ここがポイント!リハビリ現場の家族支援
本誌7巻3号の特集では「家族の力,他人の力」をテーマにして取り上げたが,今号では特に「家族」への支援に焦点を当てて企画した。
家族支援にはいろいろな方法がある。当事者へは家族や地域と協働して支援が進められるのが理想であるが,必ずしも家族に当事者を支える力があるとは限らない.たとえば,当事者を支える立場にある家族に,障害や困難さがある場合もある。また,当事者がいることにより,その家族が一時的に不安定な精神状態になることもある。そこで今回は,一般的な生活を送られている家族から,障害やケアが必要な家族まで幅広く取り上げることとした。
家族ごと,もしくは家族の方を先に支援していかなければ,当事者への支援につながらない場合もある.発達障害の現場でも,「子どもよりも,お母さんの方が心配」「子育ての主体である親が子を支えることができていない」という事例が増えてきている.筆者自身も,家族を支援することによって当事者の症状が落ち着いてくるといった事例を経験してきた.当事者の日常生活を支える存在である家族をどう支えるか,どのように当事者への支援の良き協力者,良い環境となってもらうかなど,どういうところに困難な要因があるのかを含めて家族支援の模索や試みを紹介することにした。
作業療法士には,いったん関わると決めたら,当事者の生活すべてをみていくという姿勢が必要になる。しかし,作業療法士だけでは家族を含めた当事者を支えきれないというもどかしい現状もある。そこで提示できるのが,多職種と連携するという方法である。多職種とどう連携し,解決策を見出していったのか,発達障害,施設介護,訪問リハビリテーション,リハビリテーションセンターの現場の執筆者の方々が事例を挙げて解説し,支援のポイントを示した。
現在,当事者へのリハビリテーションの質の向上のためには,家族を含めた支援が望まれる。本特集がさらなるリハビリテーションの展開への指標となれば幸いである。
特集 ここがポイント!リハビリ現場の家族支援
「家族」は今 南雲直二
児童発達支援事業施設での子育て支援の取り組み 鈴木清美
特別支援学校での家族支援を目指して 佐々木友香
回復期リハビリテーション医療の現場では-在宅移行と自己決定を中心に 宮本麻子
家族支援および多職種連携支援-老健の支援相談員という立場から 三浦 晃
家族会を通しての家族支援 川原 薫
家族の想い
親と子が安心して過ごせる場を 加藤恵美子
前に進もうという気持ち 山口智子
あのころ いま
迷いの中から見えたもの 福山英明
ライト☆すぽっと
こころ常にこの道を離れず-心技一体の助産道を求めて 青木康子
連載
ほっとストーリー
忘れられない贈り物 目良幸子
OTが作る早技レシピ
鶏もも肉のミックスソース和え 宇田 薫
再生への物語
自宅療養から職場復帰へ 谷田部 宏
高齢者・脳卒中患者への排尿リハ・ケアアプローチ
活動の拡大につながる包括的排尿リハ 太田有美,他
がん患者のリハビリテーション
がん治療の場面とリハビリテーションの役割(5)外来・通所と訪問リハビリテーション安部能成
子どもといる風景 diary
教諭として,作業療法士として 本間嗣崇
お家を変えよう!
脊髄小脳変性症と住宅改修 児玉道子
SHINSAI マイ・ノート
他団体とのチームで二次避難所へ 藁谷裕葵
リハビリテーションと上肢運動学
肘関節を理解する!
作業療法のアイデンティティー
人としてのアイデンティティーを実感できるための支援 新井健五
Welcome to 地域リハビリテーション
番頭さんがゆく! 連携-そこにセラピストがいる!(後篇) 有村正弘
発達障害児の口腔ケア
治療より難しいのは行動のコントロール 宇都仁惠
発達領域におけるIT活用支援
スイッチインターフェイスの活用
レポート
第46回 日本作業療法学 加賀山俊平,他
編集部が見つけたキラリ発表
人生の最期に確認できた家族の絆 河本敦史,他
キャンプ活動における作業療法の意義 福永寿紀,他
投稿論文
〔原著〕高齢者を対象に家庭型を併用した
〔原著〕地域型レジスタンス運動の体力への効果 冨山直輝,他
一枚の絵
巾着に復興の思いを詰めて TRY利用者さん
パント大吉のどこでも遊ぼ!
計ってなんぼ パント大吉
掘り起こせ“やる気”OTスコップ隊[認知症の人編]
認知症の人の「失敗」を,「できる」に導くコツとは? 上城憲司,他
アラカルト
カメラマン川上哲也の見た世界/既刊案内/インフォメーション/書評/本の街道そぞろ歩き/次号予告/本誌付録 塗り絵ポストカード