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日本のがん患者の疼痛の頻度とPain Management Indexに関するメタ分析

日本のがん患者の疼痛の頻度とPain Management Indexに関するメタ分析

高橋理智*1, 2 森田達也*3 野里洵子*4 服部政治*5 上野博司*6 岡本禎晃*7
伊勢雄也*8 佐藤一樹*9 宮下光令*10 細川豊史*6
*1 田園調布中央病院 薬剤科
*2 東邦大学大学院 医学研究科 医療統計学分野
*3 聖隷三方原病院 緩和支持治療科
*4 東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター
*5 がん研有明病院 麻酔科
*6 京都府立医科大学 疼痛・緩和医療学講座
*7 市立芦屋病院 薬剤科
*8日本医科大学付属病院 薬剤部
*9 名古屋大学 大学院医学系研究科 看護学専攻 基礎・臨床看護学講座
*10 東北大学大学院 医学系研究科 保健学専攻 緩和ケア看護学分野


 痛みは,がん患者においてなお深刻な問題である 1-5)。1986年にWHO 方式がん疼痛治療法が発表され,すでに30 年が経過したが6),日本のみならず国際的にがん疼痛が十分に緩和されていないと考えられている1-5)。WHO方式がん疼痛治療法は,がん患者の痛みの70~90%に効果があるとされる7)一方で,有効性やエビデンスが不十分であることも指摘されている2, 8)。しかし,1986年以降,緩和ケアや疼痛治療に関する知識や技術は世界的に進歩し,ヨーロッパ緩和医療学会(European Association for palliative care:EAPC)をはじめ多くの関連学会が,がん疼痛治療に関するガイドラインを発行している。それにも関わらず,最近の研究でも進行がんではがん患者の66%に痛みがあるといわれている9)。Pain Management Index(PMI)10)は,がん患者の疼痛管理の質の指標として,信頼性・妥当性が検証されたものであり,国際的に最も使用されている。

日本での実証研究の今

松本 禎久
国立がん研究センター東病院 緩和医療科


 「早期からの緩和ケア」提供は,わが国においても施策として導入されて久しく,その間に欧米からエビデンスも示されてる。しかし,実際の臨床現場においては人的資源をはじめ実施上の問題も多く,いまだに緩和ケアが早期から患者に適切に提供されているとは言いがたい。こうした状況のなか,日本の社会保障体制や文化においても実施可能なモデルの構築が必要と考えられる。本稿では,現在,筆者らの施設で実施している進行肺がん患者を対象とした早期からの専門的緩和ケア提供についての研究を紹介する。

大学病院における「腫瘍内科・緩和ケア科兼任医師」の役割

吉田 健史
近畿大学医学部附属病院がんセンター緩和ケアセンター・腫瘍内科兼務


 近年の分子標的薬や新たな制吐剤の導入により,ほとんどの抗がん剤治療は外来での施行が可能となり,患者は日常生活を維持しながら長期の生存が可能となってきた。このような現状のなかで「診断時からの緩和ケア」を実践することは,長期間にわたって抗がん剤治療と緩和ケアを併用することに他ならず,がん治療および緩和ケア双方の医療者にとって,これまで以上に互いの領域の理解とさらなる連携が必要となる。最近ではどのように腫瘍学と緩和ケアを統合していくのかが議論となると同時に,腫瘍内科と緩和ケアの両者を専門とするpalliative oncologistという概念も生まれ,今後ニーズが高まることが期待されている 1, 2)。日本では地方を中心に腫瘍内科医・緩和ケア医ともにマンパワーが不足しており,以前から内科医や外科医がpalliative oncologistの役割を担ってきた現状がある。一方で,大学病院やがんセンターなどのがん専門施設においては現在でも腫瘍内科と緩和ケア両者に従事する医師は少ない。

がんと診断されたときからの緩和ケア 外来・病棟看護師にできること

児玉 美由紀
北里大学病院 集学的がん診療センター がん相談支援室


 北里大学病院(以下,当院)では,「がん対策推進基本計画」の「がん診療連携拠点病院等の整備に関する指針」(2014年1月)に基づき,これまでの体制を見直し,「苦痛のスクリーニング」を含む新たな緩和ケアの提供体制の整備を行った。そのなかでも,外来・病棟看護師が苦痛のスクリーニングをきっかけに基本的緩和ケアに取り組むことで,病院全体の緩和ケアの質が高まったと考えている。そこで,本稿では,当院での具体的な取り組み状況を伝えたい。

看護師が柔軟に対応するがん患者支援システムの構築について

武見 綾子
川崎市立井田病院 看護部


川崎市立井田病院は,1949年の開院以来,地域医療の中核を担う病院として地域のニーズや社会の変化に柔軟に対応しつつ発展してきた。現在は川崎市内唯一の結核入院設備をもつ病院である。在宅医療にも力を入れ,1998年には緩和ケア病棟を設置した。2006年に地域がん診療拠点病院の指定を受け,がんの診断から治療,緩和ケアと切れ目のない医療,ケアを提供している。2015年3月に,外来および病棟が新築され,救急センター,内視鏡センター,化学療法センター,透析センターの機能を充実し383床の病院となった。

「早期緩和ケア」「オンコロジーと緩和ケアの連携」「がんと診断されたときからの緩和ケア」のちがい

釆野 優*1, 2 森 雅紀*3, 4 森田 達也*5 武藤 学*1

*1 京都大学大学院医学研究科 腫瘍薬物治療学講座
*2 聖隷三方原病院 ホスピス科
*3 聖隷三方原病院 臨床検査科
*4 聖隷三方原病院 緩和ケアチーム
*5 聖隷三方原病院 緩和支持治療科


Temelらの「早期緩和ケア」の臨床試験が,2010年にNEJM誌から発表された1)。それ以降,抗がん治療中から専門的緩和ケアサービスを進行がん患者に対して提供することについて,世界中で活発な議論が交わされるようになった。わが国でも,「がん対策進基本計画」(以下,基本計画)が,Temelらの論文発表前の2007年に策定され,早期からの緩和ケアが「重点的に取り組む課題」として掲げられた。2012年の基本計画の見直し(第2期基本計画)を経て,「がんと診断されたときからの緩和ケア」に呼称が変更され今日に至っている。

のぞいてみよう!国際学会最前線 8
国内で国際会議を体験する─ 第2回がん緩和ケアサミットに参加して

学会名:第2回 がん緩和ケアに関する国際会議:2nd SCPSC:The 2nd Sapporo Conference for palliative and Supportive care in cancer
開催日:2017年6月16日~17日
開催地:札幌


川村 三希子
札幌市立大学 看護学部


がん緩和ケアに関する国際会議は,緩和的腫瘍学(palliative oncology)と精神腫瘍学(psychooncology)の2本の柱を基盤として,その基礎と臨床の研究に貢献することを目的としています。第1回は医療法人東札幌病院創設30周年を記念して2014年に開催され,22カ国から700人を超える参加者があり大成功を収めました。そして継続要望の声に応え,2017年6月に札幌の地で再び第2回が開催され12カ国から750人の参加者が集いました。

えびでんす・あれんじ・な~しんぐ(EAN)─放射線性口腔粘膜障害<8>

後藤 志保( がん研究会有明病院 看護部,がん看護専門看護師)


 放射線性口腔粘膜障害は,頭頸部領域に放射線治療を行った場合にみられる照射部位に合致して生じる粘膜炎である。総線量が増加していくにしたがい,徐々に粘膜炎が悪化していき痛みを伴う。口腔粘膜障害による痛みは,食事だけでなく,呼吸や会話にも影響を与え,患者のQOLを著しく損ないかねない。

仕事人の楽屋裏 19
向山雄人

 医学部6年生のときにいつも私を可愛がってくれ励ましてくれた母方の祖父が進行した肝細胞がんと診断されました。当時はまだ確立された治療法やがんの進行に伴う痛みや苦痛を取る治療・ケアもありませんでした。
 病院に行くといつも祖父から,「雄人は医学生だろ。この苦しさは何とかならないのか」と問われましたが,だまってうつむくだけした。

FAST FACT〈19〉ディグニティセラピー

小森 康永(愛知県がんセンター 精神腫瘍科部)


 ディグニティセラピーは,生命予後が限られた人々の実存的および心理的苦悩に対処するように計画された,患者を肯定する心理療法的介入である。

落としてはいけないKey Article 19
実臨床でどうしたらいいかわからないことを「心理実験」で明らかにする

森 雅紀(聖隷三方原病院 緩和ケアチーム)
森田 達也(聖隷三方原病院 緩和支持療法科)


【今月のKey Article】
Mori M, Fujimori M, Hamano J, et al:Which physicians’ behaviors on death pronouncement affect family-perceived physician compassion? A randomized, scripted, video-vignette study. J Pain Symptom Manage pii:S0885-3924(17)30435 – 9 , 2017 . doi:10 . 1016 /j.jpainsymman. 2017.08.029[. Epub ahead of print]

今月は,普段の臨床の「こういうときどうするのがいいのかなあ」という“もやもや”を解決するための実験的研究で筆者らが実施したものを紹介します。テーマは,「死亡確認のときに医師はどういう振る舞いをしたらいいのか」です。

緩和ケア口伝―現場で広がるコツとご法度(19)
腹水貯留やサルコペニアによる立位動作困難を緩和する方法─車椅子や便座の補高について

吉田 奈美江
(カレスサッポロ時計台記念クリニック)


● 腹水貯留やサルコペニアによる立位動作困難には,椅子や便座の補高の工夫が有用である。
● ADL低下に関連するスピリチュアルペインには,自助具等の工夫で自立性の維持を支援できる可能性がある。
● 理学療法士,作業療法士等を交えた多職種での協働が患者の笑顔につながる。

緩和ケア口伝―現場で広がるコツとご法度(19)
がん化学療法中の患者に対するアズレンスルホン酸ナトリウム・グリセリンスプレーによる口腔粘膜炎予防

二村 舞子,
(名鉄病院 医療支援センター,がん看護専門看護師)
尾関 愛加,土田 絵里菜
(名鉄病院 看護部)


● ブラッシングや含嗽に加え,本スプレー噴霧をすることで粘膜炎の発症率を抑えられる。
● 唾液が減少し始める5日目頃から重点的にスプレー噴霧をする。
● 手軽に使用できる。
● 口内炎が発症しても重症化は防ぐことができる。

緩和ケア口伝―現場で広がるコツとご法度(19)
High Flow Nasal Cannula(HFNC)の使い方

亀井 千那
(がん・感染症センター 都立駒込病院 緩和ケア科)


● HFNCは呼吸困難だけでなく,食事・会話等QOLの維持にも有効な可能性がある。
● 意識や意欲が保たれている段階での使用開始を検討したい。
● 流量と酸素濃度の調整,配管や機器の工夫で,より快適さを追求できる。

いま伝えたいこと―先達から若い世代に(18)
若いころに悩み「仏教の教えに看護と看取りの原点」を学んだ者として

藤腹 明子
(淑徳大学客員教授)


未だ看護界では市民権を得られていないと思われますが,「仏教看護」という概念を標榜して以来22年目になります。仏教看護は,科学的看護を基もといにしつつも,科学の力や人間の力では解決できないことにも目を向け,利用者の立場に立った,より日本的な看護を目指そうとしたものです。日本的とは日本の文化,宗教,国民性,歴史などを尊重し,わが国にふさわしい個別性と独自性を大切にしたいということです。この考え方は,看取りの場においても取り入れていただける概念ではないかと思います。本稿では,仏教の教えに学ぶ看取りの原点について,少しお伝えできればと思います。

のぞいてみよう!国際学会最前線 7
EAPCは仲間を増やす場所

学会名:第15回 欧州緩和ケア学会国際大会(15th World Congress of the European Association for Palliative Care)
開催日:2017年5月18日~20日
開催地:スペイン,マドリード


西山 菜々子
市立芦屋病院
リハビリテーション科/作業療法士
広島大学大学院医歯薬保健学研究科
保健学専攻 博士課程前期


The European Association for Palliative Care(EAPC)は,緩和ケアを臨床・研究・社会の各領域でヨーロッパ全土に広めることを目的に1988年に設立された団体で,World CongressとResearch Congressが1年おきに開催されます。今年はWorld Congressの年で,プログラムには多くの教育講演が企画されていたり,開催国の言語(スペイン語)への同時通訳サービスが提供されていたりと,学会として開催国の緩和ケアスキルを高めるための働きかけを感じました。Europeanといいながらも,アメリカやアフリカ,アジアなど世界中から緩和ケアの研究者が集まります。今年は2,800人の参加者が集い,日本からも50人ほど参加していました。

えびでんす・あれんじ・な~しんぐ(EAN)─実践力を上げる工夫<7>
消化管閉塞に伴う悪心・嘔吐─ オクトレオチドの持続注射の中止あるいは代替薬の検討

林 ゑり子(藤沢湘南台病院)


悪性疾患による消化管閉塞に対して,保険適用のある「オクトレオチド(サンドスタチンⓇ)」を使うことがある。オクトレオチドは,全身に普遍的に存在する抑制性のホルモンであり,視床下部では,成長ホルモンおよび甲状腺刺激ホルモン(TSH),プロラクチン,副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の放出を抑制する。その他,インスリンやグルカゴン,ガストリン,胃・腸・膵管系のペプチド(ペプチドYY,ニューロテシン,VIP,サブスタンスP)の分泌も抑制し,内臓や門脈の血流,胃腸管の運動,胃・腸・すい臓系の分泌の減少,水や電解質の吸収を促進する。

落としてはいけないKey Article 18
非劣性試験って何? 粘膜吸収性フェンタニル vs. モルヒネ皮下注射

森田 達也(聖隷三方原病院 緩和支持療法科)
小山田隼佑(NPO法人JORTC 統計部門)


【今月のKey Article】
Zecca E, Brunelli C, Centurioni F, et al: Fentanyl sublingual tablets versus subcutaneous morphine for the management of severe cancer pain episodes in patients receiving opioid treatment:a double-blind, randomized, noninferiority trial. J Clin Oncol 35(7):759-765, 2017. doi:10.1200/JCO.2016.69.9504

粘膜吸収性フェンタニルの論文が次々と出ています。今月は,「非劣性」を示すために行ったという点で緩和治療領域ではあまりみない研究を読んでみます。「非劣性が示された」「非劣性が示されなかった」……。結局何が分かったのか何度説明を聞いてもいまいち(筆者も含めて)分かりませんが,少し整理できるといいなと思います。

緩和ケア口伝―現場で広がるコツとご法度(18)
ブリーフセラピーを援用したデスカンファレンス─過去の意味づけは変えられる

三谷 聖也(愛知教育大学心理講座)


● 患者の死という過去は変えられない。しかし過去についての意味づけは変えられる。
● 傾聴や共感のその先を目指し,「質問」によって現実を構成していく。
●「 後悔」と「達成感」のあいだの気持ちをリフレイム(再意味づけ)する。