震災を越えて—“つながり”からの出発
2011 年 3 月 11 日午後 2 時 46 分ごろ,三陸沖牡鹿半島の東南東約 130 km 付近,深さ約 24 km を震源とするマグニチュード 9.0 の平成 23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地震が発生しました。日本の観測史上最大規模といわれるこの地震は,岩手県沖から茨城県沖まで南北約 500 km,東西約 200 km の広範囲に及び,高さ 10 数メートルの津波が三陸沿岸の町や村を襲い,一瞬のうちに家や車,人,生活のすべてを飲み込み,三陸沿岸一体の町や村から千葉横浜まで,甚大な被害をもたらしました。さらに,この地震に伴って起きた福島原発の事故は,想定外といわれながら驕り高ぶった者たちによる人災ともいえるもので,地震や津波により疲弊した人々だけでなく,日本各地に放射線被曝や放射能汚染といった大きな不安をもたらしました。犠牲となられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げるとともに,被災された皆さま,そして今なお避難生活を送られている皆さまに心よりお見舞いを申し上げます。
あの阪神・淡路大震災から 16 年,震災で灰燼となった町並み,人々の心の傷は震災の爪痕を残しながらも大きな復興を遂げました。あの時,日本各地から,世界各地から届いたたくさんの励ましの声と差しのべられた手が,住む家を失い寒さに震える人々をやさしく包み励ましてくれました。そしてやがて訪れた春の日差しとともに,復興への勇気を与えてくれました。
今,あの時と同じ日差しが降り注ぎ,あの時にも増す声と手が世界から日本に差しのべられています。私たちに何が起きたのか,私たちは何を見たのか,そして今,何をすればいいのか,何をしてはならないのか。失ったものは大きいが,今こそ強い一体感をもって,この危機に,この試練に,立ち向かう時,この国に新たな成熟と希望への歩みが始まる。
震災を越えて—“つながり”からの出発
編集担当者:山根 寛
悲しみと喪失から学ぶ 川口 淳一 324
瞬間…そして何が起きたか—人がつながることの意味 土井 勝幸 329
保健師として被災地の支援に入って 原田 小夜 334
阪神・淡路大震災があったからこそ神戸で生きていきたくなった 大浦 由紀 338
被災した認知症の人を支えるケア—生きる力と新しい暮らしを見守りながら 永田久美子 343
心的外傷の孤立化を防ぐために—後方でできる支援 田原 明夫 347
私の被災体験・支援体験 向川 公司,他 350
あのころ いま
あなたはなぜ作業療法士になろうと思いましたか? 瀧 美奈子 314
ライト☆すぽっと
心の響き合いと交流—作業療法士だからこそ出会えた人たち 澤 治子 316
連 載
重度障害者への活動分析アプローチ
重度障害像を呈する片麻痺患者へのアプローチ—握りを強調した上肢運動から,道具操作・生活活動に向けて 三瀬 和彦,他 370
子どもといる風景 diary
訪問支援の魅力 布市 敦子 380
現場で使えるアクティビティ
地域に開かれたデイサービスを目指して 今井 康子 383
失敗に学ぶ
「肝心なことは,目に見えない」 奥田真由美 386
わたしのワークライフ・スタイル
私のワークライフ・スタイルは?—両親の見守りをしながら 宗近眞理子 388
がん患者のリハビリテーション
がんを担った人を知る②—スピリチュアルペイン 安部 能成 393
Welcome to 地域リハビリテーション
エンパワーメント支援—手作り工房の紹介 川本愛一郎 398
有効活用しよう! リハビリテーション実施計画書
通所リハビリテーションでの活用事例 小川 佳代 402
お家を変えよう!
住宅改修とアセスメント 児玉 道子 408
リハビリテーションと上肢運動学
目に見えない第 1CM 関節の内転拘縮 矢﨑 潔,他 409
作業療法のアイデンティティー
仕合うこと—主体的な生き方を目指して 来島 修志 412
現場で使えるシェーマ!
家屋評価で使ったシェーマ 石田 順子 416
再生への物語
緊急入院後の生活 谷田部 宏 419
一枚の絵
Uさんの日記 Uさん 377
パント大吉のどこでも遊ぼ!
覚えて勝負 パント大吉 378
アラカルト
インフォメ−ション 391,401
既刊案内 418
書評 422
投稿・執筆規定 423
次号予告 424