震災後2年 私たちの物語と宿題
2011年3月11日の東日本大震災から3カ月後の6月,本誌8巻4号「震災を越えて―“つながり”からの出発」では,被災当初の混乱や,医療・介護現場の作業療法の奮闘が報告され,また阪神・淡路大震災などの被災体験者からのメッセージを臨時特集号として発行した。震災直後ということもあって反響が大きく,被災地や被災者の作業療法士の苦難を発信することができた。
東日本大震災から2年が経ち,新聞などのメディアでは引き続き,震災後の事情,震災への備えなどの記事や情報が発信されている。作業療法においても,日本作業療法士協会,県士会,団体,病院・施設,個人などによって支援が継続されている。これからの備えやネットワークの構築はもちろん大切であるが,今号の特集「震災から2年 私たちの物語と宿題」では,執筆者個人が見たり,経験したり,感じた“物語”を中心に,柳田邦男氏の言う「2.5人称の見方」で記していただくことにした。震災以降,失ったものもあれば,別れもある。しかし,継続的な復興支援の中の触れ合いから,多くの出会いや心の交流など,新しい関係性が生まれてもいる。そのような支援の中から生まれた身近な物語をまとめていくこととした。
本特集は,被災地で支援をしていく中で,あるいは支援を受ける中で出会った印象的なエピソードを挙げ,その時の想い――専門職としてより前に,1人の人間としての想いが綴られている。そして,人として,または作業療法士として課題と感じたこと,伝えたいこと,今後への思いについても記している。
支援の中で関わった人たちと,おのおのの執筆者の心との触れ合い,そしてちりばめられた数々のエピソードから,人と人の絆を感じてもらいたい。そして,紡がれた絆が読者の心に届き,明日への歩みにつながっていくことを心から願っている。
特集 震災後2年 私たちの物語と宿題
編集担当:大浦由紀,土井勝幸
被災後に支え・支えられる日々 大浦 由紀●126
ゼロの「日常」からの新生を共にして〔宮城県・女川町〕 加藤 晴久●127
仮設住宅における生活環境支援を通して〔宮城県〕 大場 薫●132
復興支援で気づいた「絆」の本当の意味〔岩手県・沿岸被災地〕 景山 信子●135
避難所での褥瘡ケアの活動に関わって〔岩手県・陸前高田市〕 近藤 円●138
支援活動を通しての一行政OTの思い〔福島県・南相馬市〕 伊賀 裕貴子●142
被災地の老人保健施設の受け入れと支援〔福島県・いわき市〕 木田 佳和●146
被災した障がい児事業への関わりと家族支援・支援者支援〔福島県・相馬地域〕 今川 雅代●149
震災後に気づいた大切なこと〔福島県・郡山市〕 岡本 宏二●152
支援を通して感謝して生きるという作業を紡ぐ 土井 勝幸●157
ライト☆すぽっと
なぜ,ワクワクとともに走る?―医師・ランナー・ミュージシャンが駆け抜ける世界 福田六花●118
連載
■スキル
リハビリテーションと上肢運動学
肩関節を理解する! 矢﨑 潔,他●177
OTが作る早技レシピ
もやしの豚肉自分で巻き 宇田 薫●186
イラストで見る脳卒中片麻痺患者へのアプローチ
片麻痺者の上肢・手の治療③―手の治療,対象操作機能 渕 雅子●194
■レクチャー
お家を変えよう!
インテリアカラーと住宅改修 児玉 道子●159
発達障害児の口腔ケア
唾液はすぐれもの 宇都仁惠●180
発達領域におけるIT活用支援
パソコンを障害に合わせて使うには―アクセシビリティ機能③ 村元 聖治●188
コラム
■ライフ
あのころいま
紡がれる出会い 森田 三佳子●116
ほっとストーリー
父のこと 谷川 真澄●164
SHINSAIマイ・ノート
名前を呼ぶことが交流の第一歩 藁谷 裕葵●167
ちょっといいですか?
情報伝達ルールについて グループ・ピアズ●170
作業療法のアイデンティティー
地域での生活をイメージする 野々垣 睦美●182
子どもといる風景DIARY
いのちに寄り添っていく 佐伯 麻衣●191
■View
一枚の絵
生涯現役の喜び 働き者のMさん●161
パント大吉のどこでも遊ぼ!
階段ポイント パント大吉●162
掘り起こせ“やる気”OTスコップ隊 認知症の人編
やってるのは園芸活動,狙ってるのは歩行練習! 上城憲司,他●176
アラカルト
はじまりのことば●巻頭色頁
カメラマン川上哲也の見た世界●目次前
書評●173
インフォメーション●174
付録の解答●179
本の街道そぞろ歩き●190
既刊案内●158
次号予告●206