認知症者と家族支援のための作業療法技術
◆編集 谷川良博/菅沼一平
本書は、家族支援をテーマに、作業療法士をはじめ多職種による直接援助、介護経験者からの援助に関する提言、栄養の視点、終末期の支援、専門職養成の視点などを盛り込んでいる。読者が家族支援を多角的に学習できると同時に、その課題と解決のヒントを得られるように構成されている。
当事者支援と同様に家族支援が重要であるものの、現実の認知症ケアでは当事者より家族の意見が優先されたり、主介護者がいく名も現れて要望が複数寄せられたりしている。同時に、今後の日本は高齢者の独居世帯、高齢夫婦世帯が増え、遠方の家族を遠隔支援する状況にも備えなくてはならない。
新しい家族支援像を構築する時代の到来が、間近迫っている。このような状況を踏まえて、本書は新たな視点でサービスを展開している事例も紹介している。
認知症者と家族支援のための作業療法技術
序文 谷川良博 003
第1章 認知症の人の家族支援とは
1.家族介護者を取り巻く環境と家族視点の支援 菅沼一平 010
2.令和時代における家族介護者を取り巻く状況 中西亜紀 016
3.組織で取り組む家族支援 菊本理恵 025
第2章 作業療法における認知症の人と家族支援の考え方
1.作業療法士が実行できる認知症疾患別の家族支援の考え方 堀田 牧 034
2.家族内の心の支援および地域との連携 江口喜久雄 041
3.行政の視点からの家族支援 河合晶子 046
4.訪問活動における家族支援 渡部祐介 052
5.認知症カフェにおける家族支援 上城憲司 058
6.養成校での家族支援教育 白井はる奈 064
第3章 認知症の人と家族支援における作業療法技術
1.教材を用いた家族支援
1) 面接場面と情報提供 谷川良博/都甲幹太 070
2) 分析場面 角田孝行 076
3) アセスメント場面 都甲幹太 082
2.マネジメントの視点と実際
─課題の全体像がつかめればマネジメントは半ば成功したようなもの 石井利幸 087
第4章 多職種連携のための見方
1.家族の視点
1) 家族の気持ちを受け止めるということ 野村尚子 098
2) 認知症の介護者からみた支援の仕方 岩本和宏 100
2.介護者支援の中でのコミュニケーションがもつ力
─認知症の介護相談面接の介護者の変化から考える 中澤純一 102
3.看護領域の家族支援の視点 兼田絵美 110
4.介護領域の家族支援の視点─重なり合わせた思いの先に 角龍 慶 116
5.ケアマネジャーの家族支援の視点
─認知症の人の暮らしを支える家族支援の視点と連携 片山優子 122
第5章 作業療法士の家族支援の実際
1.病院における支援
─認知症本人と家族の認識の差違がBPSDや生活行為に関連することを再確認できた事例 岩切良太 128
2.介護老人保健施設における支援 隅野裕之 133
3.通所施設における支援 大庭誉志江 137
4.地域での家族支援事例
1) 惣菜店における介護支援の実際 三村和礼 143
2) 家族支援の実際とこれからの家族支援のありかた 野崎 健 148
5.タイプ別の家族支援─FTDの事例から 堀田 牧 153
6.終末期の事例─作業でつなぐ家族支援 坂口聡子 158
7.デイサービスにおいて学生と取り組んだ事例
─若年性認知症のA氏と家族が元気に生活するために 福満まり子 162
次号予告 168