呼吸困難-エビデンスはそうだけど,実際はこれもいいよね
2016年に日本緩和医療学会が「がん患者の呼吸器症状の緩和に関するガイドライン」を改訂し,2016年版(以下,2016年版改訂ガイドライン)として発刊した。2016年版ガイドラインは,従来のガイドラインで扱っていなかった臨床疑問まで範囲を広げたのみならず,より厳密な診療ガイドライン作成プロセスを参考にしながら,従来よりも“踏み込んで”ガイドライン上の推奨を検討・決定した。そのなかで,推奨文だけを読むと一見,「ムムっ?!」と思われることもあるような,controversialな推奨も見受けられたり,ガイドラインの推奨文のみでは臨床に生かすのに「今一歩物足りないなぁ」と感じる方がいらっしゃったりするのではないかと思う。
そこで,本特集では,いくつかのcontroversialな2016年版ガイドラインの推奨内容を解説文の内容も踏まえながら一歩踏み込んで読み解くとともに,ガイドラインでは扱われなかった“周辺の臨床疑問”に関する現場での考え方を解説いただく。
本特集が2016年版呼吸器ガイドラインのより深い理解につながり,臨床現場で“役に立つもの”となることになればと祈念する。
〔特 集〕呼吸困難-エビデンスはそうだけど,実際はこれもいいよね
企画担当:山口 崇,森田達也
特集にあたって…山口 崇,他
モルヒネは実際どう使うか?…山口 崇
オキシコドン・フェンタニルはいつ使うのか?…渡邊紘章
がん以外の疾患に伴う呼吸困難に対するモルヒネの効果は?…山口 崇
Column 1:フェンタニルは突出的な呼吸困難に効果はあるの?…森 雅紀
がん患者の呼吸困難に対するベンゾジアゼピンの使い方…松田能宣
低酸素血症がない呼吸困難患者に酸素を投与する場面はあるか?…合屋 将
Column 2:扇風機は効果ある?…角甲 純
死前喘鳴の治療戦略とは?…西 智弘
Column 3:がん患者の咳にガバペンチン・プレガバリンはダメ?…坂下明大
〔連 載〕
◆FAST FACT
腹水…松沼 亮
◆いま伝えたいこと─先達から若い世代に
緩和ケアと向き合うには…安達 勇
◆仕事人の楽屋裏
濵本千春
◆緩和ケア口伝─現場で広がるコツと御法度
・専門看護師による「がん相談支援室」の意義…武見綾子
・訪問看護師と専門・認定看護師の同日訪問の取り組み…浅塲 香
・がん患者の就労,経済的問題に関する相談のコツ…賢見卓也
・ブリーフセラピーを援用したデスカンファレンス─過去の意味づけは変えられる…三谷聖也
◆落としてはいけないKey Article
非劣性試験って何?─粘膜吸収性フェンタニル vs. モルヒネ皮下注射…森田達也,他
◆えびでんす・あれんじ・な~しんぐ(EAN)─実践力を上げる工夫
消化管閉塞に伴う悪心・嘔吐─オクトレオチドの持続注射の中止あるいは代替薬の検討…林 ゑり子
◆のぞいてみよう! 国際学会最前線
EAPCは仲間を増やす場所…西山菜々子