未来をきり拓く在宅緩和ケア
超高齢化社会の到来やがん患者の増加にしたがい,在宅医療での緩和ケアが注目されている.しかし,介護保険制度など「在宅ケア」の基盤整備が進んでいるのに比較して,国民が望めば人生の最期まで安心して在宅で療養生活できるような在宅医療の普及は,おぼつかない現状である.自宅で最期を迎えることができる日本人は12 %にすぎず,施設などをあわせても15 %である.がんの方では,自宅で最期を迎える確率は7 %である.
予後不良の患者さんに対してのインフォームド・コンセントは普及しているにもかかわらず,自分の運命を決定するプロセスに困難をきたしている患者さんや,がん難民の問題も,広く存在している.この意味で,在宅医療に従事する医師を増やす必要性のみならず,病院医師が患者の在宅生活に関心を持って活動することも求められている.
確かに,がん患者の自宅死亡率は低く,がん在宅緩和ケアが大きな問題であることは間違いない.しかし,がんに関しては,緩和ケアの手法についてのスタンダードが確立し,在宅医療の分野でも政策的に優遇されているのに比して,非がん疾患の緩和ケアは技術的にも確立しておらず,政策的にも遅れている.このような中で,非がん疾患の在宅緩和ケアについても取り上げる必要性を感じている.
在宅緩和ケアは,家族に恵まれた暖かい環境の中で行われることもある.しかし,人口構成の高齢化と核家族化の中で,介護状況はますます厳しさを増していることも事実である.家族や経済条件・空間条件に恵まれない患者ほど,本来救済を求めている方でもある.その意味で,介護体制を含めてサポートを行う必要性からも,居住系サービスとの連携については明確に記載したいと考えた.
そのほか,緩和ケアは高齢者のみならず,若年や小児の問題でもある.わが国ではほとんど普及していない小児在宅緩和ケアについても記載をしたいと考えた.
〔特集〕未来をきり拓く在宅緩和ケア
特集にあたって
在宅を支える緩和ケアの現状と展望
本人と家族の精神的な支援
一般診療所で行う在宅緩和ケア
診療所と訪問看護ステーションとの連携
緩和ケア病棟における地域との連携
在宅緩和ケアにおけるケアマネジャーの役割
介護保険施設と連携をとる在宅緩和ケア
有床診療所と介護施設との連携における看取り
訪問看護ステーションにおける在宅緩和ケア
グループホームでの在宅緩和ケア
家族に恵まれない方の在宅緩和ケア
認知症の在宅緩和ケア
小児の在宅緩和ケア
らしんばん
優しさ・技術(マニュアル)は必要かつ十分条件であるのか?
―人権運動としてのホスピス
緩和ケア―日常業務の知恵19
症状緩和(5):疼痛③
コミュニケーション広場
市民を対象に「城南緩和ケアのつどい」を開催
いのちの歌
はじめての韓国
R E P O R T
第14 回日本緩和医療学会学術大会
在宅ホスピス物語21
うちの息子は世界一!
カンファレンスから学ぶ緩和ケア4
緩和ケアチームにおけるカンファレンスの実際
―佐久総合病院の場合
海外事情
在宅ホスピスケアの豊かなサービス体制
オピオイドローテーション☆私はこうしている
選択肢が増える中でのオピオイドローテーション
視 点
緩和ケア診療所を中心とした,地域連携ネットワークシステム
の構築(3)― PCC を中心とした地域ネットワークシステム
症例報告
「そっとしておく」こと―患者の自己エンパワーメント