特集 「命を終えたい」と患者が望んだとき
われわれがたずさわる緩和ケアは,そもそも「安らかで楽な死」のあり方に対して,安楽死ではない形を提供するために生まれ,発展してきたといえる。日本国内においても,安楽死制度を求める声が上がってくるなかで,われわれはそれにどう応えることができるのだろうか。また,「治療の差し控えと安楽死は何が違うのか」「鎮静とは『ゆっくりとした安楽死』ではないのか」という声も上がるなかで,現場のスタッフが「自分たちの医療行為やその差し控えは,安楽死に加担していることと同義ではないのか」ととらえて悩む声も聞こえてくる。
「死にたい」と訴える患者の姿を見つめ直し,「死の権利」をどう考えるべきかを整理し,そして現状においてわれわれができるところ,目指すべきところを考えたい。
目次
特集 「命を終えたい」と患者が望んだとき
特集にあたって 西 智弘/矢野和美
Outline
諸外国における安楽死の動向 田中美穂
日本における「安らかで楽な死」 西 智弘
Detail
死にたいと訴える患者の実像とケア 梅澤志乃
「死にたい」に関する精神医学的評価─合理的な死の希望はあるか? 明智龍男
ALS患者の死の希求と社会的サポート 川口有美子
死の権利はあるか 服部健司
患者は鎮静を選ぶ権利はあるのか? 新城拓也
医療自殺幇助を合法的に施行して─ハワイ州における緩和ケア医の経験 植村健司
慢性腎疾患に対する緩和ケア─透析中止における緩和ケアの役割 三浦靖彦/濱口明彦
人工呼吸管理の中止における緩和ケアの役割 多田羅竜平
治療抵抗性の苦痛に対する鎮静(セデーション)の適応拡大の是非─なぜふみとどまらなければならないのか? 森田達也
世界の緩和ケア団体が目指すところ 木澤義之
Column
わたしはこう思う 柏木哲夫
死は苦ではあっても権利ではない 志真泰夫
「安楽死」論議のなかでわたしが思うこと 田村恵子
連載
FAST FACT
ガバペンチノイド 田上恵太
落としてはいけないKey Article
アナモレリンとEating-related Distress(ERD) 森田達也/天野晃滋
えびでんす・あれんじ・な~しんぐ(EAN)─実践力を上げる工夫
遠隔医療・看護 伊藤奈央
ホスピス緩和ケアの日々
最後まで感謝して生きる/生かされているということ~祖母が教えてくれた大切なこと 相河明規,他
仕事人の楽屋裏
矢野琢也