てんかんは大脳の神経細胞が過剰に興奮するためにけいれん発作を引き起こす疾患の総称で,定義は変遷しているが「非誘発性のけいれん発作が2回以上」を中心として定義される。脳腫瘍(原発または転移)がある患者の生涯発症率は20~80%ともされている。発作の形式は,脳腫瘍では強直間代けいれんが多いとされている。また,けいれんを伴わない無けいれん性てんかん重積症(Non-convulsive status epilepticus:NCSE)が注目されているが,脳波検査が唯一の診断方法である。
看護の世界から離れて4年が過ぎました。現在は,東京とはかなり医療事情も違った岡山県の真ん中あたりの地域で生活し,医療を受ける立場になりました。一般社会では,緩和ケアについて,知る機会もなく,知らない人が多いということを改めて実感しました。
The European Association for Palliative Care (EAPC)は,ヨーロッパ全土に緩和ケアを,臨床・研究・社会それぞれの領域において広めることを目的として,1988年に結成された団体です。
EAPCの学術大会には,World Congress(日本語で言うと「全体大会」的な感じでしょうか)とResearch Congress(こちらはより「学術大会」的な印象が強い)の2つあり,それぞれが隔年で交互に開催されています。World Congressはどちらかというと緩和ケアが発展途上の国で開催され,Research Congressは比較的緩和ケアがさかんな国で開催される傾向がみられるように思います。
がんの骨転移による骨関連事象(Skeletal Related Events;SRE)を予防する目的で,ビスホスホネート製剤やヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤などの骨吸収抑制薬を用いた治療が広く普及している。一方で,その合併症として顎骨壊死(Osteonecrosis of the Jaw;ONJ)が生じることが近年問題となっている。これは骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(Anti-Resorptive agents-related ONJ;ARONJ)とも呼ばれ,発生頻度はきわめて低いが発症した場合に難治性となるケースが多い。
終末期患者において口腔乾燥(口渇)の訴えは多く,終末期がん患者では80〜90%で認めるとの報告がある。口腔乾燥は,乾燥感以外に口腔内の疼痛や味覚障害,口臭,口腔カンジダ症発症の原因となる。
終末期患者における口腔乾燥の原因は,(1)開口および口呼吸,酸素マスク使用などによる口腔の保湿力低下,(2)熱性疾患,下痢,尿崩症,糖尿病,利尿剤の使用,甲状腺機能亢進症,心不全,腎機能不全,貧血,腹水・胸水の貯留による体液量の減少,(3)放射線治療や化学療法,GVHD(graft versus host disease)などによる唾液腺の分泌能低下,(4)向精神薬,抗コリン薬,オピオイド鎮痛薬などの副作用,(5)唾液腺支配神経の障害や脳転移などがある。このうち(1)〜(4)が原因頻度として多い。口腔乾燥は口腔ケアを著しく困難にすると同時に口腔環境を劣悪化させる。
緩和ケアの対象となる患者は高齢者が多く,もともと味覚障害を有している可能性も高いため,化学療法や放射線療法などを行う前の状態を把握しておくことが重要である。
また,治療に伴う味覚障害から,食欲不振・摂食量低下を合併すると脱水・低栄養に陥り,口内炎やひいては嚥下障害を引き起こし,さらなる脱水・低栄養に陥るといった負の連鎖が発生するので注意が必要である。
新規抗がん剤の開発により,現在では数多くの分子標的治療薬によるがん治療が行われている。分子標的治療薬は特定のタンパク質をもつ細胞に特異的に作用するため,従来の殺細胞性抗がん剤に特徴的な骨髄抑制や脱毛などの有害事象を低減させるが,薬剤性肺炎(間質性肺炎)や皮膚障害などの別の重篤な有害事象を引き起こすこともわかってきた。消化管粘膜上皮の一部である口腔粘膜は分子標的治療薬でも有害事象の出現部位であり,代表的な症状である口腔粘膜炎/口内炎は,いまだにがん患者を悩ませる症状の1つでありつづけている。
化学療法/放射線療法中には,治療の合併症による口腔粘膜炎のほかに,歯性感染症の増悪や,口腔カンジダ症やヘルペス性口内炎などの日和見感染によって口腔内に疼痛が出現しやすい。しかし,疼痛により口腔ケアを行えないと,口腔内の病原菌がますます増殖し,口腔粘膜炎に感染することで疼痛が増悪する悪循環となる。口腔バイオフィルムの除去は,ブラッシングによる機械的清掃が基本であるために,強い疼痛や易出血状態の場合でも適切な口腔ケアを実施し,口腔環境の改善を図ることが必要である。そこで,本項では疼痛による開口困難や出血により,口腔ケアが困難となる場合の対応方法について述べる。
がん患者における化学療法や放射線療法に伴う口腔/咽頭粘膜炎は,その治療中にまれならず発症する。特に頭頸部がん患者の化学放射線療法中,また骨髄移植や末梢幹細胞移植などの造血幹細胞移植の前処置としての全身放射線照射や大量化学療法に起因する口腔/咽頭粘膜炎の発症は,70%以上と報告されている。口腔/咽頭粘膜炎がひとたび発症すると,抗がん剤の用量を調節する必要が生じ,ときには治療中断や延期を余儀なくされることもある。また,食事摂取困難から栄養状態が低下し,すでに抵抗力が低い状況であるため全身状態が低下することも経験する。このため,口腔ケアや栄養面の支援とともに,痛みの緩和を行い生活の質を維持してゆくことも大切である。ここでは,口腔粘膜炎の痛みに関する知見と疼痛緩和のための薬物療法について述べる。
化学療法/放射線療法による口腔粘膜炎の発現頻度は,通常の抗がん剤使用時で30〜40%,造血幹細胞移植時(大量の抗がん剤使用時)では70〜90%,抗がん剤と頭頸部への放射線治療併用時はほぼ100%といわれている1)。口腔粘膜炎は患者の予後に直接関与する副作用ではない。しかし,口腔は「食べる」「話す」といったQOLに直結する機能を有しており,口腔粘膜炎の発生は患者のQOLを著しく低下させることがある。また重症化すると,場合によっては化学療法/放射線療法を中断させてしまうこともある。口腔粘膜炎に対しては確実な治療法が確立されておらず,発生すると対症療法が主体となるため,口腔粘膜炎に対しては,予防が最も重要な手段となる。
真菌の一種であるカンジダが引き起こす口腔内の症状と聞くと,白色の偽膜を呈する急性偽膜性口腔カンジダ症を想像する方が多いだろう。確かに緩和ケアを必要とする患者において急性偽膜性口腔カンジダ症は多く認められる。しかし,カンジダが引き起こす口腔周囲の症状は,その他にもある。
口腔粘膜炎は発症頻度の高い副作用であり,がん治療中のつらい症状のひとつである。口腔粘膜炎は痛みにより患者を苦しめるだけでなく,経口摂取量を低下させ低栄養状態や脱水を招いたり,感染の侵入門戸となり全身感染症を起こすなど,QOLの低下を招くのみならず,全身状態に影響を与え,がん治療の大きな妨げとなる。つまり,適切な口腔粘膜炎のマネジメントの成否が,症状緩和だけでなく,がん治療の成否につながるという面もある。口腔粘膜炎の適切な対処を行うためには,口腔粘膜の特徴,粘膜炎の発症機序を十分理解しておく必要がある。
● 患者背景に合わせた対処の提案をする。
● 試行錯誤し,食べられるものを見つけていくお手伝いをしていく。
● 少量でも「口から食べる」ことを医療者も大切にしていく姿勢をもつ。
● 進行がん患者の約70%は口渇による苦痛を体験している。
● 口腔ケアによる口腔内不快感の解消が,口渇を緩和させる可能性がある。
● 口腔ケアは清掃と保湿を主体に行っていく。
● クロニジンはα2アドレナリン作動薬として鎮痛・鎮静作用をもつ薬剤である。
● 鎮痛効果は限定的で,起立性低血圧や転倒などの有害事象を考えると,基本的には勧められる薬剤とはいえない。
● エビデンスは乏しいが,スコポラミン軟膏は死前喘鳴に対する治療の1つとして有効なことがある。
● スコポラミン軟膏は薬事未収載薬のため,その使用にあたっては注意が必要である。
● スコポラミン軟膏は,その特性から在宅緩和ケアでより使用しやすい。
国際麻薬統制委員会(International Narcotics Control Board;INCB)の報告では,過去20年で世界全体のオピオイド消費量は3倍以上に増加している。このような動向は先進国の消費量増大によるところが大きく,日本も増加傾向にはある。しかし,日本のオピオイド消費量は他の先進国と比較して少ない。このことから,日本のがん患者に使用されたオピオイドも少ないと一般的に認識されている。一方,各国との比較の対象となるINCBのオピオイド消費量では使用目的の区別はできず,がん患者の鎮痛目的だけではなく,手術麻酔に加えて非がん患者の鎮痛に使用されたオピオイドが合計して集計されている。
阿片:モルヒネの素。世界の歴史,経済,政治などに深く長く関係。かつてアヘン末の使用を推奨する発表があったことを思い出す。
痛み:つらい症状の代表格。他につらい症状は多いが,痛みほどには言及されない。
呼吸困難は「呼吸時に感じる不快な主観的な体験」と定義される症状です。呼吸困難の効果的な緩和には,包括的なアプローチが重要だと言われています。近年では特に,扇風機を用いて顔に送風するという支援が,呼吸困難を緩和させる可能性のある支援として注目を集めています。送風によって呼吸困難が緩和される機序は明らかではありませんが,三叉神経第2~3枝領域の冷感刺激が影響していることが指摘されています。