緩和ケアにおける内科的治療の適応と限界―感染症を中心に
緩和ケアにおける症状マネジメントとして,疼痛を中心とした苦痛を伴う症状緩和が取り上げられることが多いが,実際の臨床においては症状緩和と同等の比重で内科的疾患の治療も扱わなければならない.たとえば,緩和ケア病棟の入院患者であっても感染症や糖尿病,高血圧など内科的な問題が生じれば,鑑別診断を思い描き,原因が可逆的ものか不可逆的なものかを見極めなければならない.がんが不可逆的な病態であったとしても,内科的な合併症は可逆的なことも珍しくない.しかし,可逆的なものであっても,通常の内科治療により患者のQOL 向上につながるとは限らないので,個々の状況に応じて実施する検査や治療を選択しなければならない.
進行がんが基礎疾患としてある場合,実際は複数の病態が併存していることは珍しくない.たとえば,びまん性に肺転移のある患者が呼吸不全の悪化で入院した場合,うっ血性心不全を合併し肺水腫をきたしているのであれば,水分管理などで元の呼吸状態に戻り,退院する見込みが出てくるかもしれない.その場合には,「原病の進行なのか」「うっ血性心不全なのか」を判別する内科の基本的な力量が必要になる.
今回の特集では,おもに緩和ケア病棟で日常的に遭遇する内科的な問題として,特に感染症を取り上げた.がん患者が感染症を併発する頻度は高いが,「診断のためにどこまで検査を行うか」「実際の治療を行うかどうか」「治療する場合は多剤の抗生物質を併用するか」「投与経路の選択はどうするか」など感染症の患者を目の前にして日常的に悩んでいる医療者は多いと推察する.
今回の特集が,緩和ケアにおける内科的治療についての知識を整理する機会になれば幸いである.
〔特集〕緩和ケアにおける内科的治療の適応と限界―感染症を中心に
特集にあたって
進行がん患者における感染症治療の適応と限界
進行がん患者の肺炎―どこまで調べて,どこまで治療するか
進行がん患者の腎・尿路感染症に対する治療
進行がん患者の重症感染症に対する治療
HIV/エイズに合併する感染症の治療
進行がん患者の内科的治療―私はこうしています
当院における進行がん患者の血糖管理
進行がん患者の血糖管理とその厳密性
緩和病棟におけるワーファリン治療戦略
緩和ケアにおける抗凝固療法の考え方
がん患者の倦怠感に対するステロイド治療
がん患者のおもな症状に対するステロイドの効果
ショートレビュー
ホスピス・緩和ケア病棟における感染症治療による症状緩和
らしんばん
医療連携は「がん難民」を救う
いのちの歌
出番が多くなりました
R E P O R T
第17 回日本ホスピス・在宅ケア研究会in 高知
第5 回仏教看護・ビハーラ学会
在宅ホスピス物語22
死と向き合うこと
カンファレンスから学ぶ緩和ケア5
緩和ケアチームにおけるカンファレンスの実際
―横浜市立大学附属市民総合医療センターの場合
オピオイドローテーション☆私はこうしている2
長期オピオイド内服時のオピオイドローテーション
緩和ケア―日常業務の知恵20
症状緩和(6):疼痛④
原 著
在宅緩和ケアにおけるプライマリケアチームと緩和ケア専門
チームの連携を促進する因子の検討―緩和ケア専門チーム
に対する調査から