今こそ知っておきたい臨床倫理―理論と実践
緩和ケアの領域においては,人生の最終段階にある患者が多く,限られた時間のなかで益と害を考えていかなければならない場面が多くあり、プロセスガイドラインでは,本人の意思がわからない場合には“最善の方針” “最善の選択”をするよう提案されている。しかし,“最善の利益”や“最善の選択”とは何かが非常に曖昧であり,臨床現場では判断に苦慮するところである。
本特集では,がん患者を主とする緩和ケアの領域において,各方面の専門家による“ぶつかる倫理的課題”についてと臨床の方々による“日々直面する倫理的課題”について具体的な事例を交えて解説している。
【目次】
特集:今こそ知っておきたい臨床倫理―理論と実践
特集にあたって 髙橋美賀子/田村恵子/木澤義之 372
Overview「緩和ケアでの倫理とは」
1.どうして緩和ケアでは「倫理」が重要か 田村恵子 373
2.患者の「最善の利益」とは何か―狭い概念から広い概念へ 田代志門 375
Column ①
臨床において「最善の選択」を考えるうえでのチェックリスト 森田達也/佐藤晶子 380
3.意思決定能力―あり/なしから「サポートするもの」へ 樋山雅美/成本 迅 384
4.自律尊重から人間尊重へ―「尊重する」とはどのようなことか? 圓増 文 389
5.本人が「あらかじめ希望していたこと」をどう尊重するか
―「事前の意思」と「現在の選択」の間で日笠晴香 394
Case「倫理的課題の実践とは」
1.むせてしまいそうだけど食べたい
―嚥下障害の医学的評価と倫理 國枝顕二郎/藤島一郎 399
2.転倒しそうだけど自分でトイレに行きたい
―終末期における転倒の看護と倫理 高野純子 406
Column ②
緩和ケア病棟における転倒の頻度―2,000名のコホート研究 大谷弘行 411
3.看護ケアの提供の配分に関する公平性と倫理 柏谷優子 413
4.医学的な効果はないと思われる治療を
患者・家族が希望するなら行ってもよいか(行わないほうがよいか)
―「医学的無益性」の考え方と倫理 林 令奈 418
5.「苦しいから眠らせてほしい」にはすべて応じてもいいのか?
―精神的苦痛に対する鎮静と安楽死のグレーゾーン 森田達也 423
6.「いやがっている」と「希望していない」は違うかもしれない
―患者が治療を拒否する時 髙橋美賀子 430
連載
落としてはいけないKey Article (49)
スマホによる精神療法は乳がん患者の再発恐怖を軽減させるか
―緩和ケアにもあてはまる研究明智龍男/森田達也 434
FAST FACT (52)
うつの評価 田中輝明 441
えびでんす・あれんじ・な~しんぐ(EAN)―実践力を上げる工夫 (37)
スピリチュアルケア(2)アセスメントツールを使ってみよう 市原香織 442
仕事人の楽屋裏 (50)
岡島美朗 446
ホスピス緩和ケアの日々 (32)
おだいじに~ ! 内科外来で思うこと 相河明規 448
Topicアラカルト
アメリカのホスピス・ケア 植村健司 450
Book Selection 433
Information 388, 445
募集広告 445
次号予告 454