そこが知りたい 緩和ケアにおける服薬指導
『緩和ケア』誌では,これまで緩和ケアに用いられる薬物療法のポイントや臨床上の注意点などの特集記事は掲載されてきている.本企画は増刊号では初めての題材として「緩和ケアにおける服薬指導」にフォーカスを当て,医師,看護師,薬剤師のそれぞれのエキスパートに広角的に捉え,接写的にご執筆いただいた.
服薬指導を単に薬物療法の説明と捉えるのではなく,第Ⅰ部は緩和ケアにおいて服薬指導に何が求められるかを論じた.第Ⅱ部はどのような場で,どのように服薬指導が行われているか,外来,緩和ケアチーム,緩和ケア病棟,ホスピスなどの医師,看護師,薬剤師の立場から実践的に述べていただいた.第Ⅲ部は,どのような対象の方に,どのような服薬指導が行われているかを在宅緩和ケアの現場と,小児緩和ケアにおける服薬指導の解説をお願いした.第Ⅳ部は,ケアのあり方,患者・家族への配慮の考え方と実際について看護の視点,服薬指導におけるコミュニケーション・スキル,アメニティ,患者教育を取り上げた.第Ⅴ部は服薬指導に活かせる薬の知識と現場での対応について,痛みのパターンに基づくがん性疼痛治療,薬物療法の戦略・処方意図を解説いただき,オピオイド,非オピオイド鎮痛薬,鎮痛補助薬の服薬指導の知識をまとめ,さらに副作用の早期発見のためのフィジカルアセスメント,服薬指導の新しい知識,最新情報にも触れていただいた.第Ⅵ部は服薬指導のさまざまな実践として,がんの痛みの教室,電話モニタリング,服薬指導のための院内ツールを紹介していただいた.
本書のねらいは,日常行われている服薬指導をクローズアップし,その中に内在するさまざまな事柄を取り出しては可視化して,読者が今後の服薬指導あるいは患者・家族とのコミュニケーションに有用なツールとなることである.
まだまだ不十分な部分も多々あるが,緩和ケアに特化した服薬指導の手引書としてご利用いただければ幸いである.本書を企画した 1 人として,紙面をお借りして執筆を担当いただいた医師,看護師,薬剤師諸氏の労に敬意を表したい.
な背景から,緩和ケアの基本的・専門的な教育,職種による特徴のある教育など,緩和ケア教育の現状を把握するとともに,読者に有用な教育方法についても言及した.
また,教育は小中学校の生徒から,成人教育まで幅広く,さらにいえば,生きていくことそのものが,教育の連続である.そして,教育は一方向性に伝えるのではなく,教育する側も「共に学び,教えていく」中で伝わっていく営みである.特集の冒頭はそんな思いも込めて,さまざまな立場から述べていただいた.とはいえ,読者のニーズにも合った,一般病棟,緩和ケア病棟,緩和ケアチームで明日からでも役に立つ教育のノウハウも満載した.それとともに,さまざまな立場での成功体験,秘伝なども紹介した.
読者が自身の人生や教育を見直すきっかけとなり,また,患者さん・ご家族が求める緩和ケアを提供するための増刊号となれば幸いである.
目次
第Ⅰ部 緩和ケアにおいて服薬指導に何が求められるか
1.患者のオピオイドに対する懸念
2.中毒・依存などの言葉の意味するもの
3.今,服薬指導に求められているもの
第Ⅱ部 どのような場で,どのような服薬指導が行われているか
1.緩和ケアチームにおける服薬指導
―大阪大学医学部附属病院緩和ケアチームの場合
2.緩和ケア外来における服薬指導
―四国がんセンター緩和医療科の場合
3.緩和ケア病棟における服薬指導
―神奈川県立がんセンター緩和ケア内科の場合
4.ホスピスにおける服薬指導
―聖路加国際病院緩和ケア科の場合
5.在宅緩和ケアにおける服薬指導
―大阪北ホームケアクリニックの場合
6.在宅患者の服薬支援に必要な意識
第Ⅲ部 どのような対象の方に,どのような服薬指導が行われているか
1.在宅緩和ケアの現場における服薬管理の実際
2.小児緩和ケアにおける服薬指導
第Ⅳ部 ケアのあり方,患者・家族への配慮の考え方と実際
1.服薬指導における看護の視点
2.服薬指導におけるコミュニケーション・スキル
3.服薬指導におけるアメニティ
4.服薬指導における患者教育
第Ⅴ部 服薬指導に活かせる薬の知識と現場での対応
1.痛みのパターンに基づくがん疼痛治療
―持続痛と突出痛に分けて治療を考える
2.治療法決定までのアプローチと薬物療法の戦略・処方の意図
3.オピオイドの服薬指導
4.非オピオイド鎮痛薬の服薬指導
5.鎮痛補助薬の服薬指導
6.副作用の早期発見のためのフィジカルアセスメント
第Ⅴ部 服薬指導に活かせる薬の知識と現場での対応
1.患者・家族のためのがんの痛みの教室
2.緩和ケアチーム看護師による電話モニタリング
3.服薬指導のための院内ツール
a .医療従事者のための緩和ケアマニュアル
b.『痛みの治療サポートブック』