もっと踏み込め!在宅復帰支援
現在の日本の医療保険制度・介護保険制度において,在宅生活の継続ならびに在宅生活へ戻ることが重要課題とされている。厚生労働省が行った「終末期医療に関する意識調査」では,60%以上の国民が自宅での療養を希望している。国は,団塊の世代が75歳を迎える2025年を目処に,重度の要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう,医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現しようとしている。これに向けた医療・介護のサービス体制の改革においては,専門職の積極的な関与のもと,患者・利用者の視点に立って,サービス提供体制を構築するとされている。
病院・施設への入院・入所後,在宅復帰を果たすためには解決すべきさまざまな要因がある。OTは,対象者・ご家族を中心としたチームの一員として,病院・施設における多職種連携の一翼を担っている。在宅復帰を支援するなかで,OTには自らの専門性を発揮した関わりが求められる。あるいは,他職種の役割とオーバーラップしながらの関わりが求められることもある。
しかし現実的には,スムーズに在宅復帰が果たせる場合もあれば,在宅復帰に難渋する場合も多くある。後者に関しては,ADL(activities of daily living)レベルなどの対象者の要因のみならず,ご家族の介護力や在宅復帰に対する意向などの人的要因,住環境などの物的要因なども影響を及ぼしている。これらの要因に対して,OTは,対象者への直接的支援のみならず間接的支援も行っている。どのような視点で関わり在宅復帰を支援するのか,それが,OTの在宅復帰支援技術であると考える。
しかし,在宅復帰は最終目標ではない。在宅復帰後,その人らしい生活を送り,最期までその人らしい人生を送れることが関わりの目的となる。そのためには,病院・施設から地域へとバトンタッチする,つまり「つなぐ」という視点も欠かせない。
本特集では,対象者の生活・人生にもう一歩踏み込み,病院・施設から在宅復帰を支援するポイントを紹介する。在宅復帰に難渋している場合,あるいは,その人らしい在宅復帰を支援したい際に,関わりの一助となれば幸いである。
特集 もっと踏み込め!在宅復帰支援
編集担当 渡邊 基子
急性期病院に求められる在宅復帰支援技術 田中 秀宜 ●400
回復期病棟における在宅復帰支援の質の向上を目指して 吉田 尚史 ●405
介護老人保健施設で,OTの視点から在宅復帰に取り組む 大内 義隆 ●411
精神科病院で,作業実現を通じて在宅復帰を支援する 小松 博彦 ●417
烈闘作業療法
地域は家族の拡大図―支え合って生きる 茂木 有希子さん ●392
連載
お家を変えよう!
高齢者サロンと住宅改修 児玉 道子 ●436
学校では習わないメソッド
「School AMPS」―教室で作業遂行を評価する 友宗 美菜子 ●442
複眼で見る
地域包括ケア病棟のポイント 寺門 貴 ●444
作業療法士が創る嚥下障害へのリハアプローチ
在宅版嚥下評価スケールの紹介 寺本 千秋 ●447
OTケアマネジャーはこうした!
退院調整,「生活」をどう見立てられるか,が大切 丸子 佐和子,他 ●452
コラム
らんどまーく
作業療法の魂に火をつけた3つの言葉 高畑 脩平 ●390
掘り起こせ“やる気”OTスコップ隊 認知症の人編
家族からみた認知症の症状(その1) 上城 憲司,他 ●423
女性OT ひとりで悩まないで
体力低下・体調不良を抱えながら働くこと 宇田 薫,他 ●424
勝手にOT番付
東西大関 仲地 宗幸,他 ●426
当事者・家族からみたOT
デイケアにくると本当によくなるんですね 野末 裕子 ●430
一枚の絵
ふれあい便 瓦 えり子 ●433
なんでもできる100均グッズ
激落ちスポンジ大変身!―ハラハラ!Color CUBIC 石川 愛佳,他 ●434
OTとして私が大切にしていること
自分の価値観のみに囚われない 城野 友哉 ●439
編集部が見つけたトキメキ発表
第49回 日本作業療法学会
すきま☆スイッチはじめました―重症心身障害児・者施設 入所者に対する余暇時間へのアプローチ 中西 知奈美,他 ●457
パーキンソン病患者における非運動症状を考慮した作業療法介入の検討 勝山 このみ,他 ●460
北中城若松病院の認知症カフェの紹介 中野 小織,他 ●462
レポート
研修会から広がる発達系OTの輪 編集室 ●464
アラカルト
作業療法周辺のニュース ●466
カメラマン川上哲也の見た世界 ●目次前
書評 ●471,472
次号予告 ●474
はじまりのことば…川口 淳一 ●巻頭頁
既刊案内 ●416
インフォメーション ●473