ボランティアで変わる緩和ケア
●特集にあたって
旧誌名『ターミナルケア』で「ホスピスボランティア導入のために」(第9 巻3 号)の特集が組まれてから9 年が経過した.その特集では,ホスピスボランティアに焦点を当て,教育のあり方や活動の実際が紹介された。
その後,緩和ケアの裾野が広がり,地域ケアへも進展がみられ,注目が集まるようになった。これまで緩和ケア病棟など施設内ケアでは,ボランティアはチームの一員として,確実にケアの質の向上に寄与してきた。緩和ケアのネットワークが広がりつつある現今において,ボランティアの活動はどのようになされているのか,その経緯や活動の実際,位置づけ,導入前後の変化,教育,課題や展望をつぶさに紹介する時期となっており,本特集を企画した。
現在,がん対策基本法など制度面で緩和ケアへの対応がなされるようになってきているとはいえ,依然,施設においても在宅においてもケアの体制が十分とはいえない。制度や経済面での地域社会がサポートするためには,ボランティアの導入を積極的に考える必要がある。また,緩和ケアが医療者(専門家)のみによって行われると,閉鎖的になったり,独善的になる可能性もある。ケアの中に第3 者的な視点を取り入れ,ケアの透明性や質を確保するためにも,また暮らしを支える視点での家族ケアを含めて,ボランティアの存在は欠くべからざるものと考える。
本特集では緩和ケア病棟(ホスピス),一般病院のボランティア活動の意義と取り組みを述べ,訪問ボランティアや市民ネットワークによるケアの実際について紹介する。医療の受けての側が日常生活により近く療養できるように,また個性ある人としての存在を保証されるためにボランティアの働きがますます盛んになっていくことを願っている。
〔特集〕ボランティアで変わる緩和ケア
●特集にあたって
なぜ,緩和ケアにボランティアは必要なのか
ホスピスにおけるボランティアとボランティアコーディネーターの役割
一般病院におけるボランティアの導入と活動の実際
在宅ホスピスボランティアの活動
―在宅ホスピスケアチーム・パリアンの取り組み
市民ネットワークによるボランティア活動
―聞き書きボランティア活動を中心に
時をつむぐボランティア
訪問活動もチームの輪の中で活かされる
聞き書き100 人を目標に
ホスピスケアの風景の中に在ること
◆ショートレビュー
ホスピス・緩和ケアにおけるボランティアの教育・役割
◆事例に学ぶシリーズ・2008
―こんなときどうする? 野の花の難渋分類への対応〈11〉 急変
●らしんばん
仏教の教えに学ぶ―“患者中心”の医療は“自己中心”の医療?
●現場で使える臨床心理の見方〈5〉
見守りの器―ウィニコットに学ぶ関わりの意味
●いのちの歌
マナー違反
●在宅ホスピス物語〈15〉
「患者は,死ぬまで生きている」
●R E P O R T
第33 回日本緩和医療学会
●緩和ケア―日常業務の知恵〈13〉
計画実施と入棟後の管理(3)