アドバンスケア・プランニング 光と影
◆企画担当
西智弘(川崎市立井田病院かわさき総合ケアセンター)
矢野知美(東京逓信病院がん相談支援センター)
2025年,日本は多死時代を迎える。それを見据え,「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」が改訂され,アドバンスケア・プランニングの実践と啓発が進められることになった。このガイドラインでは,患者が医療者から十分な情報と説明を受けたうえで話し合いを行い,患者本人による意思決定を基本として医療を進めることが重要であることや,患者の意思確認,またそれができない場合の判断の方法などを定めている。そして保険診療上もアドバンスケア・プランニングの実践が評価されることとなった。
しかし一方で,アドバンスケア・プランニングの実際,特に海外における事前指示書作成の失敗や,アドバンスケア・プランニングが生まれた経緯などを知らずに実践を行っていくことは,失敗の轍をなぞることにもなりかねない。そして,海外での実践が本当に今の日本の国民性に馴染むのだろうか。
そこで今回は「アドバンスケア・プランニング 光と影」と題して,私たちが日本でアドバンスケア・プランニングを実践していくうえで期待できる部分,そしてこれまで実践してきた先人たちの歴史,また懸念される「影」の部分について特集した。私たちは,患者たちの生と死の物語のなかに,どのように関わっていくべきなのか,本特集で取り上げた。
目次
〔特 集〕
アドバンスケア・プランニング 光と影
企画担当:西 智弘,矢野和美
特集にあたって 西 智弘,矢野和美
アドバンスケア・プランニング(ACP):今に至るまで 木澤義之
人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドラインの要点とその変更点 木澤義之
日本人の死生観とACP 井口真紀子
ACPの影 川口篤也
家庭医はACPをどうとらえているか─緩和ケアとの連携 加藤光樹
先駆けて行った人たち
①PROs(患者報告アウトカム)をきっかけとした病院現場主体のACP実践─医療行動経済学アプローチ:ACPコミュニケーション促進のための患者だけでなく医療者へのさりげないナッジ 大谷弘行
②地域全体でACPプロセスを支える─ふくろうプロジェクト:高齢者救急×地域包括ケア×ACPの挑戦 山岸暁美
病院での取り組み
①事例検討を通して病院内に広めたACP 岩本純子
②外来通院患者へのACPの取り組み 塩井厚子,他
③移植後長期フォローアップ外来における取り組み 大内紗也子
地域での取り組み
①病院の外でACPに関わる 横山太郎
②出会いを前に─退院支援から,ACPというアプローチの必要性へ 宇都宮宏子
③訪問看護での取り組み 熊谷靖代
④「もしバナゲーム」とACP 蔵本浩一,他
連載
FAST FACT 27
幻肢痛 住谷昌彦
緩和ケア口伝─現場で広がるコツと御法度 27
がんを患う地域住民に向けたセルフマネジメント支援モデルの検証 北得美佐子
がん患者に寄り添う鍼灸治療 佐々木久子,他
‘こころ’とつながっている言葉を,がん患者に届ける ─‘体験者の持ち前’を活かした緩和ケアも見据えて 宮本直治
がん治療中の患者に対する緩和医療としての音楽療法の初期経験を通して 村上聖子
えびでんす・あれんじ・な?しんぐ(EAN)─実践力を上げる工夫 16
がん患者の疼痛の実態と課題 外来/入院の比較 榊原直喜
緩和ケアコンサルテーションの秘訣 5
コンフリクト・マネジメント 嶋田和貴,他
落としてはいけないKey Article 27
ネットワークメタアナリシスにだまされない:せん妄・オピオイド誘発性便秘症に対する薬物療法 森田達也
ホスピス緩和ケアの日々 6
持続的鎮静について─ケアタウン小平の実際 相河明規
仕事人の楽屋裏 27
広瀬寛子
のぞいてみよう! 国際学会最前線 16
「がん治療」と「支持療法」「緩和ケア」の関わりを考え,学ぶ 田上恵太