希死念慮は進行・終末期がん患者の10~20%にみられる。「死にたい」と患者が訴えた場合には他の症状のつらさ,うつ病,せん妄,実存的問題などが背景にある可能性がある。
それはそれとして私たちはすでに達成していることを基準に進むべきです。(ピリピ人への手紙3章16節)
そして,これらすべての上に,愛を着けなさい。愛は結びの帯として完全なものです。(コロサイ人への手紙3章14節)
聖書の言葉を文脈から切り離して意味づけることは好ましくないのですが,私の「いま伝えたいこと」はこの2つの文章に集約されています。
看取りを目的に在宅療養を選択する場合,余命の説明がされていることが大半であり,的外れなことも度々である。
自宅や自宅に準じた環境で療養をすると,想定以上に余命が延長したり,原疾患とはまったく関係ない事態(例えば,誤嚥や転倒による骨折,介護上の事故など)による突然死などもある。なかには,余命予測の正確性が家族間の問題整理に不可欠なケースもある。100人100通りである。
今回は,「家族が患者に余命を言わないでほしいと看護師に依頼してきたとき」の事例を通じて,具体的な看護師の支援方法と,在宅での余命を予測する場面での看護師の役割を述べる。
多くの患者は,“治らないがん”や“がんの再発”を伝えられたとき,今まで想定していた寿命より死が差し迫ったものと感じるのではないだろうか。だとすると,患者にとって,“治らないがん”や“がんの再発”を伝えられることは,余命告知に近い体験となる。
当院は緩和ケア病棟をもたない地域がん診療連携拠点病院である。私は緩和ケアチームのメンバーとして,がんと診断されたときから緩和ケアを提供し,患者のプロセスに寄り添いながら,患者とその家族が最期まで希望をもってその人らしく生きることができることを目指すチーム医療を行っている。今回,患者へ余命を伝えるべきかどうか,家族,主治医,緩和ケアチームメンバーとともに悩んだ事例を通して,患者に余命を伝えることの意味を振り返った。
これまでの項にあったように,これまで多くの予後予測ツールが開発され,その有用性についても検証されてきた。今後,予後の予測はより正確性を増し,医療者が患者の残された時間をより正確に把握できる未来がくるのかもしれない。
ただ,それを患者や家族に伝えるべきだろうか。最近では緩和ケアに紹介される患者・家族に,余命が伝えられているケースが増えてきているように感じている。余命を伝えられたことによる精神的な苦痛を抱えて緩和ケア外来や病棟に紹介されてくる患者・家族をみて,憤りを感じた経験がある読者もいるかもしれない。「なんて非情なことを告げるのだ!」と。
患者が「死亡直前」であることを診断することは,医療者のみならず家族にとっても重要である。科学が進んでも,「患者がいつ死亡するか」はまだはっきり予測することができない。そのため,「う〜ん……そろそろだとは思いますが,“いつ”かははっきり言えないですね。今日明日でもおかしくないですし,数日から1 週間がんばられるかも」といったあいまいな説明にならざるを得ない。
サプライズクエッションは,プライマリ・ケア医がEnd-of-life care (EOL care)に関わるきっかけをつくり,より適切なタイミングでEOL careが必要な方を見つけるために「Would you be surprised if any of these patients died in the next 12 months」という質問をプライマリ・ケア医に問いかけ,答えが「No, I would not be surprise」だったら,EOL care programに紹介してもらうプロセスをアメリカのDr.Pattisonが提唱したことが起源であるといわれている。
2011年にイギリスで開発された新しい指標であるPrognosis in Palliative care Study predictor models(PiPS models)は,原発,いずれかの遠隔転移,肝転移,骨転移,認知機能(Mental Test Score),脈拍数,食欲不振,倦怠感,呼吸困難,嚥下困難,体重減少,ECOG(Eastern
Cooperative Oncology Group)のPerformance status,Global Health,白血球数,好中球数,リンパ球数,血小板数,尿素,ALT(GPT),ALP,アルブミン,CRPから得点を算出し,14日以下(日単位),15日から55日(週単位),56日以上(月/ 年単位)を予測する1)。PiPS modelsは,血液検査の結果を必要としないPiPS-Aと,血液検査の結果を必要とするPiPS-Bに分かれている。
Palliative Prognostic Index(PPI)は,日本で開発された終末期がん患者の予後予測スケールである。PPIが発表された1999年は,イタリアのMaltoniらによるpalliative prognostic(PaP)scoreが発表された年でもある。これら2つのスケールが開発される以前には,終末期がん患者の予後不良を示す身体状況に関する報告はいくつかみられたものの,客観的な情報をもとにして終末期がん患者の予後を予測し治療計画を立てることは困難であった。症状緩和の治療効果が得られるまでに数週間を要する抗うつ剤や放射線治療などの適応を判断するために,あるいは予期せぬ死によって家族が「間に合わなかった」「もっと早く準備しておけば良かった」という気持ちを抱くことを減らすために,何か有用な根拠がないものか。こうした思いからPPIは開発された。
「この患者さんの予後は,あとどれくらいだろう?」という疑問は,わが国だけでなく諸外国の医療者にとっても重要かつ難しい問題である。そのため,これまで世界各国で生命予後を予測する方法が開発および研究されており,本項で取り扱うPalliative Prognostic Score( 以下,PaP score)はわが国で開発されたPalliative Prognostic Index(以下,PPI)と並び,予後予測に関する代表的ツールの“元祖”といっても過言ではない位置づけである。
緩和ケアでは,残された時間のなかで患者さん・ご家族の希望に沿ったケアを提供すること,よりよい時間を過ごしていただくこと,死への準備ができることなどが重要であり,そのために臨床家はできるかぎり正確な予後の見通しを示す必要がある。さまざまな予後予測ツールが利用されているが「どうやって使ったらいいか分からない」「臨床的な感覚とずれる,当たらない」などと感じている方も多いのではないだろうか。
本項では,読者にもなじみ深いPalliative Prognostic Index(PPI)を例として解説し,「予後予測ツールはどうやって作られているの?」「感度・特異度って何?」「臨床で使いにくい,当たらないのはなぜ?」などの疑問に答えられればと思う。
本論文では,日本が世界の研究をけん引している領域の1つである終末期がん患者の生命予後の予測に関する研究のこれまでの経緯と今後がわかるように解説したい。興味のある読者は,できれば,2冊の代表的な教科書の該当章をよむと世界からみた位置づけがより明確になる。一読をおすすめする。
医学教育に興味があったのと本場のアメリカンフットボールが見れるかもしれないという誘惑に,アメリカでの臨床研究に飛び込んだのは2002年,もうアメリカ生活15 年目も終わろうとしています。アメリカで経験した緩和医療教育,またコミュニケーション教育にいかに関わってきたかをここで紹介しながら,なにか日々の臨床でのヒントあるいは元気につながるようなことを書きたいと思います。
私は専門看護師でも認定看護師でもありません。自分では「がん看護」のジェネラリストナースだと思っていて,日々診療業務に携わっています。お恥ずかしいことに,自分の意図でジェネラリストナースになったわけではありません。院内外の異動でいろいろな業務を経験しているうちに,気づいたら今のようなジェネラルなナースになっていました。看護師になった理由も消極的で胸を張って言えません。やってみたら案外面白かったこと,方向を変える大きなきっかけがなかったこと,数年ごとの配置転換のおかげで常に新鮮な気持ちで仕事を続けられたようです。
【今月のKey Article】
Bandieri E, Romero M, Ripamonti CI, et al:Randomized Trial of Low-Dose Morphine Versus Weak Opioids in Moderate Cancer Pain. J Clin Oncol 34(5):436-442, 2016. doi:10.1200/JCO.2015.61.0733.[Epub 2015 Dec 7]
今月は,WHO 方式の2 段階目,つまりは,トラマドール/コデインは本当に必要なのか? に関する比較試験を扱います。「トラマドールは痛み止め」「コデインは咳止め」というイメージがありますが,トラマドールはコデインの誘導体なので同じような薬剤になります。
● 初期粘着の強化と角質ケアが重要
● 個人の技ではなく,チーム内での統一したケアとして剥がれを予防する
● 大量のフェンタニル貼付剤を使用していても鎮痛が不十分な場合がある
● この理由としては,薬理学的な問題や,耐性が考えられる
● このような場合には,やみくもにフェンタニル貼付剤を増やすのではなく,一部を他のオピオイドに変更してみる
● 臨死期の口臭対策は,患者の苦痛を最小限とし患者が望む口腔ケアを行うことである。
● 緩和ケアの場面では,汚れの回収に湿潤ガーゼ(口腔ケアガーゼ)などを用いることが患者の苦痛軽減につながると考える。
● まず口臭の原因を探索し,保湿ジェルや保湿スプレーを併用しながら汚れを浮遊させ,必ず回収することが重要である。
進行性疾患患者における便秘の合併頻度は,20~70%程度,オピオイド使用中の患者では,45~90%でオピオイド誘発性便秘(OIC)を合併すると報告されており,頻度が高い症状の1つである。また,腹痛・排便時痛や吐き気・食欲不振などの症状につながったり,せん妄の誘発因子となる場合もあり,QOLを低下させる重要な症状である一方で,医療者には軽視されがちな症状である。
すでに働き蜂として蜜を運べなくなって巣から退いた身として,今まさに大きな花を咲かせて実を結ばせようとしている1)方々に何を伝えたいのかと戸惑う。私が緩和ケアに関わったきっかけは,日本大学医学部付属板橋病院の麻酔科在職時に,呼吸器科教授岡安大仁先生からお勧めを受けたことである。「“Palliative care”って何ですか?」との私からの質問に驚かれた先生からいただいた文献を慌てて読んだ。緩和ケアチームを立ち上げて退職し,その後しばらく協力した経験と,最近のクラス会で知った同年齢の方たちの緩和ケア理解などに想いを巡らしてみた。