いまや全国どの地域においても,がん疼痛に対してオピオイドを中心とした鎮痛薬やガバペンチン誘導体を中心とした鎮痛補助薬を投与することは普通に行われている。しかし,それだけではがん疼痛のすべてを緩和することはできない。いまよりも鎮痛の改善を目的とするならば,何か難治性疼痛向けの技術なり,アセスメントなり,スキルが必要ということになる。 本増刊号では,「緩和ケア」誌ならではの,「普通の(まず行う,簡便な)方法では緩和できない」難治性疼痛への対応をまとめてみた。「がん疼痛がいまいちすっきりしない時」に頼りになる1 冊となれば幸いある。
目次
総 論
難治性疼痛かなと思ったら?─考え方の道筋 森田達也
第Ⅰ章 治療モダリティを知る
Ⅰ-1 難治性疼痛を前提とした薬物療法─内服できる時・できない時
1 難治性疼痛におけるオピオイド鎮痛薬の可能性 大坂 巌
2 メサドンを使いこなして難治性疼痛を緩和しよう 石川 彩夏/石木 寛人
3 鎮痛補助薬を使いこなして難治性疼痛を緩和しよう 松岡 弘道
4 難治性疼痛を前提としたアセトアミノフェン・NSAIDsの考え方 馬渡 弘典
5 難治性疼痛を前提とした突出痛に対する鎮痛法の考え方 赤谷 麻美
6 難治性疼痛患者の不眠に対する薬物療法の考え方 赤穂 理絵
7 難治性疼痛を前提とした非経口の薬物療法の考え方 渋谷 仁/余宮 きのみ
Ⅰ-2 難治性疼痛を前提とした薬物療法─オピオイドによる有害事象への対応
1 難治性疼痛に対してオピオイド鎮痛薬を増量中に精神症状が生じた場合の薬物療法の考え方 佐伯 吉規
2 難治性疼痛に対してオピオイド鎮痛薬を増量中に悪心・嘔吐が生じた場合の薬物療法の考え方 早瀬 朋美/山口 崇
3 難治性疼痛に対してオピオイド鎮痛薬を増量中に耐性が生じた場合の薬物療法の考え方 河合 桐男/井上 玲央/他
1-3 難治性疼痛を前提としたインターベンショナル治療
1 難治性疼痛に対する麻酔科・ペインクリニックの引き出し 水嶋 章郎
2 難治性疼痛に対するくも膜下鎮痛法の現状と今後 小杉 寿文
3 抗凝固療法を行っている時・凝固異常がある時の神経ブロックの考え方 大西 佳子
4 難治性疼痛に対する緩和的放射線治療の引き出し 高橋 健夫/山野 貴史/他
5 難治性疼痛に対するIVRの引き出し 曽根 美雪
6 難治性疼痛に対する整形外科の引き出し 角谷 賢一朗/由留部 崇/他
第2章 看護の役割
1 難治性疼痛をみた時の「評価する」という視点での看護ケア 岡山 幸子
2 薬物療法だけで緩和が難しい場合は「ケア」が決めてー難治性疼痛の閾値を上げるケア,いかにリラックスできる時間を見つけ出せるかがキーポイント 林 ゑり子
3 難治性疼痛をみた時の「痛みを減らす」環境整備,動作という視点での看護ケア 重野 朋子
4 難治性疼痛をみた時の「レスキュー薬を使いこなす」という視点での看護ケア 山中 政子
第3章 病態別の鎮痛法を知る
1 頸髄・胸髄への直接浸潤 橋本 龍也/齊藤 洋司
2 仙骨神経叢浸潤 田中 成明/山本 兼二/他
3 会陰部痛 金井 昭文
4 膵臓がんー上腹部痛 平川 奈緒美
5 骨盤内腫瘍による疼痛 佐藤 哲観
6 頭頸部がん 松本 禎久
7 胸壁浸潤による痛み 山代 亜紀子
8 腕神経叢損傷 森山 久美/橋口 さおり
9 悪性腸腰筋症候群 西島 薫
10 肩関節・股関節の破壊・手術適応のない骨幹部骨折 櫻井 宏樹
11 難治になりやすい非がん性慢性疼痛 鈴木 正寛
12 「難治性がん疼痛」に隠れている筋骨格痛ー医学治療を中心に 蓮尾 英明
13 「難治性がん疼痛」に隠れている結合組織および筋骨格痛ー理学療法を中心に 宮田 知恵子
第4章 終末期の難治性疼痛の考え方
1 終末期の難治性疼痛の考え方─鎮静を考えるとしたら 今井 堅吾
2 生命に直結する合併症による痛みの治療の考え方ー腸管穿孔・腸管虚血・肝出血など 本間 英之
3 非がん性慢性疼痛に対する終末期の治療ゴールの考え方 馬場 美華
4 終末期がん患者の難治性疼痛に対する看護ケア 市原 香織
第5章 難治性がん疼痛ー私が思うこと
1 やってみてなんぼ 大坂 巌
2 魔法の鎮痛法 余宮 きのみ
3 痛み診療のモヤモヤ 小杉 寿文
4 緩和ケアとスティグマ 山口 重樹
5 難治性がん疼痛─過去,現在,未来 渡邊 昭彦
6 私の忘れられない難治性疼痛の患者さんの話 四宮 敏章
7 メサドン論議 岡山 幸子
8 患者の苦痛がどうにもならない時に「不全感」と付き合っていくことーほどよい医療者でいること 佐々木 千幸
9 難治性疼痛への対応 關本 翌子
10 どうにもならない痛みを抱える患者に対する看護師としてのあり方 風間 郁子
11 変わらない痛みに応答するケアの態度 前滝 栄子