明日から地域に出るためのコツとポイント
近年,作業療法士(以下,OT)が活躍する場は,緩やかではあるが地域における障害福祉分野にも広がりをみせている。
身体障害領域では,リハビリテーションの創世初期から,職業訓練や生活訓練として,専門機関などで作業が始められていた。また,バリアフリーやノーマライゼーションの普及,関係法令の制定などにより,身体障害者の生活環境や職場環境は徐々に改善し,社会的にも,理解や受け入れが広がっている。
一方,知的障害や発達障害,精神障害の領域では,作業所や家族会などを拠り所とした長きにわたる草の根的な活動を基軸としていた。そのため,この領域における社会資源の体制整備や制度の充実,支援者への生活保障は整っておらず,障害者の声が社会に届きにくい状況が続いている。
2013年4月施行の障害者総合支援法でもOTの本領域への参画機会は,前法(障害者自立支援法)と変わらず,「生活介護」と「機能訓練」の配置加算要件にのみ盛り込まれ,就労支援やそのほかの日中活動への介入には触れられていない。さらに,児童福祉法においては,一専門職として紹介されている程度である。したがって,障害者の声がOTなどの専門職には届かず,専門職もその声を拾えないでいる。
そこで今回,地域における障害福祉分野の具体的な関わりや支援を取り上げ,入院や入所などにおける支援とは異なる障害福祉を理解していただき,関心を高め,障害者の声を本文から拾っていただきたいと考えている。障害福祉分野に従事するOTの支援は,個別性を大切に,実現可能な生活づくりを基本としている。また,その支援は地域づくりにもつながっている。その活動実態と有効性,OTの存在意義を鳥瞰していただき,1人でも多くのOTが地域での福祉活動に面白みを感じていただければ幸いである。
特集 明日から地域に出るためのコツとポイント
編集担当:渡邉忠義
地域療育の現状―作業療法士としてできること 岡本 武己●413
「働く」を支える作業療法―地域を生かした知的障がい領域の実践から 峰野 和仁●418
退院後の作業療法―身体障害の領域から 中澤 紀子●424
継続的に支援する作業療法―精神障害の領域から 髙橋 豊●429
穏やかに、ともに歩む作業療法―認知症の領域から 谷川 良博●435
ライト☆すぽっと
使う人の笑顔のために―道具作りの道具にまでこだわる職人 情野 操●406
連載
■スキル
リハビリテーションと上肢運動学
肩関節を理解する!―初期から60度、そしてその後は! 矢﨑 潔,他●445
■レクチャー
お家を変えよう!
空き家と住宅改修―水回りの改修 児玉 道子●456
発達領域におけるIT活用支援
遊びを通じた発達支援や工夫(発達障害) 山本 佑輔●469
コラム
■ライフ
あのころいま
悩んで気づいた「つくるサイクル」 宮崎 宏興●404
作業療法のアイデンティティー
作業療法のアイデンティティーとは、「人情の機微」を共有することではないだろうか? 岡本 宏二●441
ちょっといいですか?
必要なピア・カウンセリング グループ・ピアズ●452
女性OT ひとりで悩まないで
育児と仕事の両立 宇田 薫,他●458
ほっとストーリー
受け入れていく人 谷川 真澄●466
■View
掘り起こせ“やる気”OTスコップ隊 認知症の人編
もう迷わない! 作業療法の「作業」と「療法」 上城 憲司,他 ●449
パント大吉のどこでも遊ぼ!
ドングリゲット パント大吉●450
一枚の絵
作業学習での製作作品 神奈川県立保土ケ谷養護学校 横浜平沼分教室●445
■編集部が見つけたキラリ発表
第47回 日本作業療法学会
長期間の意識障害患者に対する運動制御レベルに基づいたアプローチ 坂本 和弥,他●460
認知症高齢者を介護する家族への地域生活支援への作業療法士の関わり―お化粧プログラムを通して 丸山 めぐみ●462
アラカルト
はじまりのことば●目次扉前
カメラマン川上哲也の見た世界●目次扉
書評●473
インフォメーション●474
付録の解答●454
本の街道そぞろ歩き●465
既刊案内●472
次号予告●477