緩和ケア 2013年5月号

臨床で役立つサイコオンコロジーの最新エビデンス

　　緩和ケアにおける患者・家族の精神症状緩和の重要性については，論を待たないであろう。近年，患者・家族の精神症状緩和に有用な知見が集積されてきている一方で，多くの医療者が日々悩みながら，患者・家族のこころのケアに取り組んでいるのも事実である。実際，緩和ケアの現場において，「進行がんへの罹患という強いストレスが原因で生じたうつ状態に，抗うつ薬は本当に有用なのか？」「看護師とサイコオンコロジストが協働であたるケアモデルとはどういう方法なのか？」「せん妄の予防法とはどのような方法なのか？その結果をどのように現場に活かせばよいのか？」「終末期の患者さんに対する新しい精神的ケアの試みとはどのような方法なのか？ それを実際のケアに生かすにはどうすればよいのか？」など，サイコオンコロジー領域のup- to - date な知見をどのように緩和ケ
アの現場に活用していけばよいのかについて，戸惑いの声を耳にすることも少なくない。
　今回の特集では，緩和ケアにおいて有用なサイコオンコロジー領域の最新のエビデンスおよびその実際の活用法について，サイコオンコロジーや精神医療の第一線で活躍中のスペシャリストの先生方に執筆いただいた。医師のみならず，看護師，薬剤師など多職種の方々に有用かつ実践的内容となるような内容となっている。また，重要領域の知見を補完するために，「サイコオンコロジストはこうしている」「サイコオンコロジー最前線」というコーナーを設け，進行がん患者のアカシジアや希死念慮，そして怒りといった緩和ケアの現場でみられやすい状況に対してのアセスメントや，実際のケア・治療法を取り上げるとともに，心理社会的要因とがん罹患・生存期間の関係，自殺，悲嘆について最近の動向についても言及いただいた。
　本特集号が，緩和ケアに従事されている医療者の方々にとって有用な最新知見を届けるのみならず，こころのケアを実践していただくための一助となることを願っている。