ことばは難しい―緩和ケアに関するさまざまな用語とその概念
人が考える時にはことばで考える.したがって,ことばと事象の認識や事柄の概念は,切っても切れ
ない関係にある.緩和ケアの領域ではこれまで,似通った概念をもつさまざまなことばが使われている.
そのためにことばに対する理解の違いや,混乱が目立つようになってきている.
この領域では,古くから「ターミナルケア」ということばが使われてきた.その後,ホスピスがわが
国に紹介されてからは,「ホスピスケア」ということばが使われ始め,1990 年代以降に「緩和ケア」と
いうことばが市民権を得た.「緩和医療」ということばも,2000 年前後から使われるようになってきた.
これらのことばは,使用する人,また文脈によって,さまざまに使い分けられている.また,日本語と
しては定着していると言いがたいが,「サポーティブ・ケア」(supportive care),「エンド・オブ・ラ
イフ・ケア」(end-of-life care)ということばもカタカナ語として文献でしばしばみられるようにな
ってきた.
ことばの問題を考える時は,まず,時間軸に沿って,どのような経緯でそのことばが生まれ,使われ
るようになったのかを考えてみることが必要である.次に,そのことばがどのような文脈で現在使われ
ているか,そのことを考えてみる必要がある.歴史が螺旋を描いて進むように,ことばも時々刻々と変
化していく.わが国の緩和ケアは歴史的にみて,大きな発展と変化の時期を迎えている.この時期にこ
そ緩和ケアに関するさまざまな概念を「ことば」の面から整理する必要がある.本特集では,ホスピス
や緩和ケアに長年携わってきた医師,看護師の方々にご執筆いただいた.改めてこの領域の「ことば」
について考えてみたい.
〔特集〕ことばは難しい―緩和ケアに関するさまざまな用語とその概念
特集にあたって
緩和ケアの用語をめぐる国際的な動き
ホスピスケアと緩和ケア―歴史からみた違いと共通点
緩和医療と緩和ケア―理論と実践の統合を目指して
緩和ケアに関わることばと看護―スピリチュアリティをめぐって
なぜ「緩和医療学会」としたか―学会立ち上げのこころ
緩和ケアのことばエトセトラ
緩和ケアでのことばをめぐるすれ違い―誤解された「家族ケア」
「緩和ケア」はなぜ誤解されるのか
「緩和ケア」という言葉と概念を整理してみる
ショートレビュー
緩和ケアをめぐることばの混乱
らしんばん
わたしを動かすちから
緩和ケア―日常業務の知恵30
家族への病状説明(2)
緩和ケアチームはその時,どう動いたか?3
患者家族の希望するケアの調整に難渋した1 例
「痛くて死にたい」と泣く患者の本当のつらさとは?
医療コミュニケーションの“コツ”4
食事が美味しくない
いのちの歌
前向きに
R E P O R T
第127 回ホスピスケア研究会
第11 回十和田緩和ケアセミナー
海外事情
がん患者や家族らへのコミュニティにおけるサポート
―サウスオーストラリア州にて
在宅ホスピス物語3
在宅ホスピスの広がり③―こどもホスピスへの小さなたね
マ ン ガ
わが家のナースコール
緩和ケア☆ちょっとしたコツ
在宅で息苦しさに対応するコツ
最期のことば集10
悲嘆の理解
症例報告
化学療法を契機に全身痛をきたした症例への治療およびケアに関する考察
―線維筋痛症としての診療・日常生活指導を行った肺がん症例
調査報告
在宅緩和ケアに関する望ましいリソースデータベースとは何か?
―多地域多職種を対象とした質的研究
架 け 橋
緩和ケア×哲学1
コミュニケーション広場
がん看護における緩和ケアの発展を担う鍵
―JSCN-SIG ホスピスケアにおける実践・教育・研究活動の広がり