● 肉眼的血尿に,必ずしもトラネキサム酸は禁忌ではない。
● 止血薬投与の前に,膀胱内の凝血塊がないことを確認する。
● 尿中の血液量を減らす持続膀胱洗浄は,トラネキサム酸を使用するうえでの安全策。
問診で直腸テネスムスが出現してからの経緯,下痢や出血の有無,便意切迫感・苦痛を感じる程度・時間,トイレ移動を含めた生活への支障,気持ちのつらさなど,問診上も総合的な評価を行う。これらは,鑑別・可逆性の要因の評価,ケア的介入の工夫などにつながる。
がん患者の発汗は,高度な場合睡眠の妨げとなることもある。痛みや呼吸困難など,ほかの苦痛緩和のために日々奔走する中で,われわれは,発汗による苦痛を患者に我慢させてしまってはいないだろうか? 本稿では,おもに,がん患者における発汗・多汗に対する薬物療法と看護ケアについて解説する。
がん患者に生じる神経障害性疼痛の原因としては,①がんそのものによる(脊髄圧迫症候群や悪性腸腰筋症候群,腕神経叢浸潤に伴うものなど),②がん治療による(化学療法,乳房切除後疼痛・開胸術後疼痛,放射線療法後など),③がんやがん治療と直接関係のないもの(帯状疱疹後神経痛,糖尿病性神経障害,脊柱管狭窄症など)があり,痛みの原因を身体所見や画像検査から包括的に評価することが,まず重要である。
がん患者で多い原因としては,「イレウスを含む腸管ガス貯留・便秘・腹水貯留・胃拡張による腹部膨満」「肝腫大(肝転移)」「胸膜播種」あたりである。ほかにも,原因は多岐にのぼるのだが,中でもこれらによる横隔膜や迷走神経の刺激の頻度が高い印象である。
よって,まず第1に考えたいのが,姿勢である。
がん患者において,不眠は最も多くみられる症状の1つである。しかしながら,発熱に対して解熱薬,嘔吐には制吐薬と単純にいかないように,不眠についても睡眠薬を処方すればそれでよいというわけではなく,不眠の原因や背景疾患について的確に評価し,それに基づいたアプローチを行う必要がある。
悪性潰瘍は,皮膚表面から突出した状態にある悪性腫瘍が,一部壊死・崩壊して潰瘍化し,悪臭・出血を伴うものと定義する。全がん患者の8%に悪性潰瘍が出現するといわれており,悪性潰瘍に伴う悪臭は,セルフイメージを損なうばかりではなく,においを気にすることで患者が社会的に孤立しやすくなるといわれている1)。
痛みや呼吸困難,悪心のような代表的な症状には,ガイドラインがあり,おおむね行うべき治療が決まっている。臨床家は,悩みながらも,「まぁ,これくらいやればだいたいは“合格”だろう」という線をイメージすることができる。
今回の特集では,ガイドラインなどはっきりした記述のない症状や,遭遇する頻度は比較的少ないが難渋することが多い症状について,以下の点を専門家の立場から明らかにした。
緩和ケアの臨床研究に興味を抱くようになったのは,医者3年目で初めて学会発表をしてから研究を身近に感じるようになったことと,Harvey Max Chochinov 先生のDignityに関する研究に感銘を受けたことがきっかけである。その後は,「症例報告やケースシリーズなどをとにかく英語の論文にする」というのを目標にして続けていた。
留学目的は,「臨床研究の方法論を学ぶこと」と「異文化体験」であったが,さまざまな理由から,滞在期間は1年以内という条件で受け入れ先を探した。候補地はいくつかあったが,なかなか良い返事がこない中,2014年,札幌で開かれた国際シンポジウムに招かれていたDavid Currow 教授と懇親会で直接話をするチャンスを得て,ようやくアデレード行きが実現した。
「臨床現場でがん患者さんのケアの質向上に関わりたい」と思い,がん看護専門看護師(以下,CNS)を目指しました。しかし,その頃は日本でも数が少なく,どんなふうに活動していけたらよいのかと考え,大学院生の時に,イギリスのホスピス研修に参加しました。そこで出会ったマクミランナースから,「地域だからこそCNSが必要」「まずは1人からでも,10年後にはいいチームができるように!」と言われ,在宅をフィールドに活動しようと決めました。
イギリスの地域緩和ケアチームを参考に,日本での地域緩和ケアの1つのモデルになればと思い,地域でできるだけ自由度をもって動けるように,院長やスタッフの理解とサポートのもと,今の診療所を拠点にしました。
【今月のKey Article】
Costantini M, Romoli V, Leo SD, Beccaro M, Bono L, Pilastri P, Miccinesi G, Valenti D, Peruselli C, Bulli F, Franceschini C, Grubich S, Brunelli C, Martini C, Pellegrini F, Higginson IJ, Liverpool Care Pathway Italian Cluster Trial Study Group:Liverpool Care Pathway for patients with cancer in hospital; a cluster randomised trial. Lancet 383:226-237,2014
Liverpool Care Pathway(以下,LCP)は,看取りのパスです。イギリスで,(十分なエビデンスのないまま)施策に導入されて,その後社会問題となったために,中止が勧告されたことで有名になりました。今回扱うのは,LCPの効果を検証するために行われた「クラスターランダム化比較試験」です。イタリアで実施されましたが,共同研究者にイギリスのHigginson IJが入っており,『Lancet』に掲載されています。施策に関する研究ではありますが,臨床家が知っておくことで,施策上のことやシステムに対する介入を,自分の施設で考える時にも,役に立つと思います。
【症例】
G氏,40歳代,男性。
肺腺がん・脳転移(T4bN3M1b)のため,化学放射線療法を行った。発症から8カ月後に,肩・頸部の激痛を自覚,多発骨転移と診断された。頸部痛のため,ほとんどの時間を臥床して過ごしており,疼痛コントロールと化学療法のために入院。骨転移に対する緩和照射目的で,放射線治療科を受診した。
● ステロイドの効果は,短期間しか持続しない。
●「 やることがない時」に,ステロイドを無駄打ちせず,外出・外泊・イベントなど「重要なこと」をする日を決めて,その直前からステロイドを使う。
● 終末期患者にもセクシュアルなニーズはある。
● セクシュアルな話題は避けず,むしろ医療者から投げかけてもよい。
● プライバシーの保てる空間をつくり出す工夫が大切である。
●「 小規模多機能型居宅介護施設」を理解しよう。
● 介護のチカラを使え。
● 最期の時を支えるチカラは介護にもある。
● オピオイドによる性腺機能低下は頻度が高く,QOLに大きく関わるが,見過ごされやすい。
● 評価として,「症状のモニタリング」「内分泌学的検査」「ほかの原因の除外」が大切である。
● 治療には,「オピオイドの減量・中止」「ホルモン補充療法」がある。
ミオクローヌスは,「急速に起こり,繰り返す,電撃的な不随意運動」のことである。持続性のミオクローヌスの頻度は,10万人あたり6~8人と報告されており,頻度は高くない。一方,薬剤性などの一時的な原因によるものを含めると,比較的頻度の高い症状である。
ミオクローヌスは,睡眠の妨げ,痛みの誘発,日常生活動作への影響,患者・家族の心理的負担などにより,患者のQOLを低下させる。
医師になって40年になる。前半の15年間は放射線治療医として,そして後半の15年間を緩和ケア医として診療してきた。1990年からの10年間は,放射線療と緩和ケアの二足のわらじを履いた。
その10年間は,緩和ケアに専念できない焦りやジレンマを感じながらも,地域の仲間との活動がエネルギーとなり,全国に多くの友人もできた。各地の緩和ケア病棟を訪問したり,イギリス,ドイツ,カナダ,アメリカのホスピスも視察した。どこに行っても,最初に出迎えてくれるスタッフの笑顔や優しい言葉で安堵し,厳しい表情だと緊張して身構えた。最初に接するスタッフの「態度」は,施設のイメージに結びつくことが多かった。
日本のがん医療は,これまで小児や成人の医療に吸収されてきたAYA 世代の患者に着目し,「AYA 世代のがん医療」という独自の領域を造るべく,模索を始めた。溢れる生命力,純粋な心,柔軟な共感力をもつ若い患者たちによって,医療者をも巻き込んだ新しいがん医療の形が示されることに,大きな期待が寄せられている。
鎮静(苦痛緩和のための鎮静)は,日本国内では,臨床ガイドラインが整備されたあとに議論がひと段落した感があるが,国際的には再び議論が高まっている。本稿では,「鎮静と安楽死のグレーゾーン」について,地に足ついた議論をするために必要な,国際的な知見を整理する。理解を助けるために,ところどころ筆者の意見を加えているが,総合的な理解のためには,論文末尾の「文献」に,重要なレビューを挙げておくので,誤解のないよう,詳細はそれぞれ原著を読んでいただきたい。