見直したい!発達領域の食事動作支援
現在,食事動作に関するさまざまな道具が販売されている。しかし,その道具は発達を促すのではなく,その道具自体を使用できることを目的としているものがある。たとえば,リング付きのしつけ箸などであり,スプーンもうまく使えない段階にもかかわらずに,3歳だから箸の練習と称して使用されていることがある。
また,養育者の都合に合わせて開発された発達段階を無視した道具も気になるところである。たとえば,水分摂取の道具の発達としては,哺乳瓶からスプーンなど,コップ,次にストローであるはずが,哺乳瓶の次にスパウト,次にストロー,そしてコップと獲得すべき段階が崩れてきている。中には,コップより先にペットボトルから直接飲まされている子どもたちも存在する。
子どもの発達段階やメカニズムについて知らない利用者にとっては,製品に示されている段階にそって使用することが,子どもの発達にとって良いと勘違いしてしまう。発達に障害のない子どもたちは適応する力が高いので対応できるが,障害のある子どもたちにとっては,逆に発達を阻害してしまうこともありうる。
食べ物も豊富で,食習慣が乱れやすい状況がある。単に食習慣が乱れるだけではなく,生活習慣病や自己統制や自尊感情の発達にまで影響することを知っておく必要がある。
障害のある子どもに関わる作業療法士は,正しい発達段階やメカニズムを理解し,適切に子どもの発達を支援することができる必要がある。本特集が,食事動作に関する内容について見直してみる機会になれば幸いである。
特集 見直したい!発達領域の食事動作支援
編集担当:鴨下賢一
食事動作の定型発達を理解する 藤坂 広幸 13
食事動作の前に取り組んでおくこと 三和 彩 20
発達障害児の自立した食事動作に向けての支援 徳永 瑛子 25
食事を通して肢体不自由児の自己有能感を育む 黒田 穂菜美 31
重症心身障害児の自立した食事動作に向けての支援 成人・壮年期からの自食とその可能性 吉田 雅紀 36
ライト☆すぽっと
リハビリテーションと私―『リハビリテーションの歩み―その源流とこれから』で伝えたかったこと 上田 敏 6
連載
■スキル
リハビリテーションと上肢運動学
肩関節を理解する!伸展運動と水平運動 矢﨑 潔,他 41
■レクチャー
作業療法のアイデンティティー
作業を活用し,「作業の力」を知る 甲斐 雅子 45
お家を変えよう!
脊柱管狭窄症と住宅改修 児玉 道子 56
発達領域におけるIT活用支援
学習への支援(発達障害) 高橋 知義 65
コラム
■ライフ
あのころいま
地域リハビリテーションの力 村上 重紀 4
ちょっといいですか?
リハビリ計画手帳 グループ・ピアズ 52
女性OTひとりで悩まないで
慣れない部署での職場復帰 宇田 薫,他 58
ぼくのリハビリ物語
リハビリへの思い―幼少時代編 藤井 規之 60
■View
掘り起こせ“やる気”OTスコップ隊 認知症の人編
ココロの廃用症候群 上城 憲司,他 49
パント大吉のどこでも遊ぼ!
記憶の森でかくれんぼ パント大吉 50
一枚の絵
わが軌跡 蓮田よつば病院 55
■編集部が見つけたキラリ発表
リハビリテーション・ケア合同研究大会 千葉2013
通所リハビリテーションにおける自宅訪問の意義―転倒症例から得たもの 伊藤 正和,他 70
医療と介護の間隙を埋める―家政婦を依頼した1症例 佐藤 博文,他 72
アラカルト
はじまりのことば 巻頭色頁
カメラマン川上哲也の見た世界 目次前
インフォメーション 63
書評 74
投稿規定 75
既刊案内 19
次号予告 76