ホーム > 雑誌記事

悪性消化管閉塞にどう対応する?どうケアする?
悪性消化管閉塞に対する消化管ドレナージの工夫  患者に負担の少ない経鼻胃管の使い方

悪性消化管閉塞にどう対応する?どうケアする?
悪性消化管閉塞に対する消化管ドレナージの工夫  患者に負担の少ない経鼻胃管の使い方

 がん患者の診療現場では,記憶障害などの認知機能低下はあるが,認知症か判断が難しいことが多い。つまり,認知症の主症状である記憶障害は,せん妄・薬剤・うつ病など,種々の原因でも起こりうるため,認知機能低下=認知症と判断することはできない。そのため,がん診療で起こりうるさまざまな原因を検討したうえで,DSM-5*1)の診断基準(表1)1)などで判断する必要がある。
 そして,がん治療,がん緩和ケアにおいて,「認知機能低下=認知症」とした場合,その後の意思決定やマネジメントを誤らせる可能性がある。そのため,認知機能低下が認知症に由来するものか,可逆性の原因によるものなのかということを考えることは,がん患者の診療現場では,重要な臨床判断になる。
 本稿では,がん治療,がん緩和ケアの現場において,現在起きていることが,「認知症か,もしくは認知機能の低下によるものであるか」判断が難しい場合の対応について解説する。

悪性消化管閉塞にどう対応する?どうケアする?
悪性消化管閉塞に対する薬物療法のコントラバーシー  コルチコステロイド投与の実際

 がん患者の診療現場では,記憶障害などの認知機能低下はあるが,認知症か判断が難しいことが多い。つまり,認知症の主症状である記憶障害は,せん妄・薬剤・うつ病など,種々の原因でも起こりうるため,認知機能低下=認知症と判断することはできない。そのため,がん診療で起こりうるさまざまな原因を検討したうえで,DSM-5*1)の診断基準(表1)1)などで判断する必要がある。
 そして,がん治療,がん緩和ケアにおいて,「認知機能低下=認知症」とした場合,その後の意思決定やマネジメントを誤らせる可能性がある。そのため,認知機能低下が認知症に由来するものか,可逆性の原因によるものなのかということを考えることは,がん患者の診療現場では,重要な臨床判断になる。
 本稿では,がん治療,がん緩和ケアの現場において,現在起きていることが,「認知症か,もしくは認知機能の低下によるものであるか」判断が難しい場合の対応について解説する。

悪性消化管閉塞にどう対応する?どうケアする?
悪性消化管閉塞に対する薬物療法のコントラバーシー  抗コリン薬(スコポラミン)─出番はあるのか? その使用法は?

 スコポラミンがオクトレオチドと比較して薬理学的に優る点は,①副交感神経拮抗作用により蠕動を抑制するため,強い疝痛に対してより有効である可能性があること,②嘔吐中枢に対する神経学的な制吐作用を有すること(血液脳関門を通過するハイスコ®の場合),の2点が挙げられる。
 さらに,臨床上何より有用なのは,オクトレオチドと比較してスコポラミンの費用が非常に安いことである(表1)。

悪性消化管閉塞にどう対応する?どうケアする?
悪性消化管閉塞に対する薬物療法のコントラバーシー  悪性消化管閉塞による腹痛に対するオピオイド鎮痛薬の選択

 オピオイド鎮痛薬は,悪性消化管閉塞に伴う疼痛治療で,重要な役割を担っている1)。しかしながら,オピオイド鎮痛薬の種類別に鎮痛効果を比較検討した報告はない。
 EAPCの推奨では,一般的にはモルヒネが最もよく用いられるとの記載はあるが,他のオピオイドとの優劣は論じられていない1)。代表的な緩和ケアの教科書においても,悪性消化管閉塞における腹痛に対して,オピオイドの使い分けに言及されているものはない4, 5)。しかし,個々の患者の痛みの程度に応じて増量調整を行うことは,いずれも強調されている。
 オピオイド鎮痛薬を選択する際に考慮すべき点として,「閉塞の程度」「効果が不十分である場合」などが挙げられる。

悪性消化管閉塞にどう対応する?どうケアする?
否定的な試験結果が出たことで,オクトレオチドの使い方は見直されるべきか?─私の考え

 オクトレオチドがガイドラインで強い推奨となった根拠としては,3件のブチルスコポラミン臭化物と比較した無作為化比較試験において,嘔吐回数と悪心の程度,胃管からの排液量などの項目で,オクトレオチドの優位性が一貫して示されていたことにあった2~4)。しかし,「症例数の少なさ」「臨床的意味のある差を示せていないこと」など,これら3件の研究は,研究デザインの質についての問題点が,かねてより指摘されてきた。
 実際の臨床現場からは,
「オクトレオチドを開始後に確かに症状は良くなったけど,やめてよいのか?」
「中止や減量はどのように行えばよいのか?」
「高価な薬剤であり,医療費が定額の緩和ケア病棟では,負担が大きい」
「持続皮下投与であることで,ADL向上や在宅移行の妨げになる」
といった声を聞くことが多く,オクトレオチドの使用は,臨床現場において急速に普及したが,一方で,多くの実際的な問題点が残っている状況にある。

悪性消化管閉塞にどう対応する?どうケアする?
否定的な試験結果が出たことで,オクトレオチドの使い方は見直されるべきか?─私の考え

 オクトレオチドは,投与し始めると,数日で効果がある患者の場合には,劇的な変化がある。吐く量が減るのだ。悪性消化管閉塞の患者は,摂取した飲み物,食べ物を嘔吐するのではなく,自分自身が分泌した消化液を嘔吐しているのだ。おもに,小腸内に停滞する大量の消化液を確かに減らす効果があるのだと実感した5)。時には,消化液の停滞がなくなることと,ステロイド,メトクロプラミドの効果も加わり,通過障害が解除され,少量の経口摂取が回復することもあった。
 しかし,悪性消化管閉塞の患者にとっては,オクトレオチドを含む薬物治療効果も期間限定で,がんが進行すれば,やはり,またオクトレオチド投与前の状態に戻ってしまう。

悪性消化管閉塞にどう対応する?どうケアする?
悪性消化管閉塞とオクトレオチド─これからの議論のための背景知識

 本特集では,悪性消化管閉塞に対するオクトレオチドをはじめとした薬物療法,およびおもな非薬物療法をどのように臨床に活かしていくかを扱っていくが,本稿では,本特集を読み進めていくにあたって,あらかじめおさえておくべき背景知識に関してレビューしていく。

見学では分からない海外事情
病気と共に生きる患者の生活を支えるために―北米での多施設での経験を活かして

 日本における3年間の緩和ケアチームの活動を通し,多くの難しい症例を経験した。薬剤投与やただ傾聴するだけでは緩和できない患者の苦痛に,どのように寄り添ったらよいのか,医師として何ができるのか模索していた。
 そんな時,英国緩和ケア視察研修に参加する機会があり,「統合医療:integrative medicine」という概念に出会った。従来の西洋医学に,音楽や運動,食事,マッサージなど,多方面からのアプローチを組み合わせることで,患者の生活の質を向上させる医療のことである。緩和医療に統合医療のアプローチを取り入れることで,目の前の患者の苦痛を少し和らげられるのではないかと感じ,実際の医療現場で研修するために,海外の施設を訪問する決心をした。

仕事人の楽屋裏
田村恵子

 京都市内の国立大学の看護科学コースで,教員として働いています。看護職を志す学生や,看護学の研究者を目指す大学院生の教育を行っています。また,週2日間は,医学部附属病院のがんサポートチームとがん相談支援センターで,勤務しています。

エシックスの知恵袋
認知症の患者さんに繰り返される肺炎治療…。ほんとうに良いことなのか疑問です…。

 【事例】
患者Gさん,80歳代,男性。
家族同年代の妻と,60歳代の長男と同居している。子どもは3人いるが,2人は遠方に暮らしている。妻がおもにGさんの介護にあたっている。
 【経過】
 原疾患は,認知症と大腿骨頸部骨折であり,入院加療中に,せん妄と肺炎を合併した。骨折は治癒し,退院したものの,日常生活動作は回復せず,寝たきり状態となっている。1カ月前に,誤嚥性肺炎による呼吸不全で再入院となった。経過の中で認知症も進行し,現在は,苦痛に対して発声や抵抗を見せる程度で,具体的な意思表示ができない。再入院後の抗菌治療により,肺炎自体は10日程度でいったん治癒したので,胃瘻からの栄養と,内服薬を再開した。しかし,白湯から栄養剤へ経口摂取量を増やしていく途中で,投与後の喘鳴と痰がらみが著明となり,その直後,再び発熱と酸素飽和度の低下がみられた。
 2度目の肺炎は,2週間程度の抗菌治療で改善し,投与量や投与時間をより慎重に考えた経管栄養で,肺炎が再燃することなく現在に至っており,退院を考慮する時期となった。
 そこで,もし次に肺炎を起こした時に,今回と同様に,入院と抗菌薬治療を行うかどうかにつき,退院調整カンファレンスにて,臨床倫理専門家を交え,今後の治療方針を話し合うこととなった。

生活をみる!放射線療法の看護ケア
子宮頸がんの放射線療法―外照射・腔内照射の特徴を踏まえたセルフケア支援が重要

 【症例】
E氏,40歳代,女性。
1カ月前より,不正出血が続き,受診。子宮頸がんcT2bN1(両側閉鎖リンパ節転移)M0,stageⅢB期と診断された。化学放射線療法として,weekly CDDP(シスプラチン),放射線治療(外照射50.4Gy/28fr*+腔内照射24Gy/4fr*)を受けることとなった。夫とは離婚しており,中学2年生の息子と2人暮らしである。

落としてはいけないKey Article
倦怠感に対する精神賦活薬の比較試験の積み重ねでみえてきた緩和ケアにおけるプラセボ効果・ノセボ効果の役割

 【今月のKey Article】
Bruera E, Yennurajalingam S, Palmer JL,Perez-Cruz PE, Frisbee-Hume S, Allo JA,Williams JL, Cohen MZ:Methylphenidate and/or a nursing telephone intervention for fatigue in patients with advanced cancer;a randomized, placebo-controlled, phase II trial. J Clin Oncol 31:2421-2427, 2013

これも,5月号同様,Bruera1)率いるMD AndersonCancer Centerのチームが何年も取り組んでいる(いまなお進行中の)研究です。

FAST FACT
におい(wound odor)

 wound odor(創傷臭)は,主として滲出液がある創傷から発生するにおいをいう。多くは,不快なにおいを呈し,慢性創傷である褥瘡,下腿潰瘍,糖尿病性潰瘍,腫瘍自壊創,壊死組織が存在する創傷に発生する1)。
 腫瘍自壊創のある患者の8割以上は,においによる問題を抱えていると報告され2),wound odorは,患者の身体的・心理的負担になり,対人関係や社会生活にも影響を及ぼすことから,QOLが低下する原因にもなりえる。

緩和ケア口伝―現場で広がるコツと御法度
在宅で看取りが近いと思った時の対応のコツ

● 看取りが近いなと思った時に,筆者(医師)から,以下のことを伝えている。
1. 今後の見通し(今日,明日という可能性もあること,「場合によっては,1週間ぐらいは頑張るかもしれない」と幅をもたせて伝える)。
2. 心配な時はいつでも医療者を呼んでいいこと。
3. ただし,最期の時間は,患者と家族の大事な時間と考えているので,可能であれば家族で看取ってほしいこと。
4. 家族の方も身体を大事に,無理はしないこと(家族の体調も気遣っていることを伝える)。

緩和ケア口伝―現場で広がるコツと御法度
緩和ケアスクリーニングを定着させるためのコツ

● 緩和ケアスクリーニングの目的は,「がん治療の完遂」「がんによる苦痛症状の軽減」「日常生 活への支障を最小限にすること」にある。
● 緩和ケアスクリーニングの目的を,患者・医療者みんなで共有する。
● 重要なのは,苦痛に対応する仕組みをつくることである。
● 運用方法は,現場のスタッフと決める。