死と正面からむきあう―その歴史的歩みとエビデンス
近年の緩和ケアは,患者が「生きる」ことを支えることを重視する傾向にある。WHO(世界保健機関)による緩和ケアの定義(2002 年)やがん対策基本法(2007 年)とともに,「早期からの緩和ケア」の重要性が広く認識されるようになった。たとえば,「早期からの緩和ケア」により生命予後が延長されること,終末期を見越した話し合いを早期から始めることにより患者のquality of life が向上することが示唆され,その延長線上でアドバンス・ケア・プランニングの意義が強調される。がんサバイバーに対する積極的な支援にもみられるように,総じて「生きることへの援助」に重きがおかれているといってよいだろう。
しかし,ホスピスケアは,死が忌避されていた時代に,死と正面からむきあうことから出発した。患者が「生きる」ことを支えることと,患者と共に「死」と正面からむきあうことは,ホスピスケアのいわば両輪であるといってよい。その意味で「死」と正面からむきあうことは,ホスピスケアや緩和ケアの根幹に関わる課題である。
〔特集〕死と正面からむきあう─その歴史的歩みとエビデンス
特集にあたって……森田達也,他
死と正面からむきあう─その意義と歴史的背景……竹之内裕文,他
看取りの時期の医学治療のトピックス……森田達也
看取りの時期の看護ケア……柏谷優子
親をがんで亡くす子どもたちの支援─子どもたちと一緒に親の死とむきあう……佐久間由美,他
終末期ケアと〈お迎え〉体験……諸岡了介
死の苦しみと希望はどこに─ホスピス・緩和ケアに携わる人のために……竹之内裕文
〔特別収録〕
エキスパートに聞くスピリチュアルケアの醍醐味〔後編〕「自分がどう思われるか」にとらわれない,患者中心のケア……岡田 圭
〔連載〕
◆画像で理解する患者さんのつらさ〔最終回〕
便がガマンできないなんて,情けない話ですね……越和歌・斎藤真理
◆わたしのちょっといい話
一期一会……縄田修一
〔コラム1〕
●らしんばん
終わらない看護の“Act locally”……賢見卓也
●CURRENT ISSUE
Whole Person Care ってなんだ!?─ Hutchinson 先生によるWhole Person Care 特別講演会……土屋静馬
●コミュニケーション広場
今とこれからを生きる君たちへ─高校生と考えたがんといのちのこと……儀賀理暁
●海外事情
ホスピスでのティ-タイム─ボランティアの視点から……岡田美由紀
〔コラム2〕
○いのちの歌
忙しかった誕生日……朝倉雲鶴
○ほっこり笑顔! 季節のおやつ〔最終回〕
おひな祭りのババロア……福田恵子
○REPORT
第138 回 ホスピスケア研究会
第1 回 東京都緩和医療研究会 学術集会……田 直子,他
〔投 稿〕
◇短報
外来処方箋からみた慢性腎臓病(CKD)患者におけるオピオイド処方の検討……松尾勝一,他