脳卒中・脳外傷者のためのお助けガイド
長谷川幸子・長田 乾・長谷川幹 編集
本書は、理事の約3分の1を障害のある人が占める「日本脳損傷者ケアリング・コミュニティ学会」によって企画された。学会関係の医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、その他の職種、総勢40名の執筆による。脳損傷の基礎的な知識から本人・家族の体験談に至るまで絶妙に構成され、お助けガイドを目指した実際的な内容となっている。
医療関係者は、脳損傷の人が通常の経過をたどる中でのうつ状態に接する場面が多い。しかし、心身ともに改善に至った方も少なからずいる。本書には退院後、年単位で活動を展開し、元気になっていかれる姿にも触れられ、励みとなるであろう。
脳損傷を受症すると、援助を受けて不自由な生活の基盤づくりを必要とすることが少なからずある。ただ、さらにその人らしい楽しみ、役割などを主体的に実現することで生活が豊かになる。本書をきっかけに、脳損傷の人、家族、支援者が一体となり、新たに脳損傷になられる人の支援のあり方に一石が投じられることを願う。
目次
序文 長谷川幸子…iii
第Ⅰ部 脳損傷(脳卒中・脳外傷)―原因・病態・症状まで
1.脳損傷について 長田 乾
A 脳損傷とは …3
B 脳損傷の基礎知識―脳の構造と機能 …4
C 脳損傷の原因 …7
D 症 候…10
E 高次脳機能障害 …13
2.高次脳機能障害と認知症との違い 高橋幸男…18
第Ⅱ部 脳損傷者のリハビリテーション─医療の取り組みと社会復帰
1.発症から生活の再構築まで
A 発症から生活の再構築までのリハビリテーション 長谷川幹…23
B 急性期治療とリハビリテーション 宮脇 健…25
C 回復期リハビリテーション 宮脇 健…26
D 生活期リハビリテーション 藤田真樹…28
E 脳 損傷者を支援する職種 橋本茂樹(医師)/宮脇健(看護師)/中島鈴美(理学療法士)/藤田真樹(作業療法士)/白波瀬元道(言語聴覚士)/能智正博(公認心理師)/山下浩一郎(社会福祉士)/小原和久(薬剤師)/影山典子(管理栄養士)/中泉京子(ケアマネジャー)…32
F チーム医療 細田満和子…37
G 医療者が「コーチング」を学ぶわけ 長谷川幸子…40
H 脳損傷者の支援における「主体性」の視点 能智正博…43
2.利用可能な社会資源や制度と相談窓口
A フォーマルサービスとインフォーマルサービス 長田 乾…45
B 利用できる福祉サービス,福祉制度 佐藤雅一/山田貴一…47
C お金に関わること 佐藤雅一…50
D 障害者手帳 佐藤雅一…52
E 5カ年計画と脳卒中循環器病対策基本法―脳卒中相談窓口 橋本洋一郎…53
F 介護保険制度 山田貴一…58
G 職場復帰,能力開発雇用関連,就労支援 山本美江子…61
H 自動車運転 藤田真樹…63
第Ⅲ部 脳損傷者の活動と社会参加
1.文化・スポーツ活動と当事者・家族会の支援 長谷川幹/藤田真樹…69
2.活動の紹介
A ピアサポーターとは 長谷川幹…72
B 脳損傷者がモデルとして授業参加 長谷川幸子…75
C 海水浴,スキーなど 榊原正博…77
D 魚釣り 榊原正博…79
E 旅 榊原正博…81
F 片麻痺の料理 下沢寛美/川尻美佐緒…83
G スポーツ 手塚由美…84
H 失語症者のための朗読教室 石原由理…86
I 失語症者のための群読 渡辺 鋼…88
J 写真撮影 祝部英明…90
K フォトヴォイス―写真と語りによる障害体験作品展 細田満和子…92
L 菜園 関 建宏…94
3.当事者の会,家族の会による支援
A 日本脳卒中者友の会 石川順一…96
B 脳卒中フェスティバル 小林純也…99
C 日本失語症協議会 園田尚美…101
D 日本高次脳機能障害友の会 片岡保憲…103
E 東京高次脳機能障害協議会 今井雅子…105
F ハイリハキッズ 中村千穂…107
4.私の体験記
A ひとり娘のバージンロードを乗り越えて 飯田一昌/飯田郁代…109
B ひきこもりの生活を救ってくれた「仲間」 齋藤 聡/佐藤ひとみ…112
C 発症して一番つらかったこと,今一番楽しいこと 岩﨑拓海/岩﨑直子…115
D 情報による選択と人的つながり 後藤 博…118
E 夫婦二人三脚で希望の架け橋 磯貝政博/磯貝香苗…121
F NPOを立ち上げるなど充実した人生 水口 迅…124
G 泳げたことが自信につながる 三嶋完治…126
H 妊娠6カ月で脳出血,その後の子育て 髙岡ゆきえ…128
I 小児高次脳機能障害を乗り越えて 澁谷綾子/家族…130
J 見えない不自由を,ないことにしない 鈴木大介…134
K 目標に向かってコツコツ生活の勧め 馮 琦/馮 悦子…136
あとがき 長谷川幹…139
執筆者一覧 …140