外来緩和ケア超実践術
2016年末に、「がん対策基本法」の改正が行われ、その条文の中で「がんと診断されたときからの緩和ケア」が明記された。世界的にも種々の研究の成果において、がんの早期から専門的緩和ケアサービスが介入していくことの有用性が示され、これまでの入院中心の緩和ケアから外来中心の緩和ケアへと、緩和ケアが求められる場は動いてきている。
しかし、このような状況のなか、日本においては「緩和ケア外来」のあり方も、各施設によってさまざまであり、その理想的な環境はどういったものなのか、現実的にはどのあたりを目指すべきなのか、という点も曖昧である。実際に、多くの地域で「緩和ケア外来へのアクセスが悪い」「緩和ケア外来が利用しにくい」といった、がん治療医や患者・家族からの声も聞かれている。
また、入院中であればそれほど問題とならなかったようなことでも、外来で緩和ケアを提供するうえでは、臨床的に支障をきたすほどの問題となるケースもある。
本特集では、このように時代の要請にしたがって、外来緩和ケアの機能を整えていかなければならなくなった現代において、われわれはどのように考え、何を整えていくべきなのか、そしてどういったところにピットフォールがあるのか、といった面について明らかにしていきたいと考えている。本特集が、これから外来緩和ケアを整えていこうという臨床家の方々にとって有意義なものであることを期待したい。
目次
〔特 集〕外来緩和ケア超実践術
特集にあたって…西 智弘,他
外来で行う緩和ケア─理想編…西 智弘
外来で行う緩和ケア─現実編…廣橋 猛
外来緩和ケア マネジメントのコツ
1.「 緩和ケア外来」というより,「外来の緩和ケアチーム」…佐久間由美,他
2.地方のがん専門病院の緩和ケア外来におけるマネジメントのコツ…本間英之,他
3.外来で療養先の意思決定支援を行う…川島正裕,他
相談支援センターにおける外来緩和ケアの実践…矢野和美
病棟と緩和ケア外来の連携…向井未年子
〔寄 稿〕
追悼:特別寄稿
日野原重明先生の思い出―挑戦と適切な折り合いの人生…柏木哲夫
〔連 載〕
◆いま伝えたいこと─先達から若い世代に
がん看護教育・研究を本格的・系統的に…小島操子
◆FAST FACT
不安(心配)…酒見惇子
◆緩和ケア口伝─現場で広がるコツと御法度
・終末期口臭に対するクリンダマイシン…西村幸祐
・エチゾラムの舌下投与について…佐藤恭子
・緩和ケアにおけるポリファーマシーに対する薬剤師の関わり…西別府弘子
・がんやいのちに関する教育を行っていくときのコツ…三好 綾
◆落としてはいけないKey Article
モルヒネはがんの進行を促進するが,メチルナルトレキソンは抑制する?…森田達也
◆えびでんす・あれんじ・な~しんぐ(EAN)─実践力を上げる工夫
味覚変化─その人なりの対処方法を見つけよう…海津未希子
◆仕事人の楽屋裏
濵本千春
◆のぞいてみよう! 国際学会最前線
国際学会で得た仲間から学び協働する…宮下美香
若手からベテランまで,ともに学び,そしてつながる…江川健一郎