やめときぃ~,そんな評価
私たち作業療法士(以下,OT)は,その人の利点や欠点を知るために,対象者と向き合い,学校で教わってきた知識や経験をもとに,悩みながらも評価を行う。つまり,日々,対象者を知ろうとする努力をしている。
しかし,「評価しないといけない」という気持ちがはやり,やみくもに評価をしたり,対象者のニーズやホープを主体とするあまり,評価が偏ってしまったり,他職種でもしている評価を行ってしまっていたりすることがあるのが事実である。たとえば,身体を治したいというニーズに対して,機能評価が主体で,そのほかの評価が不十分になったり,OTと言語聴覚士が同様の高次脳評価をしていたり,などがみられる。最終的に大切なことは,対象者の身体的・精神的・社会的QOLを高めることであり,評価はそのプロセスの一手段なのである。
作業療法の実践の場面に限らず,対象者自身に必要な支援を判断するために「評価」は非常に重要だと思われる。そして,OTとして評価を行う場面はさまざまであり,その内容は多岐にわたる。かつ,その対象者と関わる時期によって実践される評価は異なってくるのが実際である。そのような中,実際の臨床場面では,さまざまな理由で評価が思ったようにうまくいかず困ったことが起きてはいないだろうか。
そこで,今回の特集では「やめときぃ~,そんな評価」と題し,各分野に携わるOTの方に,OTらしい視点での評価,つまり対象者を一律に評価の対象とするのではなく,その人の人生や生活も含めた,個別性が感じられるような評価について紹介していただいた。さらに,各分野における困ったことや問題となったこと,それに対する工夫などについて,その分野,その時期,その場面で必要なOTらしい評価の視点も紹介していただいた。この特集が,各分野における経験の浅いスタッフや,そのスタッフを育てる先輩スタッフにとって「OTらしい評価」を行う際の,困った時の解決の糸口になるようなアドバイスになり,かつ対象者や他部署のスタッフに対して「OTはこんな視点で評価をしている」という理解を促す一助になれば幸いである。
特集 やめときぃ~,そんな評価
編集担当:多良淳二
作業療法士による評価とは?―昨今の「評価」事情から臨床作業療法の一考察 山本 伸一,他●324
評価と検査は違うのです 勝又 和也●329
精神障害領域の作業療法評価―目に見える数値ではなく,目に見えない「その人らしさ」を観る 北山 順崇,他●334
支援につながる評価とは?―肢体不自由児施設での入園事例を通して 吉川 礎弘●339
認知症高齢者の評価とは―ひとの「ええとこ」どう探す? 上田 章弘●345
他職種からみた作業療法士に求める評価
環境評価としてのチーム力 加藤 公恵●350
精神保健福祉士からみた作業療法士に求める評価 長谷部 隆一●351
精神科の心理師からみた作業療法に求める評価 宮脇 稔●352
作業療法士が評価すること 多良 淳二●353
ライト☆すぽっと
ロックからたどり着いたワンコード―自分自身でいるということ 木暮“shake”武彦●318
連載
■スキル
OTが作る早技レシピ
切干大根とさば缶の簡単煮物 宇田 薫●370
脳卒中片麻痺患者へのアプローチ
高次脳機能障害の理解と介入① 空間性能力の障害 渕 雅子●377
リハビリテーションと上肢運動学
肩関節を理解する!―運動準備 矢﨑 潔,他●388
■レクチャー
発達領域におけるIT活用支援
遊びを通じた発達支援や工夫(肢体不自由児) 長野 清一郎●356
お家を変えよう!
空き家と住宅改修②―ごみ屋敷から健康的な住まいへ 児玉 道子●368
コラム
■ライフ
あのころいま
利用者に支えられた作業療法士人生 宮内 順子●316
ちょっといいですか?
自主サークルの立ち上げ グループ・ピアズ●364
作業療法のアイデンティティー
アイデンティティーを育んだ出会いは奇なり 大場 耕一●385
■View
掘り起こせ“やる気”OTスコップ隊 認知症の人編
認知症の人と「人・環境・作業」…上城憲司,他●361
パント大吉のどこでも遊ぼ!
股ぬけレース パント大吉●362
一枚の絵
初めての図工作品 神奈川県立保土ケ谷養護学校 小学部 新1年生●367
アラカルト
はじまりのことば●巻頭色頁
カメラマン川上哲也の見た世界●目次前
付録の解答●366
本の街道そぞろ歩き●372
書評●373
インフォメーション●374
既刊案内●360
次号予告●393