作業を手段に治療するということ―レッツ作業療法! 治療的作業カタログ
作業療法が治療の一手段としてわが国に確立されてから,50年が経つ。作業療法は人々の暮らしをみる専門性ゆえに,もともと個別性を重要視し,暮らし方や価値観の時代による変遷を反映し,保健・医療・福祉・介護の制度の移り変わりの中でその守備範囲を拡げてきた。拡大の反面,作業療法が他職種や国民に治療としてイメージされにくいことは残念だ。
作業療法は,理学療法・言語聴覚療法とともに医療費の算定を認めており,医療専門職種であり,リハビリテーション医療3職種として療法士(セラピスト)と呼ばれる。
リハビリテーションといえば,「動かしてくれる」「歩かせてくれる」「良くしてくれる」というようなイメージが一般市民にまだ根強い。特に,依存・甘えの構造をもち,個を主張することが少ないわが国では“良くしてほしい”と求められるシーンは多い。私たちの意識が「当事者がより良く暮らすことを支える」にシフトしても,特に医療のフィールドでは“治してほしい”がニーズになりがちである。芸術療法,音楽療法,園芸療法,アクティビティケア,ダイバージョナルセラピーの専門家なども活動しており,作業りようほう(利用法)は大流行している。
さて,作業療法は“作業を用いて”治療(訓練)・指導・援助をすることと定義されている。脳科学や神経生理学,認知心理学が発展し,ひとの行動・行為をひもとくツールは大進歩している。私たち作業療法士の仕事の本体である作業を用いて(手段として,処方し)治療・指導・援助をすることを具体的に明らかにしていきたい。できれば,エビデンスといわれる根拠についても仮説を立てつつ示してほしい。根拠となる文献も知りたい。
作業分析から効能を示し,科学的・理論的根拠など,私たちが作業を自信をもって治療的に処方できるヒントを得たい。単なるアクティビティ紹介ではない“作業で治療する作業カタログ”をつくりたい。臨床現場でプログラム展開に悩み,徒手療法に偏りがちにもなりかねない後進の作業療法士の気づきになれば幸いである。
特集 作業を手段に治療するということ―レッツ作業療法! 治療的作業カタログ
作業を手段に治療する―その基礎知識 川 雅弘 183
作業で身体機能を治療する 桐竹 真由美, 188
作業で片麻痺を治療する 三瀬 和彦 193
老年期において作業で治療する 浅野 有子 201
統合失調症を作業で治療する 青山 尚幸 208
小児療育において作業で治療する 杉谷 武人 216
連載
■スキル
回復期リハビリテーション病棟におけるチームアプローチ
作業療法士が他職種から求められていること,果たすべき役割 濱中 将 222
■レクチャー
お家を変えよう!
糖尿病と住宅改修 児玉 道子 228
発達領域におけるIT活用支援
2次障害の予防と対策・制度,社会資源について 髙橋 知義 241
コラム
■Opinion
らんどまーく
“作業”を創出する―競争から共創へ,持続可能な社会の構築を目指して 寺門 貴 180
ちょっといいですか?
障害の受容について グループ・ピアズ 238
■ライフ
女性OTひとりで悩まないで
妊娠中の働き方―つわりがひどい時 宇田 薫,他 230
ぼくのリハビリ物語
ぼくの食事 藤井 規之 232
作業療法のアイデンティティー
Occupation:価値を転換し 生きる力を与えるもの 毛利 雅英 247
■View
掘り起こせ“やる気”OTスコップ隊 認知症の人編
軽度認知症の人への料理活動(その2) 上城 憲司,他 225
パント大吉のどこでも遊ぼ!
ツルゴルフ? パント大吉 226
一枚の絵
手づくりの友 岡田 葉子 235
■レポート
「よこすか片マヒ希望の会」による,『言葉のきずな』自主上映会 岡 晶子 236
アラカルト
はじまりのことば 巻頭色頁
カメラマン川上哲也の見た世界 目次前
インフォメーション 254
書評 257
既刊案内 192
次号予告 258