知っておくべきがん患者の子どものケアとサポート
1年間に新規に診断されたがん患者のうち18歳未満の子どもがいる人は全国で約5.6万人(2015年データ)いるとされ,その子どもの数は8万人以上となっている。そのうち約半数が12歳以下の子どもであることがわかっている。それもあくまで新規に診断された患者数であり,累積がん患者数でいえばさらにその何倍もの患者さんが子どもを養育しながらがんの治療を受けていることになる。
がんの診断や治療は,がん患者自身のみならず,その子どもたちにも多大な影響を与える出来事であり,医療現場においても医師や看護師だけではなく,小児心理士,ソーシャルワーカー,地域等の多職種・多方面によるサポートが求められる。しかし,子どもへのアプローチについては、個々の現場での工夫に頼っている部分が多く,ほとんど対応していない現場や,困難な事例などへの対応などで難渋している現場など,さまざまであろう。
本特集では,がん患者の子どもへ病院および地域でのサポート事例について紹介,現場での取り組みの参考となることをねらいとしている。
目次
特集 知っておくべきがん患者の子どものケアとサポート
特集にあたって 高橋美賀子/海津未希子/小澤美和
Outline
がん患者の子どもへのアプローチのあり方 小澤美和
Case
がん患者が未成年の子どもに病気のことを知らせたくない場合の支援のあり方 小嶋リベカ
自分の病気について知らせたくない親と知りたいと望む子ども双方への支援 村瀬有紀子
子どもが面会に来ない場合 井上実穂
がん患者の子どもへのアプローチについての一考察─ひとり親家庭の場合 尾関玲子/柿森千草
発達段階の異なる子どもへの支援─多職種連携による親役割発揮への支援が子どもの受容を促進した一例 石井有紀/近藤咲子/SKiP KEIO
個々の子どもの成長過程を見守りつつ長期的な視点で支援を継続する 江口惠子
患者と配偶者・両親(祖父母)の意向が違う場合(病気を知らせること,面会など) 稲田美和子
終末期がんの親をもつ子どもへの病状説明に関して患者・家族間で意見が異なった事例への対応─医師の視点から 岡本信也
発達に偏りのある子どもの場合 白石恵子
Support
彼らは何を学ぶのか?─小学校におけるがん教育 儀賀理暁・他
親ががんになった子どもへの学校におけるサポート─冊子の紹介と医療者からのアプローチ 小林真理子
Column
学校と病院との連携を考える 渡邉裕美
連載
落としてはいけないKey Article
終末期せん妄の薬物療法のランダム化試験─ついにここまで 森田達也/内藤明美
FAST FACT
オキシコドン 江口未来
ホスピス緩和ケアの日々
院長の洗腸 相河明規,他
Topicアラカルト 在留外国人緩和ケア事情
ブラジル人への緩和ケア 森田達也/佐久間由美/三輪 聖
仕事人の楽屋裏
桜井なおみ
えびでんす・あれんじ・な~しんぐ(EAN)─実践力を上げる工夫
患者と介護者が望むアドバンス・ケア・プランニングの実践 重野朋子
書評(緩和ケア・がん看護 臨床評価ツール大全 宮下光令 編)
適切な緩和ケアの実践をめざす臨床家にも手元に置いて欲しい一冊 田村恵子