苦痛緩和のための鎮静についてのアドバンスドな知識
─質の高い実践の土台を得る
苦痛緩和のための鎮静が、近年、再び話題になっている。鎮静は医学のみならず、心理、倫理、哲学など広範にわたる一通りの理解が必要なために、ついつい「わたしの意見」になりやすい。鎮静が議論され始めた1990年代は確かに鎮静を議論するための実証的根拠がほとんどなかったが、現代では、鎮静に関わる多くの臨床疑問について(定義、概念から、臨床まで)系統的レビューがでている。系統的レビューとは、現在存在する実証研究を「もれなく」評価して、領域のオーバービューを得るための研究方法である。著者が「自分の主張に都合の良い」論文のみを引用しがちなnarrative reviewと異なり、相反する意見や現代の研究の限界も明確になる。
本特集では、わが国においても、鎮静の国際的な動向を踏まえたうえで、何が求められるのかを明らかにするために、1つのテーマについて系統的なレビューを紹介しつつ、そのうえで、そのテーマについて、わが国の現状ですすめられること、今後のあり方についての筆者の見解を示すように企画した。現代の緩和ケア臨床家は、国際的な知見を踏まえたうえで、個々の考えを発展させる必要がある。
本特集によって、鎮静に関して、「質の高い実践の土台」を共有することができれば幸いである。
〔特 集〕苦痛緩和のための鎮静についてのアドバンスドな知識
─質の高い実践の土台を得る
特集にあたって…森田達也
鎮静の適応と意思決定過程…前田紗耶架,他
鎮静開始後の評価─鎮静が適切に行われているかをどのように評価するべきだろうか?…永山 淳
鎮静に使用する薬剤は何か,どういう投与方法が一番良いか?…今井堅吾,他
在宅での鎮静は行われるべきか・行われないべきか?…新城拓也
家族のケア
鎮静を受ける患者の家族に対して,どのようなケアを行うべきか?…寺側優里
TOPICS
①鎮静は生命予後を短くするのか?…前田一石
②鎮静に関わる看護師の負担感…中山祐紀子
③プロポフォールとデクスメデトミジンの鎮静における役割…竹中元康
〔連 載〕
◆いま伝えたいこと─先達から若い世代に
何をして欲しいのか…白土辰子
◆FAST FACT
便秘…山口 崇
◆緩和ケア口伝─現場で広がるコツと御法度
・臨死期の口臭について…横川敬子,他
・フェンタニル貼付剤の貼りすぎにご注意!…山本 亮
・るい痩や皮膚乾燥がある人へのフェンタニル貼付剤をはがれにくくするコツ…長谷川亜希
◆落としてはいけないKey Article
トラマドール/コデインはいらないのではないか?…森田達也,他
◆仕事人の楽屋裏
高田芳枝
◆見学では分からない海外事情
コミュニケーション力をつける…白井敬祐