「小さい娘さんに,どう関わったらいいのでしょう…」
患者さんの病状が進行する中で,いつも面会に来ていた5 歳の娘さんが病室に入らなくなってしまいました…。ロビーで1 人,遊んでいる姿が気になるけど,どう関わっていいのか分かりません。
症例
D氏,40歳代半ば,女性。
左乳房痛を主訴に受診。6×2㎝の腫瘤を認め,乳がんと診断。
乳房切除術,センチネルリンパ節生検を施行したところ,リンパ節転移が3/3のため,腋窩リンパ節郭清術を追加で実施。FEC*1)3クール,DTX*2)3クール施行し,放射線治療科に受診となった。
医学部を卒業後に,東京大学産婦人科で17年間勤務しましたが,当時はまだ一般的ではなかった在宅ホスピスに,1989年から取り組みました。数年間は,賛育会病院の院長として,病院経営の再建と緩和ケア病棟設立にも取組みました。緩和ケア病棟でやってみて「家の良さ」を再認識したこともあり,2000年から再び在宅ホスピスを開業し,15年目を迎えます。
今月は,長きにわたって「する・しない」論争が行われてきた,死亡直前の輸液に関する執念の比較試験を扱います。
日本では特に有名な,Bruera1)がずっと手がけてきた,終末期の輸液に関する一番新しい比較試験です。腫瘍学雑誌としてトップクラスの『Journal of Clinical Oncology』に掲載されました。
● リリカ®は,神経障害性疼痛や全般性不安障害の治療効果に関して,豊富なエビデンスがある。
● 不安感や不眠を伴う神経障害性疼痛に対して,速やかに奏効する可能性がある。
● 悪性腹水に利尿剤を使う場合,まずは十分にスピロノラクトンを使うことが基本。
● 併用する利尿剤を,フロセミドではなくアゾセミドにすることで,より効果を実感できる場合がある。
● 血管内脱水,腎前性腎不全の発症に注意。
● 終末期にある患者とその家族は,現在のみならず将来への経済的不安があると考えること。
● がん治療期間の長さと家計への影響は比例していると考えること。
● 患者・家族がこれまでに活用してきた社会資源を確認すること。
● 上肢にリンパ浮腫がある場合,襟ぐりや袖口が広い洋服は脱ぎ着がしやすい。
● ウールやナイロン製の素材は,皮膚を乾燥させやすいため,綿素材の肌着をつけるなど,工夫する。
● 注意事項を強調するのではなく,生活スタイルに合った工夫を示し,療養生活を支える。
● 利き手の作業のあとは,腕を挙上することで,患肢の負担を減らすとよい。
まず,最初に伝えたいことは,「偶然を必然に変える」である。ホスピス緩和ケアの分野を切り開いてきた先達は,たいていそこに至る必然の「物語」がある。私の場合は,どうか。きっかけは「偶然」といってしまえば実も蓋もないが,私にも「偶然」が「必然」となる過程には,多少の物語がある。
「怒り」は,人の基本情動(喜怒哀楽)の1つで,「こうありたい」という思いが阻止された時に,その阻害要因に対して生じる,ネガティブな感情反応である。
怒りへの対応の難しさの背景には,①患者の怒りはケアする人に向けられやすいこと,②適切に対応されなければ,怒りが怒りを呼び,患者・家族・医療者に大きな負担となる感情であること,さらに,③誰1人として同じでない背景の中で,「こうすればうまくいく」という正解がなく,多様な対応が求められること,などがある。
わが国のがん患者数は年々増加しており,がんは治る病気と認識されるようにもなってきた。しかし,従前どおり,「がん」は多くの人にとって死を意識させ,恐怖に陥れる病でもある。家族の中でその一員が「がん」に罹患すると,本人だけでなく,他の家族員も多大な影響を受ける。
今回,がんと診断されて治療を続けてきた女性が,余命が長くないことを知った。本人は自宅で家族とゆっくり過ごしたいと希望するが,夫は「絶対に治療をしてほしい」と,夫婦間で意見が対立した事例に出会った。
そこで,医療チームは,家族との話し合いをもち,家族間の意思決定の調整をしたいと考えた。
本稿では,おもに成人患者が意思決定できなくなった時に,代諾をする意思決定者をどのように決定するかについて取り上げる。現在,日本には,医療における代理意思決定者(代諾者)についての法的規定がなく,明確なルールはない。そこで,ガイドラインや海外の法律などを踏まえながら,具体例を通して,どのように考えていけばよいのか検討する。
本稿では,「面会に来ない家族が,患者をよく知る家族の意見を惑わしている」状況を,医療者が“問題”として捉えている事例を取り上げ,どのように支援するのかについて,考えたいと思う。
認知症の人というと,一般には「覚えられない(記憶障害のある)人」というイメージが強い。そのため,認知症の人の意思決定を支援するというと,「覚えるのを助ける」ことと思われがちである。しかし,認知症に伴う障害には,より強く意思決定に関わる「判断」や「表現」の障害も伴う。また,認知症と診断がつくと,「すべて判断できない」と誤解を招く場合もある。どのような「決めづらさ」があるのかを的確に判断し,必要な支援が何かを同定する力量が,支援者には求められる。
本稿では,認知症患者の意思決定に関わるポイントと実践例について示す。
英国のNational Health Serviceが,一般向けに出しているブックレット1)では,アドバンス・ケア・プランニング(以下,ACP)をこのように説明している。「ACPは,あなたと,あなたをケアする人,たとえば看護師や医師,ホームマネジャー,または家族と話し合うプロセスのことを指します。この話し合いの中で,あなたは,将来のケアについての見解や好み,希望を表すことになるでしょう。ACPは,自発的なものであり,誰かからの圧力をもって行われるものではありません」
本特集では,意思決定支援の歴史についての解説やその原則,またさまざまな場面での意思決定支援の実際について述べるが,まずはじめに,筆者が普段から実践している意思決定支援のコツ(秘伝)を伝授したい。
新基本計画の公示の中で現場がおさえておきたい全体像
2007年に施行された「がん対策基本法」(以下,基本法)を基に具体化したマスタープランである第1期の「がん対策基本計画」(以下,基本計画)の策定から5年が経ち,新たな課題が明らかになってきた。このことから,この度見直しが行われ,2012年6月に,2012年度から2016年度までの5年間を対象とした新たな基本計画が示された。
一方,今年度から始まる新たな基本計画では,現がん対策推進協議会の門田守人会長が第35回がん対策推進協議会での提供資料に示したように,今後のがん対策は,“高齢社会,医療提供体制の不可避な変革,医療データ不足,国民の学習不足,研究費・研究者不足”といった社会全体や医療全体に及ぶ課題を捉え,これらの改善・解決を見据えたうえで,さらなる推進を,質的な視点を含めて図ることの必要性が示されている。
◆ この文献の続きは、下記書籍からお読みいただけます。
米国でのホスピスは,患者の居住する自宅や,ナーシングホームなどの施設への訪問看護を中心にケアが提供されている。医師・看護師・ナースエイド・ソーシャルワーカー・チャプレン・グリーフケアの専門職種でなる,多職種チームでケースを共有し,それぞれの専門性に特化する形で協働している。
日本では,訪問看護師が幅広いケアを担っているが,米国では職域による業務内容がはっきりと区別されている。心理社会面はソーシャルワーカーがより専門的に関わり,身体的援助についてはナースエイドが担い,看護師はより医療的な面に特化して働くことができる。
緩和ケアを選択したきっかけ
大阪大学医学部附属病院の薬剤師になり,最初の担当病棟が整形外科でした。整形外科病棟は,リウマチや,変形性関節症の手術目的の患者さんが主ですが,がんの患者さんも多くおられました。患者さんと接してみて,痛みを訴える方が多いこと,薬で病気が治らないことに驚きました。
そこで,鎮痛薬やその他の症状緩和の薬,副作用について,患者さん1人ひとりと向き合う中で,実際の症状や対応策について学びました。「薬を飲んで効果が現れるのが何時間後だから,何時にもう1回訪室して効果と副作用を確認する」「何日後に採血を依頼する」といったことを毎日繰り返しました。
今月のKey Article
Currow DC, Quinn S, Agar M, Fazekas B, Hardy J, McCaffrey N, Eckermann S, Abernethy AP, Clark K:Double-blind, place bo-controlled, randomized trial of octreotide in malignant bowel obstruction.J Pain Symptom Manage. doi: 10.1016/j.jpainsymman.(2014 Nov 14. Epub)[ Epub ahead of print]
これは,MDAnderson Cancer Centerと並んで,複数の大規模比較試験を実施中のオーストラリアのPaCCSと呼ばれる研究チームの初期の研究です。これに関連する研究として,日本でよく引用される小規模のブチルスコポラミン臭化物(以下,ブスコパン®)との比較試験と,あまり日本では紹介されない持続性ソマトスタチンの比較試験があります。もし余裕のある方は,これらをまとめて読んでみてください。