緩和ケア 2015年5月号

現場で活用できる意思決定支援のわざ

　日々，私たちが関わっている患者・家族は，直面するさまざまな状況の中で，「こころの揺らぎ」「ためらい」を経験し，時に判断に苦しみながら意思決定をしている。そして，このような患者や家族の意思決定を支えるのが，医療者の役割の1つである。

　意思決定支援は，病状や治療法などを説明し，同意を得るといった，いわゆるインフォームド・コンセントの支援だけを意味しない。医療の意思決定に関わる思想背景には，図1のように長い歴史的背景がある。そして，現代のわが国では，保健師・助産師・看護師法の中で，意思決定支援が「医師の治療方針の決定や病状の説明などの前後に，看護師らの医療関係職が，患者との診察前の事前の面談による情報収集や補足的な説明を行うとともに，患者・家族等の要望や価値観などを傾聴し，医療者と患者，家族等が十分な意思疎通を図れるよう支え続けること」と定義され，より広い概念で捉えられている。

　昨今，わが国においても，医療の発展とともに，治療やケアを多様な選択肢の中から，患者・家族が選び取る機会が増えてきた。それに伴い，われわれ医療者も，「患者・家族の意思決定をどう支えたら良いのか」「患者-家族-医療者間の意見の相違にどうアプローチしたらよいのか」迷うことが増えてきているように感じる。

　本特集では，はじめに，「アドバンス・ケア・プランニングと意思決定支援を行うためのコツ」として，「どうやって話し合いを始めたらよいの？」という疑問について，具体的に解説する。次に，「アドバンス・ケア・プランニング」に至る現在までの知見と，今後の方向性を概説する。そして，最近のトピックスについて，質の高いケアに直結するよう，現場での実際の取り組みを紹介する。最後に，「エンド・オブ・ライフ・ケア」における意思決定の考え方についてまとめる。

　本特集が，読者の意思決定支援に関する知識と技術，そして目の前の患者や家族へのケアの向上につながり，日々の支援の一助となれば幸いである。