キャリアデザイン ―私たちの目指す道
緩和ケアの専門家に求められることは、この数年間で大きく変化してきた。
がんだけではなく、非がん疾患への対応を求められ、緩和ケア病棟を中心に診ていた時代から、緩和ケア外来や緩和ケアチーム、在宅緩和ケアといった多様な現場に活躍の場は広がり、「早期からの緩和ケア」が世界的に求められる中で、終末期だけの対応ではなく、診断時からの関わりが求められるようになった。そしてまた、地域包括ケアの中でも緩和ケアが重要な位置を占めることなどから、フィールドが病院や診療所、といった「点」から、地域という「面」に広がったことで、私たちに求められることは単なる医療や看護ケアの提供にとどまらず、「地域で人が生きること」そのものを護ることへと大きく広がってきている。
それに伴い、学ばなければならない領域も、これまでの緩和医療学や内科・外科・麻酔科・精神科などの基礎領域にとどまらず、死生学や哲学・宗教学、公衆衛生学や行動経済学といった分野の勉強も必要となってきている。
今はまさに、緩和ケアの分野にとって「静かなる激動の時代」である。あまりセンセーショナルに語られることは少ないが、実際にはこれだけ大きな変化が起きている中で、学びや研修をこれまで通りに行っていたのでは、日本の緩和ケアは世界から取り残されてしまうかもしれない。
そこで、今回の特集では「キャリアデザイン―私たちの目指す道」と題し、これから求められる新しい緩和ケアの専門家像を提示したい。この特集を通じて、ひとりでも多くの方にとって、これからのキャリアデザインの参考になることを期待している。
〔特 集〕キャリアデザイン―私たちの目指す道
特集にあたって…西 智弘
緩和ケア医の未来―日本緩和医療学会が目指す専門医の姿…山本 亮
専門的緩和ケアを担う看護師に求められるもの…新幡智子
若手ニーズ研究から見えてくるもの…西 智弘
海外におけるキャリアデザイン―緩和ケア専門家に求められるもの…森 雅紀
総合診療医が緩和ケア専門家に求めること…草場鉄周
腫瘍内科が緩和ケア専門家に期待すること…吉田健史
わたしのキャリアデザイン
①医師 「やってみなはれ」型キャリアパス…柏木秀行
②看護師 出会いを大切に,今日という1日を大切に生きる…川村三希子
③看護師 天職は,開拓,挑戦,イノベーション…梅田 恵
④薬剤師 これまでの経験はすべて「今」に活きている…前田桂吾
⑤ソーシャルワーカー 歩んできたこと,そしてこれからへ向けて…田村里子
〔連 載〕
◆いま伝えたいこと
どこでも,どなたにも,ホスピスケアを…笠原嘉子
◆FAST FACT
緩和ケアでよく使用する神経ブロック…鄭 陽
◆緩和ケア口伝―現場で広がるコツと御法度
・ケミカルコーピングにどう対応できるか―精神科医の立場から…佐伯吉規
・医療用麻薬依存症患者を経験して…世利佐知子
・医療用麻薬依存症患者への対応―経験知を中心に…柏木秀行
◆落としてはいけないKey Article
終末期せん妄に抗精神病薬は無効で,生命予後も短くする?…森田達也
◆えびでんす・あれんじ・な~しんぐ(EAN)―実践力を上げる工夫
死前喘鳴―患者さんのそばで苦痛を感じている家族のケア…清水陽一
◆仕事人の楽屋裏
田村里子
◆のぞいてみよう!国際学会最前線
あの人に会いたい ただそれだけで世界が広がる…小杉和博