認知症の緩和ケア―積極的に関わるための基本と実践
高齢化が急速に進んでいるわが国の緩和ケアを考える時,認知症の問題は避けて通れない.がん診療連携拠点病院の退院支援部門に寄せられる相談でも,認知症に関連する治療や療養場所の選択に関するものが多いという報告がある.
認知症のある高齢患者は一般に,患者自身の意思決定や治療参画が困難だと考えられ,積極的治療より緩和ケアを優先する場合も多い.その結果,認知症グループホームやケアハウスなどの介護保険施設や在宅には,緩和ケアが必要な認知症患者が増加する傾向となり,病院では退院支援に,在宅や施設では緩和ケアの継続に大きな課題を抱えることになった.
ところが,緩和ケアを専門とする医療従事者は,認知症患者に接する機会が少なく,認知症特有の症状マネジメントや家族のケアについての経験が少ない.一方,高齢者のケアを主として行う在宅や介護保険施設では,緩和ケアの専門家が少ない.互いの分野で,それぞれの知識・人材を必要としていながら,交流そのものが少ないのが現状である.
そこで,今回の特集では認知症患者の緩和ケアをとりあげることにした.緩和ケアを担う医療従事者が認知症の基本を理解することを目的とし,なかでも認知症患者のケアで苦慮する苦痛の評価,栄養管理,予後予測など,実践で直面する事柄に焦点を当てることにした.また,かつては問題行動と呼ばれていた認知症の周辺症状を,スピリチュアルペインとして捉えるケアや,療養の場の選択についても触れていただい.
本特集が,緩和ケアと認知症ケアという2 つの領域の優れた実践の融合の場となり,緩和ケア領域において,苦痛を持つ認知症患者に対する積極的な支援につながれば幸いである.
〔特集〕認知症の緩和ケア―積極的に関わるための基本と実践
特集にあたって
認知症の緩和ケアとは
認知症の緩和ケアに必要な基本知識
認知症をきたす疾患と末期
進行期認知症患者の苦痛について
高齢者の終末期の栄養ケア
コラム 「認知症の予後と予後予測」「認知症の苦痛の評価」
スピリチュアルペインとしてのBPSD とそのケア
急性期医療現場における認知症患者の苦痛とそのケア
認知症患者の暮らす場の調整
スウェーデン・エスロブ市の認知症ケアチームにみる
“自我を支えるケア”
ショートレビュー
認知症の緩和ケア
らしんばん
やがて還暦
経験したことを伝えていこう 研究論文の書き方3
「対象・方法」を書く
オピオイドローテーション☆私はこうしている8
全身投与からくも膜下投与へのオピオイドローテーション
最期のことば集6
死は門
いのちの歌
思い立ったら吉日
R E P O R T
第18 回日本ホスピス・在宅ケア研究会
第6 回仏教看護ビハーラ学会
第1 回日本小児在宅医療・緩和ケア研究会
第4 回対人援助・スピリチュアルケア研究会
緩和ケア―日常業務の知恵26
症状緩和(12):嘔気・嘔吐②
KATSUDO 津々浦々5
地域のがんの在宅死率は上げられる―自宅での「死」を
受け入れ,逝きまた看取る人たちと共にある幸せ
〔投 稿〕
原 著
がん在宅緩和医療の課題と解決策に関する
診療所医師を対象とした訪問調査
調査報告
泌尿器がんにおける事前要望書,リビング・ウイルの検討