認知症の人とのコミュニケーションのツボ
2012年(平成24年)6月に,厚生労働省が「今後の認知症の施策について」をまとめ,作業療法士(以下,OT)の認知症の人に対する役割の重要性がクローズアップされてきた。特に,施設や病院に入所する前の初期認知症の人に対して,居宅へ訪問したり,外来で対応したりして医療への不安をやわらげながら,確実に日常生活への関わりや援助を届けることが期待されている。自分が,どうしてこれまで当たり前にできてきたことにつまずくのかわからず,家族もどうしてこんな些細なことで衝突するのか戸惑う時,認知症の人とのコミュニケーションは重要なポイントとなる。
また,初期のアセスメントツールとして,行動観察に基づくものを利用することも,OTの得意とするところである。一部では,認知症キャラバンメイトのスキルアップ研修で利用されているAOS(Action Observation Sheet)を使った関わりも始まってきている。
認知症の人が作業療法の利用者として急速に増えつつある現在,OTと出会うさまざまな場でのコミュニケーションにおいて,伝えるべき情報が正確に伝わらず苦労する状況は,病院でも施設でも居宅でも日常的に繰り返される。
今回の特集では,認知症の人に対してOTは,どのような手段を使って会話を進行し,意図を伝え合っているのか,その経験を整理し,報告してもらう。その中で,どのようなポイントがコミュニケーションの阻害因子となっていたのか,それをどう変化させたら,よりうまく伝わったのか,実践の中から日常における伝え方のポイントを再検討し,その留意点を明らかにする。
普段から認知症中心に関わっているOTに限らず,コミュニケーションの認知で課題のある作業療法利用者に対して,対応に悩む多くのOTの参考になれば幸いである。
特集 認知症の人とのコミュニケーションのツボ
編集担当: 苅山和生
介護療養型医療施設での認知症の人とのコミュニケーションのツボ:重度認知症の人を中心に 加藤 里美 493
一般病棟の中での認知症を有した方に対するコミュニケーションのツボ:AOSを用いた関わりについて 愛甲 美香,他 498
介護老人保健施設での認知症の人とのコミュニケーションのツボ:「伝える」「伝わる」言葉での関わり 岡田 葉子 502
認知症の方とのコミュニケーションのツボ:急性期病棟からデイサービスの移行に際して 村井 千賀 507
“つどい”でのコミュニケーションのツボ:「認知症の人と家族の会」の取り組みを中心に 徳廣 三木子 512
連載
■スキル
リハビリテーションと上肢運動学
肩関節を理解する!120度から 矢崎 潔,他 518
イラストで見る脳卒中片麻痺患者へのアプローチ
高次脳機能障害の理解と介入②―行為能力の障害 渕 雅子 521
■レクチャー
発達領域におけるIT活用支援
学習への支援(肢体不自由) 鴨下 賢一 526
お家を変えよう!
空き家と住宅改修④―外構工事(ガーデニング) 児玉 道子 536
ライト☆すぽっと
精神症状の背景にいるひとをみる―臨床の知を求め続ける85歳の精神科医 笠原 嘉 486
コラム
■ライフ
あのころいま
感 動 川辺 郁代 484
ちょっといいですか?
福祉のワンストップ・サービス化と「みちしるべ」 グループ・ピアズ 532
女性OTひとりで悩まないで
仕事復帰直後の育児との両立 宇田 薫 538
ほっとストーリー
絵手紙のちから 田村 浩介 540
作業療法のアイデンティティー
マイ作業療法イノベーションのススメ―今こそチェスト行け!作業療法士! 川本 愛一郎 545
■View
掘り起こせ“やる気”OTスコップ隊 認知症の人編
どこにある? パーソン・センタード・ケア 上城 憲司,他 529
パント大吉のどこでも遊ぼ!
ペットボウリング パント大吉 530
一枚の絵
新たな価値の創造 蓮田よつば病院 542
アラカルト
はじまりのことば 目次扉前
カメラマン川上哲也の見た世界 目次扉
書評 550
総目次 551
インフォメーション 543
投稿規定 555
既刊案内 517
次号予告 556