「困難事例」の裏にあるかもしれない発達障害
◆ゲストエディター
上村 恵一(国立病院機構北海道医療センター 精神科)
◆企画担当
森田 達也(聖隷三方原病院 緩和支持療法科)
海津未希子(聖路加国際病院 オンコロジーセンター)
緩和ケアで対応が困難であったり,精神心理的背景の評価に苦慮したりする症例のなかに発達障害が背景にある患者が含まれている。発達障害は,診断基準が分かりにくく,正確な診断には精神心理的ケアに携わる専門家の助けが必要であるものの,安易なレッテル貼りにならないことが極めて重要であると思われる。
人は,発達に対しての偏りを少なからず有しており,その程度が緩和ケアを提供するにあたり阻害要員となる場合に,その発達特性について加味しながら関わる必要がある。
本特集では,臨床場面で出会いやすい困難事例から,執筆者が発達の偏りを疑ったきっかけ,そのアセスメントの実際,介入の実際などについて症例を交えて概説する。患者や医療者を発達障害であると診断するのが目的ではなく,本誌読者が,発達障害についてレッテル貼りにならず,偏りに気がつくメリット,関わりについて工夫するメリットに自信をもってもらえると幸いである。
〔特 集〕「困難事例」の裏にあるかもしれない発達障害
ゲストエディター:上村恵一
企画担当:森田達也,高橋美賀子
特集にあたって…森田達也,他
緩和ケアをするうえで必要な発達障害の知識…上村恵一
発達障害という視点を緩和ケアに活かす
1 「理解が悪い」と感じられる患者/「先々のことが考えられない」と感じられる患者…東谷敬介,杉山効平
2 「こだわりが強く,治療に滞りがある」と感じられる患者…井上真一郎
3 「死ぬかもしれないと認識していない患者」にどのように対応するか?…齋藤 円
4 「予定の変更でパニックになる」患者…榎戸正則
5 「こだわりが強く怒りっぽい患者」への対応…坂田尚子
6 「クレームが多い,ルールが守れない」患者…大谷弘行,白石恵子
7 「きれい好き過ぎる」患者…相澤香織
発達障害のあるらしい医療者との協働…佐々木 史
連 載
◆FAST FACT(22)
Non-convulsive status epilepticus(非けいれん性てんかん重積状態) 小川朝生
新連載 ◆緩和ケアコンサルテーションの秘訣(1)
チームビルディングとチームワーク 谷向 仁,他
新連載 ◆ホスピス緩和ケアの日々(2)
コミュニケーションの力とは…相河明規
◆いま伝えたいこと─先達から若い世代に(22)
体験が教えてくれる病める人のこころとからだの痛み・苦しみ…佐藤禮子
◆仕事人の楽屋裏(23)
関根龍一
◆緩和ケア口伝─現場で広がるコツと御法度(23)
◎がん関連疲労について…玉田 聡
◎手足症候群予防にHMB含有栄養補助食品…長沼 篤
◎終末期において理学療法を行うコツと注意点…内山郁代
◎終末期がん患者の呼吸困難感へのこころと手で触れるケア…前田節子
◆落としてはいけないKey Article(23)
ガイドラインにしたがって制吐剤を選択するのは意味がない?…森田達也,他
◆えびでんす・あれんじ・な~しんぐ(EAN)─実践力を上げる工夫(12)
便秘―薬剤だけでなく患者の生活に焦点を当てた介入…熊谷靖代
◆のぞいてみよう! 国際学会最前線(12)
世界を知って自分の医療を見つめ直す…松岡弘道