お金と仕事 リアルな支援
◆企画担当
西 智弘(川崎市立井田病院かわさき総合ケアセンター)
矢野 和美(東京逓信病院がん相談支援センター)
がんと診断されたときに,患者は多くのものを失う。仮にがんが治ったとしても,元の生活に戻れるとは限らない。一方で,医療者は治療や検査のことばかりに目を向け,患者の生活や大切な人との関係性を再構築していくためのケアはこれまでおろそかにされていた。
本特集では,がん患者が陥りがちなお金と仕事の問題を取り上げ,その解決方法や利用可能な資源について一覧できるようにすることを目的とした。この機会に,ぜひ患者に医療者側からこの話題に言及してほしい。医師や看護師に話すようなことではないと遠慮しているケースなどもあるからだ。そのときに,この特集が役に立つことを期待している。
目次
特 集:お金と仕事 リアルな支援
企画担当:西 智弘, 矢野和美
特集にあたって…西 智弘,他
働くことの意味─働き盛りのがん患者が働くこととは…高尾真紀子
これまでの就労に関する実態…桜井なおみ
働くがん患者への支援─政策の展開と今後の課題…高橋 都
お金と仕事に関する制度
1.制度を活用する─高額療養費を中心に…藤田久子
2.がん患者の治療と仕事を両立するための社内制度と公的制度…近藤明美
3.民間の医療保険・その他の使えるサービス…黒田尚子
さまざまな場面での就労支援
1.患者に「仕事を辞めたほうがよいか/辞めてしまおうか」と言われたとき
◉看護師の対応…小林成光
◉会社の取り組みと制度の利用…武田雅子
2.治療関連障害でもともとの仕事ができない/無理なとき
◉医療者側の考え方…澤 祥幸
◉看護師の対応…清水奈緒美
◉産業医からみた就労支援…立石 清一郎
3.会社から仕事を辞めてほしいと言われたとき
◉社会保険労務士の考え方…染谷 由美
◉ハローワークの取り組みをもとに…岡田 晃
Q&A
1.患者さんに抗がん剤の治療費を聞かれたとき:薬剤師から…伊東俊雅
2.患者さんから制度や家計の相談を受けるとき:院外のリソース がんと暮らしを考える会…賢見卓也
3.2018年4月1日から始まった「療養・就労両立支援指導料」どうしてる?:運用して半年が経過して…矢野和美
連 載
◆勿忘のとき
「助産婦」が必要なように「助死婦」も必要だ―意識ある無痛分娩があるように眠気なき「無痛終末期」も必要だ…山室 誠
◆ホスピス緩和ケアの日々(4)
痛みを知るということ…相河明規
◆緩和ケア口伝─現場で広がるコツと御法度(25)
◉がん患者に“足が浮腫んでいる”と言われたら? ─外来で実施できる浮腫セルフケアのコツ…木村尚子,他
◉在宅部門をもたない急性期病院で研修医の在宅研修を充実させるコツ…羽賀大貴
◉男性患者さんに苦痛を与えない上手な尿道カテーテル挿入のコツ…佐々木光晴
◆緩和ケアコンサルテーションの秘訣(3)
人間関係論…伊達泰彦,他
◆落としてはいけないKey Article(25)
「風を送ると呼吸困難が和らぐ」の比較試験を通して看護ケアの臨床試験を考える…森田達也,他
◆仕事人の楽屋裏(25)
角甲 純
◆FAST FACT(24)
モルヒネ…飯田真之
◆えびでんす・あれんじ・な~しんぐ(EAN)─実践力を上げる工夫(14)
ディシジョンエイドのエッセンスを取り入れた意思決定支援…入江佳子
◆のぞいてみよう! 国際学会最前線(14)
欧州緩和ケア学会にみる緩和ケア研究の潮流…高木雄亮