[編集]宮下光令
緩和ケアの目的は,QOL(quality of life)の向上であり,痛みやその他の身体的問題,心理社会的問題,精神的問題、スピリチュアルな問題のアセスメントに基づく治療やケアが重要となる。しかし,これらはしばしば「目に見えない」ものである。
緩和ケアを科学として研究するためには,この「目に見えないもの」をいかに測定するかが重要で、個々の症状に基づき正確な診断や評価を行うことは,適切な治療やケアの大前提となる。痛みをはじめとした客観的な評価が困難な諸症状の正確なアセスメントをするために測定尺度が用いられ、臨床実践でも重要な役割をもつ。
・自分が知りたいことを測定できる日本語の尺度が存在するのか?
・尺度が存在したとして,どの尺度を使えばいいのか?
・個々の尺度を使うときの注意点は何か,許諾はどうすればいいのか?
本書は,これらの視点を踏まえつつ,緩和ケアの臨床や研究に役立つ評価尺度やツールを網羅的に集めた「評価尺度・ツールの事典」となっている。
CONTENTS
序文 宮下光令
Ⅰ 身体症状の評価とツール
1 全身状態 浜野 淳
2 症状などの包括的評価(1)─患者評価 小川朝生
3 症状などの包括的評価(2)─代理評価 宮下光令
4 症状などの包括的評価(3)─生活のしやすさの質問票 林ゑり子
5 痛 み 田上恵太
6 高齢者の痛み 水谷友紀・小川朝生
7 呼吸困難 角甲 純
8 倦怠感 三浦智史
9 便 秘 里見絵理子
10 泌尿器症状 三浦剛史
11 悪心・嘔吐および消化器症状 石木寛人
12 口腔の状態 大野友久
13 褥 瘡 青木和惠
14 栄養状態 天野晃滋
15 化学療法に伴う有害事象 山口拓洋
16 鎮 静 今井堅吾
Ⅱ 精神症状の評価とツール
1 気持ちのつらさ 藤澤大介・山本玲美子・田村法子
2 せん妄 内田 恵
3 睡 眠 尾﨑章子
Ⅲ 心理・社会・スピリチュアルケアの評価とツール
1 適応とコーピング 岩滿優美
2 心配・気がかり 神田清子
3 スピリチュアリティ 市原香織・近藤めぐみ・田村恵子
4 レジリエンス 清水陽一
5 コミュニケーション 白井由紀
6 ソーシャルサポート 吉田沙蘭
7 死生観 丹下智香子
Ⅳ QOL/ケアの質評価とツール
1 一般的なQOL 鈴鴨よしみ
2 がん特異的なQOL 山口拓洋・川口崇・宮路天平
3 緩和ケアのQOL 清水陽一
4 個別化されたQOL 大生定義
5 遺族によるQOLの代理評価 宮下光令
6 がん医療に対する安心感 五十嵐歩
7 患者による医療の質の評価 佐藤一樹
8 遺族による医療の質の評価 佐藤一樹
9 医療者による医療の質の評価 菅野雄介
10 高齢者施設ケアにおける緩和ケアの質の評価 廣岡佳代・深堀浩樹
11 認知症の緩和ケアの質の評価 五十嵐尚子
12 小児緩和ケア 名古屋祐子
Ⅴ 家族・介護者のケアの評価とツール
1 家族のQOL 川原美紀
2 家族機能 本田順子
3 介護経験・介護負担感 川原美紀
4 悲 嘆 青山真帆
5 死別後の対処(コーピング) 浅井真理
Ⅵ 医療者のケア態度・困難感・満足度の評価とツール
1 医療者の知識 新幡智子
2 医療者の実践・態度 中澤葉宇子
3 医療者の困難感・自信 中澤葉宇子
4 医療者のストレス 福森崇貴
5 予後予測 馬場美華
6 意思決定支援 濱吉美穂
Ⅶ 地域連携・在宅ケアの評価とツール
1 在宅ケア 山岸暁美
2 地域連携 藤田淳子
3 訪問看護 田口敦子
4 退院支援 永田智子
Ⅷ 患者・家族のための臨床ツール
1 患者・家族向けパンフレット 林ゑり子
2 退院支援・退院調整プログラム 山岸暁美
3 スピリチュアルケア 市原香織・田村恵子
4 緩和ケアのニードの評価 坂下明大
5 緩和ケアチームの評価 坂下明大
6 臨床倫理 清水哲郎
索引