死にゆく一人ひとりが、主体的、積極的に自分らしい最期を迎えられるように努力することこそ、現状の末期医療をより良いものにしていきます。また、看取りや末期医療は、死を迎える個々人の「心得と作法」に基づいて行われるべきものです。
本書は日本人のこころの在りようや、より「日本的」ということを意識した、死を迎える日のための、あるいは看取られるための心構え(心得)や実際(作法)を具体的に記しています。
末期医療を受けるご本人、ご家族、最後の生を支える医療・福祉に携わる方々にとっての待望の一冊。
いつか死を迎える日のための心得と作法について
第1カ条 人として生まれることは難しく、今あるいのちが有難いこと
なぜ人として生まれることは難しく、今あるいのちが有難いのか
人に生まるるは難く、いま生命あるは有難く/「有り難い」ということについて
生命(いのち)の始まり、生命(いのち)の終わり
『仏教聖典』にみる生命観
生命の捉え方/『仏教聖典』にみる命と生命/『仏教聖典』にみる「命」の捉え方/命の前提となる考え方/得難い生命の延長戦上にある命の終わり
第2カ条 人はいつか必ず死を迎えるものであると自覚すること
いつか“散るさくら”になることを自覚を
生死に向き合うことは、真実に向き合うこと
いのち教育の大切さ
人はいつ頃から死の概念が分かるのか/人生の幕はいつ降りてくるか分からない/いのち教育の必要性と大切さ
第3カ条 日々、生死一如と心得て生きること
生死一如・無情迅速ということについて
変化・変転し続けている存在としての人間
「生死一如」と心得て生きるために
過去・現在・未来という時間の流れのなかで/今の時間を行き、生死観を育む
「生死一如」に対する想いの馳せ方
死のこちら側の死を想うこと/死の瞬間の死を想うこと/死のむこう側の死を想うこと
第4カ条 死ぬとき・死に方・死に場所を平生より思いえがくこと
人生をより豊かなものとするために残りの時間を意識する
四つの生涯段階(四住期)に学ぶ人生の意義
現代人の死ぬとき・死に方・死に場所
死ぬとき/死に方/死に場所
第5カ条 限りあるいのちの短さを知ることは、死に支度には必要なこと
“病名告知”ということについて
病名告知の実態とその目的
病名告知の実態/病名告知が問題となる理由/病名告知の目的/病名告知の条件
なぜ、限りある命の短さを知ることが大事なのか
第6カ条 死ぬということは、この世からあの世へと旅立つこと
ターミナルケアの語源には境界という意味が
三途の川にも境界が
臨死体験者のバリア体験にも境界が
死後の世界に対する人々の態度
新たな価値観への転換となるもの/あの世の存在への賭け
死という超え難い一線を乗り越えるために
第7カ条 自分の「願い」を第一にして看取られること
だれも相手には成り代わりえない存在であるがゆえに
「恕」の心について/同感という能力/死を学ぶ、死に学ぶ
死を畏れ、死を恐れずに
死に対するおそれ/死に対する畏れと恐れ/死を畏れ、死を恐れずに生きる生き方を
平生から自身の願いを明らかに
自分の願いをリビングウィルに託す/自分の意思をエンディングノートに記す
第8カ条 死に向かう過程で生じる五つの苦しみを心得ておくこと
生老病死に伴う苦しみ
末期にある人やその家族の苦(苦痛・苦悩)
五つの側面からみた苦(苦痛・苦悩)
基本的欲求に伴う苦/身体的側面の苦/内的側面の苦/社会的側面の苦/生活面の苦/看取られる者もその家族も、死にゆく過程で生じる苦を心得ていること
「痛み」という苦痛について
痛みが人に与える影響/痛みの原因については説明を受けること/痛みの感じ方と心の状態
第9カ条 看取ってくれる人々の役割・立場を心得ておくこと
看取りに関わってくれる専門家たち
看護師の役割/医師の役割/ソーシャルワーカーの役割/宗教家の役割/薬剤師の役割/栄養士の役割/理学療法士・作業療法士の役割/音楽療法士の役割/ボランティアの役割/家族の役割
在宅ターミナルケアを希望する人への関わり
第10カ条 看取られるということは、本人のみならず家族も含めて見護(みまも)られること
「家族」とはどのような存在なのか
末期患者を抱えた家族の苦とそのニーズ
基本的欲求に伴う苦/身体的側面の苦/内的側面の苦/社会的側面の苦/生活面の苦
家族の死は、残される者にとっても危機的な出来事
対象喪失と悲嘆・予期的悲嘆について
正常な悲嘆の心理過程、病的な悲嘆の心理過程
家族が少しでも早く元の日常生活を取り戻すために
配偶者を亡くした男性と女性の気持ちの相違
第11カ条 看取られる者・看取る者共々に目指すのは「救い」ということ
「救い」の概念
看取られる者・看取る者がめざす「救い」とは
看取りがめざすものからみた「救い」とは
人としての望ましい臨終・死からみた「救い」/看取る側からみた望ましい臨終・死からみた「救い」
最期の瞬間(とき)の救いをめざして
「救い」は個々人の問題である/看取られる者も看取る者も、共に生死観を育むことの大切さ
第12カ条 自分の生き様・死に様を決めるのは、自らの生死観であるということ
生死観とは何か
なぜ、生死観が大切なのか
生死観はその人の死の迎え方を左右する/生死観は個々が育んでいくもの
人の生き様、死に様に学ぶ生死観
第13カ条 看取りの善し悪しは、看取りを受ける本人が決めること
看取りと評価
看取りはどのような視点で評価されるのが望ましいのか
末期患者のQOLからみた評価/QOLと病名・病状・予後などを知っていること/各人の「死を迎えるため心得と作法」からみた善し悪しの判断/家族の立場からみた善し悪しの判断も大切に
第14カ条 死を迎える日に、心残りや憂いがないように努めること
人それぞれに生き様、死に様があるけれど
死に向かう三ヶ月という期間の大切さ
中世の臨終行儀書にみる臨終時の心得と作法
心残りや憂いがない最期を迎えるために
第15カ条 死にゆくとしても、言いたい放題、わがまま放題は避けること
「病む」という体験がもたらすもの
病気は人を「わがまま」にさせることがある
自己中心性/依存性/怒り・攻撃性
言いたい放題、わがまま放題を避けたい理由
「わがまま」と「わがまま」/「わがまま」である自分に「これでいい」といいたい/看取られる者、看取る者が共に「わがまま」でいられるように
第16カ条 自分の臨終・死後処置については、自身の願いを伝えること
危篤・臨終とはどのような状態・状況をいうのか
危篤とは/臨終・命終とは
死後処置の目的とその実際
死後処置が行われる前に/死後処置の実際
臨終・命終・死後処置に対する希望とエンディングノート
第17カ条 死に向けて心得ておくべきことには、看取られた後の事柄も含まれること
死にまつわる文化には、その国固有のものがある
人が死んでからお墓に入るまで
「人の死から埋葬までの手続きとその実際」の見学から知りえたこと
死亡届と火葬許可証/葬儀の費用はいくらかかるのか/入棺体験を通じて感じたこと/火葬・斎場・墓石などのこと/お墓ディレクターについて
死後に対する心得・希望とエンディングノート
死に備えるために必要な教養