患者さんの笑顔が見たい!
患者さんの疼痛を緩和する技術は日々進歩し,医療スタッフは知識を身につけて臨床にあたっている。身体的な痛みを和らげることと同時に,「患者さんの残された時間の中で“嬉しさ”を感じて過ごしてもらいたい」というのも,われわれ医療スタッフの願いである。その表れの1 つとして「笑顔」がある。
笑顔にはさまざまな要素がある。笑いの笑顔,喜びの笑顔,感謝の笑顔,愛情表現の笑顔…。今回の特集では,そのような“患者さんの笑顔を引き出す”ことに焦点を当て,各執筆者の方に現場で役立つコツを紹介していただいた。前半部分では,実際の現場で行っているそれぞれの工夫を医療スタッフが紹介した。特に,今まで言語化されてこなかった独自の工夫を,ピックアップして述べた。具体的には,総論として柏木哲夫氏が自身の豊富な経験から事例を紹介し,緩和ケアの臨床における笑いの大切さについて述べた。次に,生活に密着したケアの大切さを含めながら,具体的な工夫やコツを宇野さつき氏が紹介した。続いて,医師,看護師,チャプレンが,それぞれの工夫を述べた。
後半部分は,「プロフェッショナルから学ぶ」とし,笑顔を引き出すプロフェッショナルからコツを教えていただいた。理容ボランティア,ホスピタルクラウンの両氏が,普段実践していることの中から,現場の医療スタッフが活用できるようなコツ・心がけを紹介した。そして,落語家の方,移動プラネタリウムの活動をされている方から「緩和ケアと笑顔」に関連したコラムを寄せていただいた。本特集が,緩和ケアの臨床にたくさんの笑顔をもたらす一助になれば幸いである。
〔特集〕患者さんの笑顔が見たい!
特集にあたって
笑顔の大切さ
患者さんの笑顔を引き出すヒント
●現場のスタッフとしてできること
大阪府立成人病センターにおける「笑い」と「癒し」を
もたらす取り組み
一般病棟で笑顔に出会うための工夫
在宅緩和ケアで笑顔に出会うための工夫
患者さんと寄り添って笑顔を引き出す心得
●プロフェッショナルから学ぶ
きれいってすてき─美容室からこぼれる笑顔
ポッケに赤鼻をしのばせて
〔Voice〕
“笑い”をいただき,ありがとうございました
癒しと笑顔の移動式プラネタリウム
〔連載〕
●体験者の語りを聴く3
自分をさらけ出す場所がない
●画像で理解する患者さんのつらさ2
吐き気が止まらず,なんだかうまく歩けません
●グッドデス概念を使って難しい状況を理解しよう5
家族にとってのグッドデス概念とは?
●EAPC(ヨーロッパ緩和ケア学会)疼痛ガイドラインを読む2
1 オピオイドのタイトレーション, 2 オピオイドの経皮製剤の役割
●在宅ホスピス緩和ケアにおけるチームアプローチ5
在宅緩和ケアチームアプローチを行う場合に重要な視点3
─チームの効率性(efficiency)
●わたしのちょっといい話5
家族にも言えない孤独な人生の終末にきたもの
─在宅での看取りが願いを解決
〔コラム1〕
●らしんばん
「がん哲学」&「がん哲学外来」の始まり,意味,目的
●KATSUDO 津々浦々
市民が参加する「家で死ねるまちづくり」
●海外事情
ロシアにおける緩和ケア状況の一断面2
─国際会議とホスピス見学会に参加して
●東日本大震災 つながり・たより2
ようこそ“お医者さんのお茶っこ”へ
〔コラム2〕
●いのちの歌
母と一緒に
●REPORT
がんプロフェッショナル養成プラン 第5 回公開セミナー
●レシピで団欒らん! 3
便秘に! 冬瓜のスープ
〔投 稿〕
●原 著
終末期がん患者の口腔合併症の前向き観察研究
●調査報告
独居がん患者に対する在宅緩和ケアにおける介護状況