緩和ケアのための医薬品集
『緩和ケア』誌では,これまで症状や病態の面から,モルヒネやオピオイド製剤の使い方をはじめ,薬物療法のポイントを取り上げてきた.近年,緩和ケアに関係した薬剤が多く登場するようになり,また,緩和ケアでは薬剤が健康保険の適応外で使われる場合も多く,緩和ケアにおける薬物療法の理解を助けるために,これまでとは違った視点からの特集を組む必要性が出てきている.
そこで,おもに緩和ケアで使用される薬剤を,その種類別に編集した特集を組むこととした.すなわち,薬剤の視点から緩和ケアにおける薬物療法のポイントをまとめた.これまでにない視点から企画されており,不十分な点もあるが,穏和ケアの臨床に十分役立つ内容となっている.
薬剤の分類の大きな項目としては,鎮痛薬,中枢神経系薬,消化器系薬,循環器系薬,呼吸器系薬,その他緩和ケアに関連する薬を取り上げた.おのおのの薬剤に関しては,規格・剤形,効能効果,用法・用量,禁忌,副作用など基礎的知識を記載したうえで,薬物動態(血中動態,作用機序)など緩和ケアに必要な薬理学としての知識を盛り込んだ.また,解説の部分では,適応の特徴,使用経験・使い方のポイント,副作用対策,臨床上の注意点など,単なる「医薬品集」としてではなく,臨床的な処方および処方の考え方も記載するようにした.そして,EBM の考え方を基本に参考となる文献も掲載した.
本増刊号の執筆にあたっては,この方面の第一線で活躍する医師と薬剤師が協力して,医学と薬理学の両方の観点から解説をお願いした.治験中であるが,近い将来市販されることが予想される薬剤も「トピックス」として取り上げた.また,「MEMO」や略語表,先発・後発医薬品一覧など,臨床に有用な知識や付録を掲載した.
本増刊号が,緩和ケアの臨床に従事する医師,薬剤師,看護師の日々の実践に,少しでもお役に立てば幸いである.
目次
Ⅰ.鎮痛薬―非オピオイド・オピオイド
【解説】非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)の基礎知識と使い方
[非オピオイド]
・ジクロフェナク,フルルビプロフェンアキセチル,イブプロフェン,ナプロキセン,インドメタシンファルネシル,インドメタシン,ロキソプロフェンナトリウム
・ナブメトン
・メロキシカム,エトドラク
[鎮痛解熱薬]
・アセトアミノフェン
【解説】 オピオイド・鎮痛補助薬の基礎知識と使い方
[弱オピオイド]
・リン酸コデイン,リン酸ジヒドロコデイン
・塩酸トラマドール
[強オピオイド]
・塩酸モルヒネ,硫酸モルヒネ
・ブプレノルフィン
・フェンタニル
・塩酸オキシコドン,塩酸オキシコドン注
【トピックス】 オキシコドン塩酸塩散
Ⅱ.鎮痛薬―鎮痛補助薬
[NMDA 受容体拮抗薬]
・塩酸ケタミン,酒石酸イフェンプロジル,マンタジン,硫酸マグネシウム,臭化水素酸デキストロメトルファン
【MEMO】 拮抗性鎮痛薬―ペンタゾシン
[抗痙攣薬]
・クロナゼパム,カルバマゼピン,バルプロ酸ナトリウム
[抗うつ薬]
・アミトリプチリン,アモキサピン
[その他]
・バクロフェン
【トピックス】
・プレガバリン
・ガバペンチン
Ⅲ.鎮痛の関連薬
[オピオイド拮抗薬]
・塩酸ナロキソン
【MEMO】 末梢性オピオイド鎮痛薬―ロペラミド(ロペミン)
[ビスフォスフォネート製剤]
・注射用パミドロン酸二ナトリウム,ゾレドロン酸水和物注射液
Ⅳ.中枢神経系
【解説】 抗不安薬・睡眠薬の基礎知識と使い方
[ベンゾジアゼピン受容体作動性抗不安薬]
・ジアゼパム,ロラゼパム,ブロマゼパム,アルプラゾラム,エチゾラム
[ベンゾジアゼピン受容体作動性睡眠薬]
・フルニトラゼパム,ブロチゾラム,塩酸リルマザホン,トリアゾラム,酒石酸ゾルピデム,ゾピクロン
【解説】 鎮静薬の基礎知識と使い方
[鎮静薬]
・ミダゾラム
[抗てんかん薬]
・フェノバルビタール
[全身麻酔薬]
・プロポフォール
【解説】 抗精神病薬の基礎知識と使い方
[定型抗精神病薬]
・クロルプロマジン,ハロペリドール,レボメプロマジン,チオリダジン
[非定型抗精神病薬]
・オランザピン,リスペリドン,フマル酸クエチアピン,塩酸ペロスピロン水和物
【解説】 抗うつ薬の基礎知識と使い方
[抗うつ薬]
・アミトリプチリン,ノルトリプチリン,クロミプラミン,アモキサピン,マプロチリン,ミアンセリン,トラゾドン,フルボキサミン,パロキセチン,ミルナシプラン
[精神賦活薬]
・塩酸メチルフェニデート
Ⅴ.消化器系
【解説】 胃酸分泌抑制薬の基礎知識と使い方
[プロトンポンプ阻害薬]
・オメプラゾール,ランソプラゾール
[H2 受容体拮抗薬]
・シメチジン,ファモチジン,ラニチジン
[抗ムスカリン薬]
・臭化ブチルスコポラミン,臭化水素酸スコポラミン
【解説】 緩下剤の基礎知識と使い方
[大腸刺激性下剤]
・センノシド,ピコスルファートナトリウム
[緩下剤]
・ビサコジル,ラクツロース製剤,炭酸水素ナトリウム・無水リン酸二水素ナトリウム
・クエン酸マグネシウム,グリセリン,酸化マグネシウム
[消化管運動促進薬]
・クエン酸モサプリド
・大建中湯
[吃逆防止薬]
・柿 蔕
[止痢薬]
・塩酸ロペラミド,アヘンチンキ
【解説】 制吐薬の基礎知識と使い方
[ドパミン作動薬]
・メトクロプラミド,ドンペリドン,プロクロルペラジン,ペルフェナジン
[ヒスタミン拮抗薬]
・ジフェンヒドラミン,マレイン酸クロルフェニラミン
[セロトニン拮抗薬]
・グラニセトロン,オンダンセトロン
[消化液分泌抑制薬]
・酢酸オクトレオチド
Ⅵ.循環器系
[抗不整脈薬]
・フレカイニド,リドカイン,メキシレチン
[降圧薬]
・クロニジン
[利尿薬]
・フロセミド,スピロノラクトン
Ⅶ.呼吸器系
【解説】呼吸困難に対するオピオイドの基礎知識と使い方
[オピオイド]
・モルヒネ
【解説】 鎮咳薬の基礎知識と使い方
[鎮咳薬]
・リン酸コデイン,デキストロメトルファン
【解説】 去痰薬,気管支拡張薬の基礎知識と使い方
[粘膜溶解薬]
・L-カルボシステイン
[粘液分泌促進薬]
・アンブロキソール,塩酸ブロムヘキシン
[吸入 β 刺激薬(気管支拡張薬)]
・硫酸サルブタモール
[吸入抗コリン薬(気管支拡張薬)]
・臭化オキシトロピウム
[抗コリン薬(気道分泌抑制薬)]
・臭化ブチルスコポラミン,臭化水素酸スコポラミン
【MEMO】
・死前喘鳴(death rattle)
・マーカイン吸入療法
・フロセミド吸入療法
Ⅷ.泌尿器系
【解説】 泌尿器系薬剤の基礎知識と使い方
[α1 受容体遮断作用薬]
・塩酸タムスロシン,ナフトピジル,ウラピジル
[コリン作動薬]
・ジスチグミン,ベタネコール
[抗コリン薬および交感神経刺激薬]
・プロピベリン,オキシブチニン,クレンブテロール
【MEMO】
・排尿痛のための薬剤
・クランベリージュース
Ⅸ.耳鼻咽喉系
[人工唾液]
・リン酸一水素カリウム・無機塩類配合剤
[口腔乾燥症状改善薬]
・ピロカルピン
【MEMO】 口腔ケアの知恵
Ⅹ.感染症
【解説】 感染症治療の基礎知識と薬の使い方
[ペニシリン系]
・アンピシリン,アンピシリン/スルバクタム,ピペラシリン
[セフェム系]
・セファゾリン,セフタジジム,スルバクタム/セフォペラゾン,セフェピム
[その他の殺菌性抗生物質]
・バンコマイシン,メトロニダゾール,フルコナゾール,アシクロビル
ⅩⅠ.ステロイド
【解説】 コルチコステロイドの基礎知識と使い方
[コルチコステロイド]
・ベタメタゾン,プレドニゾロン,デキサメタゾン
[プロゲステロン製剤]
・酢酸メドロキシプロゲステロン
ⅩⅡ.皮膚
【解説】 かゆみに対する薬の基礎知識と使い方
[抗ヒスタミン薬]
・アゼラスチン,他
[その他の薬剤]
・アザセトロン,他
【解説】 褥瘡潰瘍に対する薬の基礎知識と使い方
[褥瘡潰瘍に対する薬剤]
・ポリウレタンフィルムドレッシング,ハイドロコロイドドレッシング材
【MEMO】
・皮膚浸潤,皮膚転移した腫瘍による出血,悪臭の治療
・皮膚掻痒に対する軟膏類
ⅩⅢ.持続皮下注入法
【解説】 持続皮下注入法の実際とその薬剤
付録
(1)許認可薬の適応外使用について
(2)簡易懸濁法
(3)海外へのオピオイドの携帯
(4)先発・後発薬品一覧
(5)緩和ケアで使われる略語リスト
(6)薬名索引