小川 朝生
(国立がん研究センター東病院 精神腫瘍科)
医療における意思決定能力とは,患者が,自分が受ける医療について説明を受けたうえで,なされた説明を理解し,そのうえで医療を受けるか否かを自分の価値観に照らして判断し,表明する能力である。
小川 朝生
(国立がん研究センター東病院 精神腫瘍科)
医療における意思決定能力とは,患者が,自分が受ける医療について説明を受けたうえで,なされた説明を理解し,そのうえで医療を受けるか否かを自分の価値観に照らして判断し,表明する能力である。
水野 俊美
がん研究会有明病院 緩和ケアセンター
がん研究会有明病院の緩和ケアチーム(がん治療支援緩和ケアチーム,以下PCT)は,抗がん治療が難しくなった患者だけでなく,手術や抗がん剤,放射線治療を受ける患者など,さまざまな背景をもつ患者からの相談を受けている。ここでは,PCTが行っている不眠への対応の一部を紹介する。
杉江 礼子
市立大津市民病院 緩和ケア病棟
津田真
市立大津市民病院 緩和ケア科
「眠れないんです」とつぶやく患者さんに,「では,睡眠剤を持ってきますね」と即応する緩和ケア病棟の看護師はいないだろう。「眠れないんですね」と,まずは受け止め,なぜ眠れないかを聴くことから始まる関わりについて,緩和ケア病棟で過ごす患者さんの特徴をふまえ,本稿では実践知から紹介する。
新城 拓也
し んじょう医院
本稿では不眠への対応について述べるのだが,まずは患者と医療者がどのような関係であるのかについて改めて考えてみたいと思う。
私は現在,在宅医療を中心に緩和ケアを提供している。在宅医療は往診して患者を診察するだけではない。自宅で暮らしている患者を治療することであって,外来通院中の患者もまた在宅医療の対象者だ。そもそも在宅医療という言葉自体が医療者の目線である。患者の居場所が病院ではなく「在宅」であって,そもそも病院で行うはずの「医療」を在宅で提供するのだ,という意味をおおいに含んでいる。
大谷 弘行
九州がんセンター 緩和ケアチーム
「不眠」はよくある事象であるが,実に奥が深い。あなたが最近「不眠」を感じたのはどんなときだろうか。あなたは,あなた自身の「不眠」の理由を深く考えたことはあるだろうか。睡眠薬で「不眠」の“問題を先送り”していないだろうか。「不眠」はあなたの体調変調のサインかもしれない。あるいは,「不眠」はあなたの仕事上のモヤモヤが解決されていないサインかもしれない。あなたは気づいていないかもしれないが,「不眠」は身体的にも精神的にもあなたの内面を正直に表す黄色信号なのだ。いわば,「不眠」は心身の不調サインの第1のゴールド評価指標にもなるのだ。本稿では,緩和ケアチームの医師として,そのゴールド評価指標ともなる患者の「不眠」を,入院患者の視点から考察してみたい。
藤澤 大介
慶應義塾大学医学部精神神経科/緩和ケアセンター
1. 患者さんの訴えと実際の睡眠状況の把握
不眠は主観的要素が多い。患者さんの訴えだけでなく,同居するご家族の観察や,睡眠状況を24時間の時間表(睡眠・覚醒リズム表)に記入していただくなかで,睡眠障害の診断や,具体的な指導のポイントが見えてくることが多い。
2. 急性の不眠vs慢性の不眠
不眠は,急性不眠(一過性の不眠)と慢性不眠に分けて考える。急性不眠は,不眠の原因がはっきりしていて,睡眠薬の処方と簡単な睡眠指導で対処できることが多いが,慢性不眠は患者の心理・行動面の影響が大きく,薬物療法だけに頼らず,不眠を持続させる要因となっている心理・行動面に焦点を当てて,患者さん自身にも治療に主体的に取り組んでもらう必要がある。
小川 朝生
国立がん研究センター東病院 精神腫瘍科
ひと口に不眠といっても,もともと睡眠時間の短い患者がたんに消灯時間を過ぎても眠気がこない場合,不安・焦燥感のために眠気がこない場合,痛くて眠れない場合,一見不眠とみえるが実際はせん妄があり,睡眠覚醒リズムが乱れている場合などさまざまある。ここでは,「不眠」とまとめられる病像について,速やかな対応が必要か,待つことができる(経過観察できる)のか,その判断と具体的な対応について考えてみたい。
嶋田 和貴*1,3
谷向 仁*2,3
*1 京都大学大学院 医学研究科 臨床腫瘍薬理学・緩和医療学講座:
*2 京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 リハビリテーション科学コース 作業療法学講座脳機能リハビリテーション分野
*3 京都大学医学部附属病院 緩和ケアセンター/緩和医療科
緩和ケア領域におけるミダゾラム(ドルミカムⓇ)/フルニトラゼパム(ロヒプノールⓇ,サイレースⓇ)注射薬(以下,MDZ/FNZ)の使用指針は鎮静においては整っているが,不眠については海外を含めて明確な指針はなく,わが国でもいくつかの臨床研究が存在するのみである。しかしながら,わが国の緩和ケア病棟(palliative care unit;PCU)およびホスピスにおける調査では,終末期がん患者の不眠に対して,MDZ/FNZの点滴静注法が広く普及しており,特にMDZは調査対象施設の約80%で使用されていることが報告されている。本稿ではMDZ/FNZの安全な使用法について文献レビューとともに筆者らの経験を交えて概説する。
山川 宣
神戸医療センター 緩和ケア内科
従来からの睡眠薬は,一部の例外を除きベンゾジアゼピン受容体作動薬(BZ作動薬;本稿ではベンゾジアゼピン系薬剤・非ベンゾジアゼピン系薬剤の両者を含む総称)が使用されてきた。緩和ケア領域でも,不眠のみならず,呼吸苦・悪心・痙攣・神経障害性疼痛・髄膜刺激症状など,さまざまな病態にBZ 作動薬が使用されている。
一方,BZ 作動薬は,終末期に高頻度で出現するせん妄の原因薬剤の1つであり1),筋弛緩作用で転倒転落などのリスクがあり,死亡率増加2)や認知症との関連3)が指摘され,多くのBZ 作動薬で常用量依存に対する添付文書改定がなされるなど,従来の「不眠にとりあえず使用」の観点は改める必要が生じてきている。
そこで期待がかかるのが,睡眠障害改善薬として近年相次いで上市された,BZ作動薬とはまったく別の機序で作用するラメルテオン(ロゼレムⓇ)とスボレキサント(ベルソムラⓇ)である。しかし実際に使用してみると,これら薬剤は従来のBZ 作動薬と特性が異なるため,「BZ 作動薬のようには効かない」という印象を受けることがある。そこで本稿では,新規睡眠薬の特性や実際の効果,緩和ケア領域での意義について考えてみる。
田村 恵子
京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 臨床看護学講座 緩和ケア・老年看護分野
緩和ケアにおける不眠は,患者にとってつらい症状であるだけでなく,人手の少なくなる夜勤帯の看護師にとって切実な問題である。夜間のラウンド時に「眠れない」と訴える患者に対して,すぐに必要時指示の睡眠薬や抗不安薬を与薬するのがよいのか,入院前からの習慣で眠れないことがつらくないのであれば経過観察すればよいのか,不安を訴える患者には長くならない範囲で訴えを傾聴するのがよいのか,など悩むことが多々ある。また,閾値下せん妄の場合などでは,睡眠薬を与薬しないと過活動型せん妄に発展する可能性もあり,適切な判断を求められることも少なくない。
このように,不眠への対応は臨床上重要であるだけでなく,倫理上または管理上避けて通れない課題である。本稿では,緩和ケアにおける不眠が内包する問題点をおもに倫理的な視点から概観し,それらをふまえて看護管理者や夜勤の看護師はどう考えて,どのようなケアをすればよいのかについて私見を述べる。
河野 佐代子
慶應義塾大学病院 看護部
不眠は,がん患者において頻度の高い症状のひとつであり,不眠が遷延すれば,患者は大きな苦痛を感じ,生活の質を低下させることになる。私たちは,患者が眠れていない状態をみると,少しでも心地よく眠ってもらえればと早期の改善を願う。不眠への対処として,簡便であり即効性も期待できるため,医療者は,しばしば患者に睡眠薬を投与している。しかし,睡眠薬の使用は,患者の状態によっては,患者の苦痛をさらに強める可能性がある。そこで,本稿では,患者の不眠へのケア・対処として薬を渡す前に私たちが押さえておくべき点について事例を交えて説明する。
学会名:2016 Palliative Care in Oncology Symposium
開催日:2016年9月9日~10日
開催地:アメリカ,サンフランシスコ
小杉 和博
川崎市立井田病院 かわさき総合ケアセンター 緩和ケア内科
Palliative Care in Oncology Symposium はAAHPM(米国ホスピス緩和学会),ASCO(米国臨床腫瘍学会),ASTRO(米国放射線治療学会),MASCC(国際がんサポーティブ学会)の4学会が共催する合同シンポジウムです。このシンポジウムは,がんと診断されたときからの緩和ケアの統合や支持療法,終末期の緩和ケア利用を増やすための議論を促進することを目的としています。2014年から年1回開催され,今回で3回目となります。会期は2日間で,参加者は650名以上,登録抄録数は口頭発表を含め260演題でした(応募総数は285 演題)。
田村 里子
WITH医療福祉実践研究所 がん・緩和ケア部
緩和ケア領域のソーシャルワークという仕事の選択には,種々の要因があり端的に述べるのは難しいのですが,「生きること,そして死んでいくこと」が,もとより自分の中心課題であったことが大きいと思います。
この仕事はどんなことも苦にならないほど奥深く,「ワークライフバランス」はどこ吹く風と,認可園終了後の2重保育3重保育を調達し,「ワークワークアンバランス」を,自ら好き好んで率先していました。今や95~88歳の間に,医療や介護のニーズをもつ義父母と父母が4人おり,いかに支えるかは緩和領域のソーシャルワーカーとしても課題と考えています。
清水 陽一
国立がん研究センター 社会と健康研究センター 健康支援研究部
死亡時間数前から数日前に気道内分泌物の貯留により生じる喘鳴を死前喘鳴と呼び、死亡直前に生じる特徴的な症状のひとつです。
死前喘鳴に対するケアについて介入研究の報告はなく、十分なエビデンスが得られていません。
森田 達也
聖隷三方原病院 緩和支持治療科
【今月のKey Article】
Agar MR, Lawlor PG, Quinn S:Efficacy of Oral Risperidone, Haloperidol, or Placebo for Symptoms of Delirium Among Patients in Palliative Care:A Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med 1:177(1):34-42, 2017 doi:10.1001/jamainternmed.2016.7491
柏木 秀行
飯塚病院 緩和ケア科/地域包括ケア推進本部
●「妥当な妥協」も大切。
● オピオイド離脱の交感神経症状には適切に薬物療法を行う。
● 医療チームでの支援体制を構築する。
世利 佐知子
飯塚病院 看護部長室
●医療用麻薬依存症患者の体験を知る。
●オピオイドの依存(徴候)を早期に発見できる。
●多職種で包括的アセスメントを行う。
佐伯 吉規
がん研有明病院 緩和治療科
● ケミカルコーピングとは「本来薬剤で対応すべきではないストレス(たとえば,気持ちのつらさ)に対してオピオイドを用いる」といった「不適切な使用」および「対処形式」を意味し,「依存」とは異なる概念である。
● しかしながら,その持続的な対処が,結果として依存につながる可能性があり,米国ではアルコール嗜癖との関連が指摘されている。
● 患者の訴える疼痛について,「がん関連因子」のみならず,患者の心理・社会的問題についても評価を行い,サポートを行うだけでなく,厳密な処方計画が必要になる。
鄭 陽
がん・感染症センター都立駒込病院 緩和ケア科
薬物療法によって有効な鎮痛が得られない場合または鎮痛困難と予測される場合に,神経ブロックによって症状緩和できる可能性がある。
笠原嘉子
救世軍清瀬病院 看護部
私がホスピスケアに関わるようになったのは,看護学校の恩師,季羽倭文子先生とのつながりからです。先生と共にアメリカのホスピス事情の視察,そのときに同行した仲間,その後,季羽倭文子先生が設立された「ホスピスケア研究会」に遡ります。
看護学校の教員をしながら,ホスピスケア研究会にボランティアとして関わっておりました。しかし,看護は臨床であるとの思いとホスピスケアを実践してみたいとの思いが強くなり,1993年4月,現在勤務する救世軍清瀬病院に就職しました。