どうして“訪問”っていわないの?アウトリーチ
最近,精神障害者を対象とした支援方法として「アウトリーチ」という言葉を聞く(目にする)機会が増えた。「アウトリーチ」は,「訪問」「訪問支援」「訪問支援活動」といった言葉にも置き換えられるが,なぜ「アウトリーチ」という言葉をわざわざ用いているのだろうか? 何を変えようとしているのだろうか?
「アウトリーチ」という言葉を目にするようになった理由の1つには,訪問を中心とするACT(assertive community treatment:包括型地域生活支援プログラム)の取り組みが注目されていることがあるだろう。また,これまでの退院促進事業を発展させた「精神障害者アウトリーチ推進事業」が,厚生労働省によって2011年度から実施されていることなども関係しているだろう。ACTの特徴は,多職種チームで訪問サービスを行うことにある。「精神障害者アウトリーチ推進事業」においても,専門職がチームを組んで必要に応じて訪問支援を行うことにより,保健・医療・福祉サービスを包括的に提供することを謳っている。これらは,近年,医療現場で求められているチーム医療の推進という観点からも,着目される取り組みといえる。そう考えると「アウトリーチ」には,単に訪問するという行為や目的だけではなく,さまざまな専門職が知恵を出し合い,連携して支援を行うという機能が含まれている。また,病院ではなく地域の中でチームがその担い手になるんだという,精神医療の転換といった意味合いも見出すことができるかもしれない。
特集 どうして“訪問”っていわないの?アウトリーチ
アウトリーチはいつ、どこから? 伊藤 順一郎 ●126
ACTにおけるアウトリーチ 津田 祥子 ●131
訪問看護というかたちのアウトリーチ 野々上 武司 ●135
精神科における作業療法士の訪問型支援とアウトリーチ 苅山 和生 ●140
精神保健福祉士からみたアウトリーチ 梁田 英麿 ●146
訪問リハビリテーションからみたアウトリーチ 谷 隆博 ●153
あのころ いま
力を蓄えた時代とは―自問自答する 伊藤 貴子 ●116
ライト☆すぽっと
8番目の虹色を生きる男 大橋 雄二 ●118
連載
子どもといる風景DIARY
子どもの笑顔が見られる日々 船田 真希 ●158
アンテナ
平成24年度診療報酬・介護報酬の同時改定の概要 佐藤 浩二 ●164
障害児支援に関わる改正自立支援法および改正児童福祉法 鈴木 清美 ●167
リハビリテーションと上肢運動学
手関節を理解する!② 矢﨑 潔,他 ●174
掘り起こせ“人”のやる気! 我らOTスコップ隊
夕暮れ症候群 上城 憲司、他 ●177
ほっとストーリー
後悔しないこと—人が死ぬ時に僕ができること 大越 満 ●178
作業療法のアイデンティティー
患者が望む作業療法の核とは? 葉山 靖明 ●180
重度障害者への活動分析アプローチ
発動性の低下を認める症例に対する作業療法の一考察 大久保 紗穂子 ●186
再生への物語
入院生活から自宅療養へ 谷田部 宏 ●193
がん患者のリハビリテーション
がん治療の場面とリハビリテーションの役割②リハビリテーション室(機能回復訓練室)を活用したアプローチ 安部 能成 ●196
発達領域におけるIT活用支援
IT活用支援とは 鴨下 賢一 ●202
Welcome to 地域リハビリテーション
番頭さんがゆく!リハマインドの組織づくり 有村 正弘 ●205
お家を変えよう!
パーキンソン病と住宅改修② 児玉 道子 ●209
一枚の絵
文字に想いを込めて 小貫 孝男 ●161
パント大吉のどこでも遊ぼ!
花見でかくれんぼ パント 大吉 ●162
レポート
全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会
第19回研究大会 沢田 大明 ●168
編集部がみつけたキラリ発表
患者さんの情報知っと~と? 林 賢太郎,他 ●169
アラカルト
カメラマン川上哲也の見た世界 ●目次扉
既刊案内 ●152
訂正とお詫び ●160
『臨床作業療法』 投稿についてのお知らせ ●171
インフォメ-ション ●172
本の街道そぞろあるき ●204
次号予告 ●212