先を見通す背景読みスキル
森田達也 著
“見逃せない”の臨床論文が書かれたのには、しかるべき「わけ」があった!! 研究の背景を知って、先を読むための解釈力を鍛えるヒントがここにある。
第Ⅰ部では『緩和ケア』誌で絶好評の「落としてはいけないKey Article」から見逃せない27の論文を、第Ⅱ部では書きおろしで緩和ケアの歴史と著者自身の研究の歩みを収載。すでに発表されている論文から、いかに緩和ケアの未来を拓く“鍵”を探り出して日常の臨床に活かしていくか、そのスキルを紹介する。
緩和ケアの臨床研究は、個々の結果だけでなく、それぞれの論文を深く広い視野で検討を重ねる。そうすることで、将来の緩和ケア像を展望することができるところにこそ、価値がある。
医療者は、研究の背景をなぞることで、論文中で言及されていない側面の重要性を再発見する。それこそが論文を読む醍醐味であり、臨床のモチベーションへとつながっていくのである。著者のそうした姿勢は、読者がいま取り組んでいる臨床の「次の形」を開拓するうえで重要な鍵となるだろう。
CONTENTS
まえがき 共著者一覧
第Ⅰ部 丁寧に読んでウラを知る-緩和ケアの研究論文
第1章 痛みについての研究
1 「万能薬」のステロイドは痛みに効くか?
2 WHOラダーの2段階目はいらないのではないか?
3 経口オピオイドの投与開始時に制吐剤の予防投与は効果がない?
4 粘膜吸収性フェンタニルはタイトレーションをしなくてもよい?
5 難治性疼痛にケタミンは本当に効いているのか?
6 初回治療として神経障害性疼痛に特に有効なオピオイドはあるか?
第2章 呼吸器症状についての研究
1 ステロイドは呼吸困難に効くのか?
2 風を送ると呼吸困難は和らぐか?
3 今ある死前喘鳴に抗コリン薬は無効なのか?
4 抗コリン薬は死前喘鳴の「予防」には有効か?
第3章 消化器症状についての研究
1 ガイドラインに従って制吐剤を選択するのは意味がない?
2 消化管閉塞にオクトレオチドは効いているのか?
3 終末期に輸液をするとよいことがあるのか?
第4章 精神的苦痛・せん妄についての研究
1 終末期せん妄に抗精神病薬は本当は効いていない?
2 「スピリチュアルペイン」に標準化した精神療法は有効か?
3 激しい過活動型せん妄にベンゾジアゼピンは有効か?
第5章 研究方法論(メソトロジー)がよく分かる研究
1 臨床的に意味のある差って何?
─minimal?clinically?important?difference;MCID─
2 治療効果を測定するのにNRSの変化よりいい方法?
3 非劣性試験って何?
4 緩和ケアではプラセボ効果ノセボ効果がやけに大きい?
5 実臨床でどうしたらいいか分からないことは「心理実験」で。
6 ランダム化試験はできないけど効果を推定するための方法は?
7 ネットワークメタアナリシスは万能か?
8 「やめどき」研究とは何か?
9 基礎研究と臨床の困りごとはつながるか?
10 施策にもエビデンスは必要か?
11 AIと行動経済学は緩和ケアを変えるか?
第Ⅱ部 緩和ケアの研究─どこからきて、どこへ向かうのか?
1 〈日本の緩和ケア研究の歴史〉
日本の緩和ケア研究─来し方を知る
2 〈自分の研究を振り返る〉
緩和ケア研究に関するナラティブストーリー
3 〈今後の研究〉
今後必要とされる緩和ケアの研究とは?
初出一覧