地:カナダ,モントリオール


土屋 静馬
昭和大学横浜市北部病院 内科(腫瘍)


隔年開催の本学会は,初回開催からすでに42年,世界の緩和ケアの学会のなかで最も歴史がある会の1つです。第1回大会の発起人はマギル大学のバルフォア・マウント教授。マウント教授は,1975年に世界で初めて大学病院内(マギル大学ロイヤル・ビクトリア病院)にがんや慢性疾患に苦しむ患者さんのケアができる場所であり,さらには医学生やその専門を目指す医療者を育てることのできる病棟を設置し,それを“緩和ケア病棟(Palliative Care Unit)”と名付けた先生です1)。

仕事人の楽屋裏 16
田中 桂子

オーケストラクラブ三昧の高校生活後,ドイツ文学を学び,青山の外資系企業でやりがいある仕事をしていましたが,あるときふと「これが一生の仕事ではない」と感じ退職。とりあえず猛勉強しドイツ語の資格を取ったけど,「さて,どうしようかな?」と思ったとき,「医師」という2文字が天から舞い降りて,学士入学制度のおかげで半年後には1回り年長の医学生となりました。精神科を希望したのですが,まず身体を楽にすることができなければと内科研修をするなかで,国立がんセンター東病院(以下,国がん東)呼吸器内科,緩和ケア科,精神腫瘍科の素晴らしい恩師たちに出会い,緩和ケアという天職にたどりつきました。思い返せば,人生の寄り道も天からの声も素敵な出会いもすべて,運命の赤い糸で引き寄せられた必然だと感じています。

えびでんす・あれんじ・な~しんぐ(EAN)─実践力を上げる工夫<5>
末梢神経障害─オキサリプラチンはStop and Goで治療を継続

菅野かおり(日本看護協会 神戸研修センター)


がん化学療法に伴って出現する末梢神経障害は,患者の日常生活に大きな影響を与えるとても苦痛な副作用症状です。シスプラチン,オキサリプラチン,パクリタキセル,エリブリンメシル酸塩,ビンクリスチン硫酸塩,エトポシド,ボルテゾミブ,レナリドミド水和物などで高頻度に出現し,これらの薬剤の用量規制毒性となっています。そのため,grade3以上(高度の症状がある,身の回りの日常生活動作の制限)の症状が出現した場合は,原因薬剤を減量するか休薬,あるいは治療変更をする必要があります。

落としてはいけないKey Article 16
死前喘鳴の薬物療法を考える

森田 達也
聖隷三方原病院 緩和支持治療科


【今月のKey Article】

Heisler M, Hamilton G, Abbott A, et al:Randomized double-blind trial of sublingual atropine vs. placebo for the management of death rattle. J Pain Symptom Manage 45(1):14-22, 2013. doi: 10.1016/j.jpainsymman.2012.01.006.[Epub 2012 Jul 13]

いま伝えたいことー先達から若い世代に15
「ホスピスの心」を涵養する

下稲葉 康之(栄光会 理事長,栄光病院 名誉ホスピス長)


私は栄光病院の「ホスピス」抜きに,自分のこれまでの人生を語ることはできない。もしホスピスとの関わりがなかったら,と想像することさえ難しい。それほどに貴重である。
それは,患者さん1人1人が,まさに「生ける教科書,人生の先輩」として,私に先例を示してくれたからである。あるときは震えおののきつつ魂の苦悩を垣間見させ,また,あるときは荒い息づかいのなかから,満面に笑みをたたえて「先生,ありがとう!」と別れの挨拶を残す。そのような素朴で真実な姿を目の当たりにして,本当に何にも代えがたい貴重な財産をいただいてきた。