「もしも…」のことをあらかじめ話し合おう!─アドバンス・ケア・プランニングの実践
アドバンス・ケア・プランニング(advance care planning;ACP)とは,「将来に備えて,今後の治療・療養についてあらかじめ話し合うプロセス」とされている。狭義では「自己決定能力がなくなった時に備えて,あらかじめ自分が大切にしていること,治療や医療に関する希望(してほしいことと,してほしくないこと),代理意思決定者などを話し合うプロセス」,広義では「自分がこれから重篤な病気や状態になった時に,どこでどのようにどうやって過ごしたいかを話し合うプロセス」と捉えてもいいだろう。
今回は,わが国がこれから迎える超高齢・多死社会において,患者の意向に基づいたケアを行うために,どのような取り組みが必要か,または行っているかを具体的に挙げていただく。
特集の冒頭では,事例を挙げて,「ACP をしていればこのように変わる」という切り口で,ACP の実際について述べる。次に,ACP とは何か,概念的な説明と倫理的課題について示す。後半には,ACP を実際に行っている医療スタッフの実感からみえてくること,そして3 施設の実際の取り組みを紹介する。
この特集が,ACP の普及につながることを願ってやまない。「いつでも,どこでも,誰が対応しても」患者の意向が尊重され,かつ,家族が過度の心理的負担を負わないために,あらかじめ患者と家族と医療従事者が「今後のこと」について話し合い,そのプロセスを共有し,かつ誰もが「もしもの時」に参照できるように記録に残すことが,当たり前になることを期待するものである。
〔特集〕「もしも…」のことをあらかじめ話し合おう!
─アドバンス・ケア・プランニングの実践
特集にあたって…木澤義之,他
「もしも…」のことをあらかじめ話しておいたらどうなるか?… 木澤義之
アドバンス・ケア・プランニングとは何か?…大関令奈
本人の意向と人生の物語りという観点での最善─治療の差し控えと中止をめぐって…清水哲郎
体験が教えてくれたアドバンス・ケア・プランニングの大切さ…竹之内沙弥香
医療における意思決定支援のプロセスとその実際…阿部泰之
●患者の意向を尊重する取り組み
小冊子「私のリビングウィル─自分らしい最期を迎えるために」の作成と設置…中村めぐみ,他
北里大学北里研究所病院におけるリビングウィル作成支援の取り組み…竹下 啓
エンド・オブ・ライフケアチームによる意思決定支援の意義… 西川満則,他
〔連載〕
◆EAPC(ヨーロッパ緩和ケア学会)疼痛ガイドラインを読む3
1 オピオイドによる嘔気・嘔吐に対する治療, 2 オピオイドによる便秘に対する治療, 3 オピオイドによる中枢神経症状に対する治療…今井堅吾・森田達也
◆グッドデス概念を使って難しい状況を理解しよう(最終回)
揺れる妻の思い─本当に大事にしたいこととは…下条奈己
◆わたしのちょっといい話6
住み慣れた自宅で最期まで父らしく…久原 幸
◆体験者の語りを聴く4
病気でなくて私をみて…射場典子
◆在宅ホスピス緩和ケアにおけるチームアプローチ(最終回)
今後の課題─緩和ケア専門診療所を中心としたネットワークの必要性…川越 厚
◆画像で理解する患者さんのつらさ3
みぞおちがずっと痛くて食欲も落ちちゃいました…水越和歌・斎藤真理
おさえておきたい! 低カルシウム血症…斎藤真理
〔コラム1〕
●らしんばん
いのちの電話に何ができるだろうか…草苅祐子
● TOPICS
リンパ浮腫に係る診療報酬について…佐藤佳代子
●東日本大震災 つながり・たより3
生きる力を取り戻す─大槌町の“お茶っこ”に参加して… 小峰和美
〔コラム2〕
●いのちの歌
格別の思い出…朝倉雲鶴
●レシピで団欒らん! 4
味覚異常に! 手作りさっぱりジュレ…桑野寛子,他
●REPORT
第17 回日本緩和医療学会
第131 回ホスピスケア研究会
第3 回城南緩和ケア研究会市民のつどい
〔投 稿〕
●原 著
特別養護老人ホームの生活相談員と医療ソーシャルワーカーの看取りケアにおける姿勢と役割の共通点と相違点…金子絵里乃,他